後宮物語<8>

2017-08-08 | ss(後宮物語)
※原作の設定を大きく逸脱した部分を含むお話です。苦手な方は閲覧ご注意ください。





「右近少将!・・・さま」

突然、木の陰から現れた右近少将に姿にびっくりしていると

「何をそんなに驚いているのさ」

笑いながら近づいてきた。

「姿が見えなかったから、来ないのかと思ってたから・・・」

「待ってるって言ったじゃないか。ぼくの方こそ、なかなか撫子どのが現れないから、今日は無理なのかと半分諦めかけてたんだ」

「あ、ごめん・・・なさい」

「いいよ、謝ることじゃないさ。ぼくが早く来過ぎただけだから」

そう言うと

「良かったよ、来てくれて」

照れくさそうに笑った。

「さて、撫子どの。どこを見たい?どこでも案内するよ」

昨夜と同じ月明かりがある夜で、斜めから当たる月の光が、右近少将の顔に微妙な陰影を付けている。

直衣は品の良い光沢を放っているし、顔も話し方もどこにも変なくせがなく好感が持てて・・・

うーん、やっぱり絵に描いたような貴公子だわ。

「どこかある?」

重ねて聞かれ

「じゃあ、近衛府から!」

あたしは元気よく答えた。

ほんと、せっかくなんだから楽しまなくっちゃ。

こんな貴公子が、あたしのためだけに大内裏を案内してくれるって言うんだもの。

青春の思い出ってやつよね。

「近衛府か、いいね。少しは詳しいよ」

なん澄まして言うので、思わず吹きだしてしまう。

「撫子どのは、その・・、自邸は、どこなのかな」

並んで歩き出すと、右近少将が聞いてきた。

「え」

「いや、無理に聞きだそうとか言うんじゃないんだ。嫌なら答えなくていい」

「いやってことはないけど」

ふむ。困ったな。

正直に答えたら「三条邸よ」ってなるんだけど、そう言うわけにもいかないし。

「えーとね、万理小路あたりなの」

小萩の身の上を借りることにした。

「そうか」

右近少将は頷き、少しの間の後に

「撫子どのには姉君とか、妹君っているのかな。例えば、その、どこぞの権門に養女として引き取られたり、もしくは妻に収まったりとかした」

「え、いないけど」

「全く誰もいない?」

「おと、・・・いえ、えーと、一人娘だけど、それが何か・・?」

「いや、良いんだ。ごめん」

「・・・」

「ぼくばかり色々聞いて済まなかったね。もし、撫子どのからぼくに質問があったら聞いてくれて構わないけど」

右近少将に言われ、あたしはふと黙り込んだ。

聞きたいことだらけと言えば、だらけなんだけど・・・。

でも、実はさっきから、と言うか昨夜から、何となーく頭にある都合の良い考え───

つまりね、縁談のお相手が、この右近少将ってことはないのかしら?ってこと。

左京の話じゃ、まだ結婚はこれからって感じだったし、「権門のご子息」と言う条件にこの右近少将は当てはまるもの。

あたしは隣の右近少将をちらりと見た。

だけどねぇ、15には見えないのよ。

そこがねぇ・・・

これはズバリと聞いてみるしかないわね。

「じゃあ、一つ聞いてもいいかしら」

「もちろん」

「右近少将ってお幾つ?」

「歳?」

「そう」

「16だよ。年が明けたら17になる」

「・・・」

やっぱり。

「そうよねぇ・・」

思わずため息が漏れてしまうと

「え?16じゃだめだった?」

「あ、ううん。そんなことはないのよ」

笑顔で返しながら、心の中ではがっくりと肩を落としてしまう。

右近少将があたしの縁談の相手だったなんて、そんな上手い話、あるわけないわよねぇ・・・

なんてことを考えながら歩いていたら、小石に躓いてしまったようで

「あ」

身体がつんのめり、次の瞬間、右近少将に抱きとめられていた。







<続>



この先、昨夜のクイズの話です。
もしかしたら読む方によっては「ネタバレ」と思われるかも知れません。
私としてはそれほど大きなネタバレではないと思うのですが、純粋に話だけを楽しみたいと言う方は、お読みになるのをお控えください。




・・・・大丈夫ですか?


では、どうぞ!




昨夜のクイズ、私の出題の仕方が分かりにくかったかも知れません。

ヒントと言いますか、補足です。

瑠璃の縁談相手、これはほぼ皆さん、同じ殿方を思い浮かべていらっしゃるようで、でも、そうなると引っ掛かってくるのが「15のガキ」のところなんじゃないかと思います。

今回のクイズは、ズバリ、その「15」が重要なんです。

そんなに難しい「答え」ではありません。

皆さんから寄せられたクイズの答えの考察が深く、さらに素晴らしくて、守弥ばりに「ひぃ」っと叫んでイスから転げ落ちそうになっています。

なぞなぞ?とんち?駄じゃれ?・・・そんなレベルです。

さら~っと考えて見てください。もしかしたらその方が当てやすいかも知れません。

(クイズの答えは「縁談相手の殿方を当てる」だけでは正解とはなりません)






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