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MiddleDayTripperの徒然記

気ままな中年オヤジの独り言

オスプレイがやって来た

2012-07-24 18:47:33 | Weblog

オスプレイ、岩国基地陸揚げ=米、普天間で本格運用へ―飛行経路の自治体、反発必至(時事通信) - goo ニュース

米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機を積んだ民間輸送船「グリーンリッジ」が23日午前、山口県岩国市の米軍岩国基地に入港した。船体後部ハッチを開け、午前8時すぎに1機目のオスプレイを陸揚げした。残りの機体も順次陸揚げを進めた。
米海兵隊は機体の点検と試験飛行をした後、10月初旬に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)に配備し、本格運用を始める計画だ。
配備後は沖縄県や九州から東北にかけ低空飛行訓練が計画されている。安全性が未確認の段階でオスプレイ搬入を進めた日米両政府に対し、飛行ルート下の全国自治体で反発が広がるのは必至だ。
岩国基地の沖では23日早朝から、搬入に反対する市民団体がボートで抗議活動。福田良彦岩国市長は、基地の対岸から作業の様子を確認し、「地元の切実な思いが政府に届かなかった。大きな憤りを感じる」と述べた。

岩国基地にMV22の搬入始まった。空撮映像では主翼とローターを折り畳んでいたのでヘリコプタのように見えた。

オスプレイにはWidowmakerの俗称がある。直訳すれば未亡人製造機。アメリカ軍には事故率が高い軍用機にこれを付ける風習(?!)がある。歴代のWidowmakerを調べてみた

まず有名なのがマーチンB-26マローダ。アメリカ陸軍の中型爆撃機で高速性能を重視したために低速時の安定が悪く、着陸時に事故が多発した。

重爆撃機のコンソリデーテッドB-24リベレータは航続力を稼ぐために細長い主翼を採用した。そのため主翼に1発でも被弾すると墜落した。航続力は少ないが主翼が大きく頑丈なB-17と比較されて、Widowmakerや「空飛ぶ棺桶」の俗称がついた。しかし航続力があるため第2次大戦では爆撃機としてだけでなく哨戒機や輸送機としても多用され、生産は18,000機を越える傑作機となった。

海軍の急降下艦上爆撃機カーチスSB2Cヘルダイバーも空母の規格と生産性向上を優先させた結果バランスの悪い機体となり、発着艦時の事故が多く「二流のクソッタレ」やWidowmakerの俗称がついた。それでも44年以降は主力爆撃機となり、連合艦隊にトドメを刺した。

戦後ジェット機の時代になると海軍艦上戦闘機のチャンス・ヴォートF7UカットラスとマクドネルF3Hデモンがある。共に高速性能を重視した飛行機だったが、カットラスは双垂直尾翼と無尾翼を採用した。そのため減速するためには機首を大きく上げなければならず、着艦時の前下方視界が劣悪で事故が続発。54年から空母に配備されたが、57年には空母から引き上げられて予備役となり59年に退役した。カットラスの失敗を教訓として開発されたのがF-8クルーセイダーである。デモンは強い後退角の主翼が特長の全天候戦闘機だったが、採用されたJ40エンジンが予定通りの推力が出ず事故が多発し、Widowmakerとなった。J40を諦め後継のJ71を搭載すると事故は収まり、空母での運用は続けられた。デモンの設計思想は後にベストセラーとなるF-4に引き継がれた。また主翼と尾翼の形状は後にクリップド・デルタに発展していく。

最後の有人戦闘機と呼ばれたロッキードF-104スターファイターはアメリカ空軍では小型過ぎて短期間の運用で終わってしまったが、西ドイツでは主力戦闘機としてだけでなく偵察や戦闘爆撃、核攻撃などにも運用され大量に採用された。しかし天候の悪いヨーロッパでの運用は事故が多く、配備された918機のうち292機が事故などで失われたため、Widowmakerのドイツ版となった。

ゼネラルダイナミックスF-111アードバーグはケネディ政権の国防長官マクナマラの指示でアメリカ空海軍の新型戦闘機を統一する構想で生まれた可変翼戦闘爆撃機。空母では運用できない程大きくなり空軍だけで採用された。主翼の可変機構の欠陥とTF30エンジンのトラブルで初期には事故が続発したためWidowmakerとなった。しかし70年代に入ると可変機構の欠陥は改善され、エンジンの特性に沿った運用マニュアルが整備された結果、事故率が大幅に低下した。精密な航法装置と大きな兵器搭載力と兵器誘導装置を持つF-111は戦略爆撃機としても採用されFB-111となった。リビア爆撃で侵攻能力を実証した。湾岸戦争では電子戦用に改造されたEF-111がジャミングを行い、F-15EやF-117がイラクのレーダーサイトを次々に破壊。F-111は誘導兵器の6割を投下する主力攻撃機として活躍し損耗率が最も低い機体となり、兵士からは「F-16を飛ばすな!アードバーグの邪魔だ」と言われた。しかし運用コストが高かったためF-15Eストライクイーグルを後継として退役。EF-111は3軍の運用見直しにより、海軍/海兵隊のEA-6Bに後を譲り退役した。

海軍型F-111の開発中止から新型戦闘機となったのはグラマンF-14トムキャット。開発期間を短縮するためにミサイル管制システムとエンジンを受け継いだため、F-111と同様エンジントラブルが多く、試作機から墜落事故が相次ぎ、ビーストやWidowmakerと言われた。特に距離を置いた双発の機体構造からフレームアウト(=ジェットエンジンのエンスト)を起こすと、そのままフラットスピンに陥いる致命的な欠陥があった。しかし海軍では近い将来に新型エンジンF401に換装する計画だったのと優れたミサイルにより空戦機動に入る可能性は少ないとして、F-111同様にエンジン操作に制限を加える事で回避した。ところがF401は技術的トラブルを回避できず開発中止となったため、TF30は長い間F-14のアキレス腱となった。リスクはあったものの、ソビエトが軽空母(ミンスク)や原子力ミサイル戦艦(キーロフ)、Tu-22Mバックファイアなどを次々に就役させたため、F-14は艦隊防空と制空戦闘の切り札となった。レーガン政権が「強いアメリカ」を標榜し、就役させたB-1Bのエンジンを改良したF110エンジンがF-16用に開発された。このF110をF-14に搭載する事になり、アキレス腱問題がようやく解消されるメドがついた。さらにレーダーも高性能化する計画も上がった。ところがソビエトが崩壊し冷戦が終わるとアメリカ軍史上最も高額な運用経費だったF-14は軍事費圧縮の格好の標的となり、現用機をすべて適用する予定だったエンジン換装型(F-14B)は32機の改修と38機の新造(コスト的に改修と変わらないため)で終わり、レーダー強化型(F-14D)は18機の改修と37機の新造で終わった。海軍ではグラマンA-6イントルーダー攻撃機の後継機開発計画が遅れていた。(最終的に中止された)またリビア爆撃を空軍に持って行かれた様に海軍の空母戦力には侵攻攻撃能力不足が指摘されていた。そのためF-14Dに対地攻撃能力を付加する計画が実行された。(ボムキャット計画)低脅威下での局地的紛争への対応を掲げるアメリカ軍は後継機にF/A-18E/FとしてF-14は06年に退役した。

このように試作開発や運用初期段階で事故を多発させてWidowmakerの俗称が付いたが、後に改善された飛行機も多い。

ベル・ボーイングC/MV-22オスプレイはどうなんだろう?マスコミが言うほどのWidowmakerなんだろうか?

V-22は開発段階と運用初期段階でそれぞれ2回の重大事故を起こし、00年12月から02年5月まで飛行停止になっている。実戦配備後(02~12年7月)は59回の事故。うち4件は墜落事故だ。これはF-14よりも少ない。但しF-14の搭乗員は2名でベイルアウト可能なのに対してV-22は2名+αでベイルアウトはほぼ不可能なので死傷者は多くなる。

空軍で使用するCV-22はアメリカ特殊作戦軍(SOCOM)に所属するため、夜間や超低空での作戦が必須となり、危険度が増大する。さらに全く新しいタイプの飛行機のため、運用も試行錯誤の最中と言っても良い。そのために事故率が13.47と非常に高いのだろう。

先日、岩国に陸揚された海兵隊で使用するMV-22(本来の形式と逆なのは海軍でCVは空母を意味するため。CV-22は軽空母インデペンデンス)は通常の輸送任務に就くため、事故率は1.93。これは代替予定のCH-46とほぼ同等でCH-53の4.15より遥かに低い。因みにSOCOM発足の発端となったイラン大使館人質奪還作戦(イーグルクロー)では掃海型のRH-53を使用したが、この機体が途中の燃料補給ポイントでトラブルを起こし作戦続行が不可能となり、さらに接触事故を起こし中止され失敗した。また04年に沖縄国際大学の敷地内に墜落したのもCH-53Dだ。

ワイドショーやニュースショーでのオスプレイ報道は相変わらずの偏向気味だ。

  1. 取り上げられる事故の多くはCV-22である。
  2. ヘリコプタの安全装置でオスプレイに装備されていないと紹介されるオートローテーション機能だが、アメリカ連邦航空局(FAA)などが民間機に義務付けた機能で、軍用機には義務付けとなっていない。ただ軍用ヘリの多くは民間バージョンも販売されるので半ば標準装備である。また機能を発揮するには一時的に揚力と推力を失うのはオスプレイだけでなくヘリも同じで、一定の高度と速度が必須であり、それ以下の場合は機能しない。特にCV-22は低空飛行が主任務となるので、仮にオートローテーションがあったとしても機能しない。現在のところオスプレイは民間バージョンが計画されていないので機能があるかどうか(と言うより、可能かどうか)は不明。
  3. 垂直に離着陸する映像や機能ばかりが紹介されているが、これは燃料を消費するので、実際には滑走路があれば、ローターを斜めにして推力と揚力を得ながら飛行機のように離着陸する。この時にエンジントラブルが発生した場合は飛行機の様に不時着となる。
  4. アメリカで住民の反対で訓練飛行が中止になったと言うニュースはキャノン空軍基地の第27特殊作戦航空団第8特殊作戦飛行隊のCV-22であり、海兵隊のMV-22に関して住民の反対運動の報道は日本以外にない。一部ではCV-22の嘉手納配備もウワサされているが、交替するMH-53Jは現在配属されていない。
  5. オスプレイの欠陥とされる箇所は形状ではなくエンジンの排気熱による周囲への損害と機体の火災の恐れである。実際にハワイ・カネオヘへ配備される際にはハワイ州からこの問題を指摘され、運用改善計画を製作した。
  6. 細かい話だが、「ボーイング製のオスプレイ」と紹介されているが、最終組み立てはベルで行われている。

どうもマスコミの過剰報道は「オートバイ=暴走族=悪」の様な図式が描かれている気がする。

批判されるべきは日本政府と与党の対応ぶりだろう。

防衛大臣1人に丸投げで野ダメ首相や関係閣僚は知らん顔。おまけに反対運動が激しくなった途端に民主党内から政府批判が飛び出すと言う相変わらずの場当たり&マヌケぶり。

防衛大臣だけでなく、沖縄担当大臣が現地へ向かい知事や自治体首長、住民らとヒザをつき合わせて話を聞き、アメリカと話を詰めるのが本来の姿だろう。

おそらく10月の普天間配備でハシゴを外された格好の防衛大臣が責任を取って辞任と言うシナリオだろう。もっとも「それまで野ダメが持てば」の話だが。

 

 

 

 

 


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