日本列島旅鴉

風が吹くまま西東、しがない旅鴉の日常を綴ります。

北の汽車旅最終章 - 大黒屋

2016-02-14 22:44:16 | 居酒屋
「天金」一軒で腹はあらかた満ちました。ラーメンは一昨日もいただいており、今夜は一軒限りで切り上げてもよさそうな状況ではあります。しかし、はるばる旭川まで来たとなると、もう一軒欲張ってしまうのが人情というものです。日曜深夜という事情も考慮の上、ジンギスカンの有名店「大黒屋」の暖簾をくぐりました。
先日札幌を訪ねたとき、口コミサイトの得点があまりに高いところはむしろ避けると申しました。あのサイトに常連客の声が反映されているかというと全くそのようなことはなく、得点が高く、件数が多くなればなるほど、よそから来た一見客の評価ばかりが反映されるわけです。そうして噂が噂を呼ぶ結果、客層がますます俗化して行くということを経験上知っています。それだけに、旭川どころか道内でも屈指の高得点を叩き出すこの店には、今まで食指が延びませんでした。仮に入るとすれば、飲食店が最も閑散とする日曜の、それも遅い時間帯だけだろうと考えていたわけです。今回図らずもそのような状況が実現したことにより、試しに寄ってみるかと思い至りました。

一人であることを告げると、カウンターの一番奥に七輪が置かれて、そこに案内されました。品書きは肉四種の他にキムチ、ご飯にスープのみと簡素で、野菜は無料でついてきます。虚飾のない専門店の趣はこちらの好むところです。
基本となる生ラム成吉思汗を注文すると、まず接客の青年が鍋にラードを塗り、野菜の半分と肉二枚を焼いてくれます。思えば昨秋十和田のバラ焼きを初めて食したとき、勝手がよく分からず玉葱を焦がしてしまい、見兼ねた店主に指南を受けるという経験をしました。ここでも勝手を知らない一見客が多く、そのため最初に実演してみせるという仕組みになったのでしょう。とはいえ懇切な説明は助かりました。
世間の評判高い生ラムは、果たして自分の知るジンギスカンとは全くの別物でした。脂身が少なくて羊肉特有の臭みが一切なく、厚切りにもかかわらず柔らかいのは、牛、豚、鳥のどれとも違う独特の味わいです。そしていかにも万人受けしそうな味でもあります。個人的には、噛めば噛むほど味が出る方を嗜好するだけに、全く癖のないここのジンギスカンよりも、「しらかば」の鹿肉の方が好みではありますが、もちろんこれはこれで悪くありません。これが人気の秘訣かと得心した次第です。

大黒屋
旭川市4条通7
0166-25-2424
1700PM-2300PM(LO)

一番搾り×2
生ラム成吉思汗
白菜キムチ
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北の汽車旅最終章 - 居酒屋天金

2016-02-14 21:23:32 | 居酒屋
「独酌三四郎」には及ばないとしても、次善の店の心当たりはあると申しました。その一つが活動仲間の情報で知った「天金」です。他の情報源と併せて推察するに、大店ながらも虚飾のない大衆酒場の老舗といった印象を受けます。自力で一から探すより、ここはただ乗りするのが吉と見て、脇目も振らずに乗り込みました。

12号、39号、40号と二桁国道三路線の起終点が集まる「道北の日本橋」こと4条通6丁目の交差点の南東側に、屋号を入れた巨大なファサードを持つ建物があります。玄関の両脇に並んだ赤提灯を含め、大箱の居酒屋と一目で分かる佇まいです。二重になった玄関をくぐるとまず巨大な生簀が壁のように立ち上がり、それを隔てた向こうに客席が広がっていました。
長いカウンターが向かい合わせになった造りは、コの字カウンターの一種といってもよいでしょう。片側につき15席ほどもあるカウンターは分厚い一枚板、というより一本の丸太がそのまま使われています。それぞれの側には小さい暖簾をくぐって入る半個室の小上がりが並んでいて、全て合わせれば100名は収容できそうな大店です。カウンターの内側では板前とおばちゃんが各自の持ち場で小気味よく立ち回っていて、何名かの青年とお姉さんが接客を担当。黙々と仕事をこなしつつも必要な挨拶を欠かさないところは、先月訪ねた金沢の「源左エ門」「黒百合」などを彷彿させる正統派の大衆酒場です。
カウンターの頭上にはA4一枚につき一品を筆書きした品書きが無数に並んでいて、手元にも本日のおすすめの品書きが。さらには予め印刷された冊子もあります。増毛、佐呂間、厚岸など産地を記した道産の魚介を中心に、刺身、煮物、揚物、一品、酒肴、さらには寿司から鍋物に至るまで、居酒屋の品書きとして考え得るものを全て詰め込んだかのような品数の豊富さが圧倒的。もちろん価格も良心的と申し分ありません。

これほどの名酒場ではありますが、それでもなお「独酌三四郎」の偉大さを感じさせる点がいくつか出てきます。カウンターの一枚板こそ互角かそれ以上とはいえ、年季の入った店内の味わいという点ではやはりあちらに一日の長があります。それに加えて気付いたのは、肴としての完成度でした。もちろんこちらの生にしんもよいのです。しかし肴としてはあちらの〆にしんの方が洗練されています。醤油漬けにしたいかわたを、身と紫蘇で巻き輪切りにしたイカゴロルイベは絶品の酒肴で、見栄えについては「独酌三四郎」のイカゴロ焼より明らかに上です。ただ、わたが多くて塩辛く、酒だけでなく水がほしくなってきます。その点、身が薄くてわたも少ないイカゴロ焼は、一見すると貧相ながらも、イカが十分干されているためその分旨味が凝縮されており、少量のわたが酒を一層進ませるという仕掛けです。これが「北海道一の名居酒屋」と評される所以なのでしょう。
もっとも、これは比べる相手が悪すぎるということでもあります。この店が劣っているというより、あちらがさらに上を行っているということであり、「独酌三四郎」が開いていればと意味のない仮想をするつもりはありません。むしろ、他の日なら馬鹿の一つ覚えで「独酌三四郎」に走ってしまい、この名酒場に出会う機会は訪れなかったかもしれません。この店で呑めてよかったというのが偽らざる心境です。

居酒屋天金
旭川市四条通7右8
0166-22-3953
1500PM-2230PM(LO)
正月他不定休

男山二合
お通し(玉子サラダ)
生にしんたたき
アンコウ天ぷら
イカゴロルイベ
鉄火巻
アサリ汁
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北の汽車旅最終章 - 日曜晩の旭川

2016-02-14 20:28:55 | 北海道
伊香牛で交換した対向列車の遅れが波及し、小幅の遅れで終点旭川に着きました。札幌へ向かう列車を途中で咄嗟に降りた結果として、図らずももたらされた道中二泊目の滞在です。
一昨日訪ねた時点ではさしたる雪もなく、その後雨にも降られてなおさら雪解けが進んだかと思いきや、一日置いて戻ってくると路面が真っ白でした。早春に振れた気候が再び冬に引き戻されたのでしょう。現在の気温は氷点下4度、出発以来日毎に上がり続けていた気温が初めて下がりました。ただし北海道にしては雪が湿っています。やはり春は遠からぬところまで来ているようです。

名酒場がひしめく釧路と違い、旭川では「独酌三四郎」を外せば後がないと常々申してきました。しかるに頼みの綱は定休です。しかし途方に暮れているわけではありません。後がないというのは、「独酌三四郎」と同等以上の店がないというだけのことであり、次善の店の心当たりは少ないながらもあるからです。つまり、「魚仙」が突出してはいるものの、定休の日曜にも次善の選択肢がある長岡のようなものといってよいでしょう。
仮に予定通り札幌に泊まったとしても、「ふらの」以外にズバリここだという心当たりはなかったわけです。その「ふらの」もつい先日訪ねました。今夜に関する限り、呑むことには元々多くを期待していなかった以上、すすきのが旭川に変わったところで大差はありません。並以上の店であってくれればよいと割り切っています。ただし、期待以上の店が現れてくれればもちろん大歓迎です。
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北の汽車旅最終章 - 紙一重

2016-02-14 18:35:44 | 北海道
一駅進むのに延々一時間以上を費やし上川に到着。ここで37分の長時間停車となります。待ち時間を利用し今夜の宿を押さえたところです。日曜だけに格上の宿も大安売りという状況の中、定宿に準ずる位置付けのワシントンホテルを手堅く選びました。
実は、白滝で列車を降りた直後、道内に滞在中の活動仲間から連絡が入りました。こちらが札幌へ向かっているのをこのblogで知り、同じく札幌泊となる当人から、一杯どうかと誘いがあったわけです。しかしこのまま札幌へ向かっても、到着は最速で10時前になります。投宿してから呑み始めるとなると、実際には11時近くになるでしょう。日曜の晩という事情も重なり、その時間で入れる店の心当たりは一切なく、さらには相手にも迷惑をかけてしまいます。さすがに現実味が乏しいと考えて断りました。しかしあと数分早く着信していれば、そこで迷いを断ち切り札幌へ向かっていたわけです。まさに紙一重のすれ違いでした。
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北の汽車旅最終章 - 上越信号場

2016-02-14 17:43:51 | 北海道
上白滝に続いての僥倖です。上越で交換待ちのため18分停車との案内がありました。もちろん下車することはかなわないものの、停車したのはかつての駅舎の正面です。またしても二重窓を開け、庇の柱に掲げられた「国境標高六三四米上越駅」の看板をカメラに収めました。大半が暗い中の乗車となり、楽しめるかどうか半信半疑だったにもかかわらず、これほど見せ場が続くとはありがたい誤算です。
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北の汽車旅最終章 - 峠越え

2016-02-14 17:19:07 | 北海道
列車は道北と道東を隔てる石北トンネルへ向け高度を上げています。機関を二基搭載したキハ54の足を、後ろに連結された非力なキハ40が引っ張っているのか、速度計は時速20kmと30kmの間を行ったり来たりしており、蒸気機関車時代もかくやと想像させられる苦闘ぶりです。これなら上川まで運転停車がなくとも一時間以上かかるかもしれません。「オホーツク」で一気に越えていれば、この峠の厳しさを体感する機会は永遠に失われていたでしょう。この列車に乗ったのはなんだかんだで正解だったようです。
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北の汽車旅最終章 - 上白滝駅

2016-02-14 17:09:53 | 北海道
白滝の構内を撮影したりblogをまとめたりするうちに待ち時間は過ぎ、一日一本限りの上り普通列車がやってきました。驚いたことに、キハ54を先頭にしてキハ40を2両つなげた3両編成です。ただし先客は3名のみ、それも全員同業者で、一般の乗客は一人もいないことになります。その先客がいる先頭車を素通りし、2両目のキハ40を借り切りました。そしてこれはいきなり吉と出ました。
というのは、上白滝に止まったとき、照明に浮かび上がったホームの駅名標がよい位置にきたのです。僥倖とばかりに、すぐさま二重窓を開けてカメラに収めると、先頭車にいた同業者が慌ててこちらへ来たものの、そのとき列車はもう走り出していました。タクシーさえ使えれば隅々まで撮影できた可能性が高いとはいえ、絵になるものを一つだけでも記録できたのは幸いです。

★網走1329/オホーツク6(16D)/1551白滝1702/4626D/2005旭川
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北の汽車旅最終章 - 白滝駅

2016-02-14 16:15:52 | 北海道
結局悪魔のささやきに負け、白滝で列車を降りました。タクシーがあれば上白滝まで行き、そこから普通列車に乗ることもできるのではないかと見込んだからです。
そもそも駅前にタクシーなどあったかと思いつつ、もう後がないという切迫感もあって急遽列車を降りると、駅前に営業しているのかどうかも分からない「ハイヤー営業所」の看板を掲げた建物がありました。一縷の望みをかけて看板の電話番号にかけてみると、廃業こそしていなかったものの、運転手不在につき休みという無情の返答が。セイコーマートすらない僻地だけに、日曜はタクシーさえも休むのでしょうか。車さえあれば自分で運転するにもやぶさかでないとはいえ、営業用の車両だけに無理をいうわけにもいきません。だからといって、重い荷物を担いで歩けるような距離でもありません。最後の冬の上白滝を訪ねるという奇策は、残念ながら絵に描いた餅となりました。
もっとも、一日一本の普通列車に乗るという目的だけは果たされます。上白滝を出てから隣の上川まで、34kmを68分もかけて走るということは、おそらく奥白滝、上越、中越のどこかで運転停車もするのでしょう。北海道では今後ますます困難になる、そしてこの区間では最初で最後となる普通列車の旅を、思わぬ形で経験できるだけでも十分ではあります。北海道らしい乾いた細かい新雪を、道中を通じ初めて踏んだことを含めて、あながち無駄ではありません。幸い待合室に暖房が入っているため、木製のベンチに腰掛け列車を待ちます。
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北の汽車旅最終章 - 葛藤

2016-02-14 15:28:40 | 北海道
幸運にも窓側の先客が北見で降り、空いた席に収まりました。遠軽を出ても奇跡的に立ち客は出ておらず、このまま札幌まで乗り通すことになるかもしれません。
それはよかったのですが、今更ながら別の案が浮上してきました。実は、遠軽で降りれば上白滝に停車する一日一本限りの上り普通列車に乗り継げたのです。間合いも小一時間とちょうどよく、駅前の銭湯で一風呂浴びれば完璧な時間配分でした。この場合今夜は必然的に旭川泊になるものの、日曜に重なる今夜の呑み屋事情に特段期待はしておらず、ならば札幌だろうと旭川だろうと大差はありません。明日明るくなってから石狩平野の区間に乗れるという点でも有利です。ならば事実上最初で最後の機会に賭けるのが得策だったわけなのですが、あまりに唐突な思いつきだったこともあり、咄嗟に列車を降りるという判断ができませんでしたorz
実は、今からでも考え直す余地があります。白滝で降り一時間少々待てば、件の普通列車が遠軽から追いかけてくるのです。明日の移動を考えると、今日中に札幌まで行ってしまうのが有利ではあり、キハ183系での旅も貴重な機会には違いないため、このまま乗るのが手堅いのは分かっています。しかし白滝まで葛藤し続けることになりそうです…
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北の汽車旅最終章 - オホーツク6号

2016-02-14 13:35:28 | 北海道
網走に到着後慌ただしく跨線橋を渡り、札幌行の「オホーツク」に乗り込みました。釧路からの混みようと、わずか5分の間合いから懸念していた通り、わずか一両半の自由席は既にほぼ埋まっていました。始発駅からこの調子では先が思いやられます。多客に備え二両増結されたのは一昨日の「スーパー宗谷」と同様ながら、増結分が指定席になったばかりか、全室自由席の先頭車が定員の少ない0番台車に変更され、定員があろうことか28名分も減らされてしまったのが事態をなおさら悪化させています。
今のところ立ち客はなく、自分も通路側の席につくことはできました。ただし、この状態からさらに混む可能性はあっても空く可能性は低いため、旭川で後続の「スーパーカムイ」に乗り継ぐことも検討します。

★網走1329/オホーツク6(16D)/1847札幌
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北の汽車旅最終章 - 二重窓

2016-02-14 13:15:20 | 北海道
一時間少々滞在した止別を後に、キハ40による普通列車で網走へ向かいます。北海道を周遊する汽車旅が今回限りで事実上の終焉を迎えると、この車両に乗る機会もほとんどなくなるかもしれません。額縁のような二重窓から望むオホーツク海を、しかと瞼に焼き付けたいものだと思います。

★止別1248/4732D/1324網走
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北の汽車旅最終章 - えきばしゃ

2016-02-14 12:25:05 | B級グルメ
川湯温泉にしても藻琴にしても、沿線の古い駅舎が風雪に耐えつつよい状態を保っているのは、駅舎が喫茶店として活用されていることによるところが大です。そして止別にも同様の喫茶店があります。列車を待つ合間にその「えきばしゃ」でお昼をとります。
「ラーメンきっさ」を標榜する当店ではありますが、その実態は喫茶というよりラーメン屋です。昼時という事情はあるにしても、お客は例外なくラーメンをすすっています。注文した醤油ラーメンは、油膜の張った熱いスープに黄色っぽい縮れ麺という北海道らしい出で立ちで、これにチャーシュー、なると、ネギ、メンマが乗ります。豚骨、鶏ガラを主体にしたらしきスープは突出した特徴こそないものの、逆にいえば毎日でもいただけそうな飽きのこない味です。濃いめに味付けされたチャーシューもおいしく、これなら200円追加してチャーシューメンにしてもよいところでした。地元客が切れ目なくやってくるのも宜なるかなといった感があります。
川湯温泉、藻琴の両駅と違い、かつての事務室の造りをそのまま残しているわけではありません。しかし、おばちゃん、お姉さんの合わせて四人が仕切る明るく清潔な店内はむしろ好ましいものがあります。支払いを済ませて出ようとするや、列車が来るまでいてはどうかと勧めてくれる心遣いもありがたく、身も心も温まるひとときでした。

ラーメンきっさ えきばしゃ
斜里郡小清水町止別1
0152-67-2152
3-10月 1100AM-1930PM(LO)
11-翌2月 1100AM-1830PM(LO)
醤油ラーメン750円
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北の汽車旅最終章 - 止別駅

2016-02-14 11:59:50 | 北海道
予想通りに知床斜里で大量の下車があり、車内はようやく落ち着きました。しかし、今更空いてもこちらにとっては猫に小判です。一つ隣の止別で列車を降りました。一時間ほど滞在してから後続の列車に乗ると、網走で札幌行の「オホーツク」に接続するという寸法です。
以前同様の策を使って藻琴駅で降りました。逆方向で同じ手を使い、北浜駅に寄ったこともあります。それらを含め釧網本線の乗車を三回繰り返し、オホーツク沿岸に残る古い木造駅舎の冬の姿を一通り記録することができたわけです。北海道新幹線の弊害により、このような旅が今後きわめて困難になると予想される中、最後の機会を生かせたのは幸いでした。
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北の汽車旅最終章 - 不安的中

2016-02-14 09:36:55 | 北海道
本日は網走を通って札幌へ向かう約550kmの移動です。まずは釧網本線の列車でオホーツク沿岸を目指します。
おそらく単行で運転される列車だけに、早めに乗り込まなければ着席が覚束ないだろうと予想はしていました。早めに宿を出たいと申していたのはそのためでもあったのです。しかるに結局手間取って、発車の10分前に乗り込んだとき、「これは終わった」と一目で分かりました。デッキにまで乗客が溢れていたからですorz
原因は明らかに観光客、それも中国人を中心とした外国人です。大型のスーツケースが20個近くもデッキを占領していることからして、少なくともそれに等しい数の観光客がいるのでしょう。その多くが流氷目当てと予想される以上、この混雑はどこまで行っても変わらないわけです。塘路あたりで少しは降りるかという淡い期待も空しく、車内の状況は全くといっていいほど変わりませんでした。摩周に川湯温泉など、観光客の降りそうな駅もいくつかあるものの、多少下車して同じかそれ以上乗ってくるのが関の山ではないでしょうか。

実は、こうなることも想定の範囲内ではありました。というのも、上陸後ここまでの道中を通じ、どこへ行っても中国人だらけだったからです。近年の急増に加え、春節で長旅がしやすいというあちらの事情もあるのでしょう。不安は見事に的中してしまいました。
近年社会問題にすらなりつつある中国人観光客の激増ですが、眉を顰めるような蛮行を働く輩は、実は一部に過ぎないということに気付いてきました。それでもいまだに違和感を覚えるのは、彼等が明らかに旅慣れていないからです。かくいう自分自身海外旅行の経験はありません。しかし、行先が海外だからといって、行商人のごとき大荷物が果たして必要なのでしょうか。自分の場合撮影機材を携行するため、全てを合わせればそれなりの大荷物にはなります。しかし機材を除けばトートバッグ一つに収まる荷物であり、それは五日に及ぶ今回の旅でも変わりません。
キャンプに必要なのは装備を充実させることではなく、少ない装備でどれだけ快適に過ごすかだという先人の言葉があります。それはキャンプのみならず旅全般に当てはまる理屈でしょう。だからこそ、不必要にしか思えない大荷物を抱えて集団で行動する中国人観光客に興ざめしてしまうのです。たとえていうなら、日頃居酒屋で呑むという習慣を持たない一見客でカウンターが埋まっていて、その光景に興ざめするようなものとでもいえばよいでしょうか。

もっとも、繰り返すように想定の範囲内です。全く予期せぬ混雑で立ち通しを強いられた先日の「スーパー北斗」ほどの敗北感はありません。後部のデッキに立つことはでき、去りゆく車窓を望める上に、機器箱に腰掛ける程度のことはできます。仮に下車駅まで立ち通しとなっても二時間半、それなら三時間半立たされた「スーパー北斗」のときより多少はましです。途中で空くなどという虫のよい展開には期待せず、当分ここでやり過ごします。

★釧路905/3728D/1139止別
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北の汽車旅最終章 - ホテルラッソ釧路

2016-02-14 08:37:06 | 北海道
出発します。昨晩世話になったのは定宿のホテルラッソです。呑み屋街の中心にあり料金は格安、部屋も快適、その上充実した朝食バイキングも無料でつくという、何から何まで非の打ち所がない宿だけに、釧路ではここ以外の選択が考えられません。
会津若松のフジグランドホテルと並び、このblogで登場回数最多の部類に属する宿だけに、一通りのことを書き尽くした感がある中、今回改めて気付いたことがあります。部屋からの眺めがよいのです。いや正確には、悪くないといった方が適切でしょうか。
自分が日頃世話になっている安いビジネスホテルの場合、当然ながら一定の割り切りが必要になってきます。その割り切りが最も端的に現れるのは当然ながら客室の設備ですが、同様に差がつきやすいのが部屋からの眺望です。飯豊山と磐梯山を一望できる駅前フジグランドホテルのような宿は例外に近く、窓を開けると手の届く距離に隣のビルの壁があるなどというところも、自分の泊まる宿には少なくありません。しかしこの宿の場合、四方に高い建物がないため、どの部屋に泊まっても視界は開けています。たとえば玄関のある北側ならば表通りが、東側なら釧路川が、南側と西側なら呑み屋街が見えるといった具合です。絶景というほどではないにしても、眺望がないよりはあった方がよいわけで、そこもこの宿の美点といえます。ちなみに今回泊まったのは最上階の東側のツインルームでした。
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