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もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)

年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。

追悼のざわめき 意味不明ながら、良くも悪くもカルトという称号には納得<ネタバレあり>

2012-01-21 21:58:20 | その他(邦画)
注)R18作品だったかもしれません。

今年の2本目は『追悼のざわめき』。はじめてこのタイトルを聞いたのは、
8年前中野武蔵野ホール閉館のときだったお思います。同館は、私の生涯
ベスト映画『おもちゃ』(東映、深作欣司監督、宮本真希主演)上映時に
音声ガイドをさせていただいたところであり、その閉館のときにこの映画が
上映されたという記事を読み閉館を残念に思うとともに、なんともおぞましい
映画があるものだと思った記憶があります。でも、怖いものみたさもありまして
見てきました。

公式サイトには
『開映後20分を過ぎたあたりから、気分を悪くした観客が続々と席を立つ。
「最低!」と「最高!」、交錯する反響が伝説のカルトムービーを産み出した。 』
と書いてあったんですが、150分間のモノクロ映像を、寝ることもなく、嘔吐
することもなく最後までみさせていただきました。満足度は65%ですが
これが伝説のカルトムービーであることには納得。そして、これからも
カルトムービーとして、生き続けるであろうと感じました。

どんな話かといえば、かなり混沌としていて、こちらの世界かあちらの世界か
わからないところあり。さらにいつの時代かわからないところあり。自分の
理解の程度も低いので、最初の方ででてきた女子高校生の会話になぞらえて
説明を試みます。場所は、大阪南の日雇い労働の街・釜々崎。公園に,鳩が
群れていて、落ちている餌をつついています。そのそばに座っている二人の
女子高生の会話。

「きのう夢みてん」
「どんな」
「あんな、鳩がえさ食べとるんやけど、そこに一匹の白い鳩が入って
きよんねん。けど、灰色の鳩がいっぱいいて、白い鳩は、えさに近づけ
へんねん」
「へぇ、かわいそ、それで」
「そしたらな、白い鳩がいなくなって、こんどは黒い鳩がでてきよんねん」
「えっ?黒いってそれやったらカラスやん」
「そうなんや、カラスなんや。それで、くちばしでなんかつつきだしよるねん。
それがどうも人間みたいやねん。」
「こわっ。へんな夢」
「そやろ」

私の解釈では、この灰色の鳩が、一般人。この映画にでてくるのは、最初
或いは昔が白い鳩。最後には、黒い鳩 か つつかれる人間になる人。
普通の灰色の鳩に相当するひとは、通行人とかの脇役。或ははゲリラ撮影で
撮影されていると知らなかった人たち。そんな映画かなと思いました。
多分、これでは30%ぐらいしの理解でしょうか? 

映画で、展開されることといえば、鳩殺し、殺人、差別、強姦、近親相姦、
カニバリズム、マネキン姦?と、とても普通じゃないのですが、それだけでは
伝説のカルトとして現代まで生き残ることはなかったでしょう。 映像としては
最近の鮮明な映像の傷口や表情の局部アップの方が、もっとえげつないものが
あるように思います。でも、安心してはいけません。もし見に行く方は、やはり
こころして見に行く必要はあります。

私が衝撃を受けたのは、あからさまな差別でした。
例えば、公園で傷痍軍人に、主人公がいちゃもんをつけるシーン。
傷痍軍人は、私も70年ごろに見たことがあるのですが、二人一組、白衣を
きて、ひとりがアコーディオンを弾いていて、前に募金箱が置いてあるという
典型的パターン。でも私が最後にみたのは70年ごろで、撮影された80年代には、
もういないように思うので、これは幻影なのかなあとかおもっていると・・・。

鳩を握りつぶしていた主人公(20代後半ぐらいの男)。女子高生が募金を
入れたあとに、つかつかと近づいてゆき、前にしゃがんで傷痍軍人の二人に
話しかける。
「おまえら、ホンマに第二次世界大戦か?朝鮮戦争ちゃうんか。」
「いいえ、満州で・・・」
「ホンマか。あこぎな商売しとんにゃろ」
「いいえ、本当です。」(もうひとりは、うめくばかりで言葉にならず。)
「おまえ、チョンとちゃうんか、え~」
といいながら、かなづちで二人に襲い掛かる。

※後のシーンで、この主人公は、韓国語のラジオを聴き、「朴正煕大統領暗殺」
の新聞を横においていたので、在日なのかもしれません。ちなみに、この事件は
「ユゴ 大統領有故」という映画になっておますが、これも衝撃作。1979.10.26に、
起こった事件なので、映画も撮影されたのは80年代ですが、時代背景は1979年
と思ったほうがよいのかも。

もうひとつの、あからさまな差別は「小人症」妹・夏子にまつわる場面。演じて
いるのは、全くの素人で、短肢症の女性。全編をとおして、ちょっと困ったような
表情で、演じているのですが、バスのなかで落とした小銭を拾おうとしてこける
シーン。バス中の全員がドット笑う。こけると、またドット全員が笑う。
これも、かなり衝撃的でした。

さらに、この映画の、もうひとつの特徴的なところはゲリラ撮影。幾つかありますが
一番印象に残った、終盤の女子高(中学かも?)でのシーン。

注)かなりのネタバレになります。

女子高の下校時、正門からグランドへと入ってゆく、浴衣姿の夏子。手に持って
いるのは赤ん坊の死体か?逃げる女子高生たち。キャーという声が聞こえて
きそうだが、カメラはかなりの望遠で、声も拾えていない。それは、最初の方に
でてきた、鳩の群れのシーンのようでもある。灰色の鳩が、女子高生。夢の中で
白い鳩が黒くなって戻ってきたのが、夏子か?夏子は、次々と新しい女子高生の
群れにむかって走っては逃げられ、走っては逃げられを繰り返す。校舎の二階
からみていた生徒も逃げ出すのだから、よっぽど迫力があったのだろう。実際には
1分か2分かのシーンだったのでしょうが、延々と続いているような感じがしました。


そのとき私がみながら思ったのは、アップのシーンがないので、許可を取っては
いないのかもしれないなあと。まわりに何人かは事情がわかっている人がいて、
でも夏子はそれが誰か知らされてないんだろうなあ。いつ終わるかわからないで
演じるのって大変だよなあと。そう考えると、カラスだと思っていた夏子が、少し
白い鳩のように思えてきたのです。

さらに、夏子役の、河添まみこ著「映画が私を変えた」を、読むと、そのときの
様子が、詳しくかかれているのですが、事前には、そのうち先生が迎えにきて
校長室に連れていかれて、そこでスタッフと落ち合うことに話がついていると
言われて演じはじめたそうです。ところが、途中で出会った先生にも逃げられ、
校内放送で「警察に連絡しました」と流れて、それでも走りつづけて、やっと
スタッフの人に抱えられて車のなかに連れ込まれ、その横をパトカーが通って
いったそうです。いや~この監督は、確信犯ですね。会社で言えば、パワハラ
ですよ。ますます、夏子が白い鳩に思えてきました。

実は、この日、夏子役の河添まみこさんの舞台挨拶がありました。昔はこの映画
から早く卒業したいなぐらいに思っていたそうです。それが最近になり映画に
でたことを、誇りに思うようになったとのこと。その言葉を聞いて、少し救われた
ような気になりました。映画では演技ではないゆううつそうな顔だったものですから。


トークショーのあとには著書を買って、サインをもらいました。映画の写真も、
沢山はいっていて、文字もやや大きめで、映画(150分)の半分ぐらいの時間で
読めてしまって1890円は、時間当たりのコストパーフォーマンスが悪いと思い
ましたが、映画とあわせて相乗効果があります。ちなみに、知能にはなんの
遅れもないのに背が低い(現在身長130cm)ということで、小学校と同じことしか
教えてもらえない特殊学級にいれられ、登校拒否になったなど、過酷な半生と
映画との出会いから完成試写会までなどについて書かれています。監督の
パワハラに耐えられたのは、過酷な半生があったからこそだなあと思いました。

最後に、300人のオーディションで選ばれ、白い鳩のまま死んでゆく無垢な
美少女を演じた村田友紀子は、その後どうなったのでしょう?彼女の登場シーン
は、詩的ですらありました。他の出演作がネットでヒットしないのが残念であり、
少し心配でもあります。

消化しきれてなくとも、印象深いシーンがいくつもあり、映像そのものより
もっと奥のところに、衝撃を感じるという意味で、伝説のカルトの看板に偽りなし
と思いました。


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映画が私を変えた: 『追悼のざわめき』&小人症の妹
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