※本館「現代編」設定の2人です※
瑠璃さんをすっぽりと腕の中に閉じ込めながら、ぼくはギュウギュウと回した腕に力を入れた。
「瑠璃さん・・」
泣きじゃくる瑠璃さんは小さな子どもみたいだった。
「怖かったんだから・・」
「ごめん」
瑠璃さんは手の平で涙を拭うと、ぼくの顔を見上げてきた。
涙に濡れる瑠璃さんの目はキラキラしていて、じっと見ていると吸い込まれそうになる。
「瑠璃さん」
ぼくは瑠璃さんの両肩に手を置いた。
言え。
言うなら、今しかないぞ。
ひとつ大きく息を整えると、ぼくはゆっくりと口を開いた。
「瑠璃さん。ずっとぼくが一緒にいてあげるから、だから、もう泣かないで」
一言一言ゆっくりと心を込めて言うと、瑠璃さんはハッとしたように目を見開き、じっとぼくを見ていたかと思うと、やがてコクンと頷いた。
そうして
「本当ね?本当にずっと一緒にいてくれるわね。約束ね?」
「うん、約束するよ」
大きく頷くと、瑠璃さんは、ほぉ・・っと大きく肩で息をついた。
「良かった。あたし、方向音痴だから、こう言う広いところって苦手なのよ」
「・・え」
「でも、高彬がずっと一緒にいてくれると言うのなら安心だわ」
「・・・」
「もうはぐれたりしたらイヤよ」
「・・・」
い、いや、ちょっと待って、瑠璃さん・・
ぼくが「ずっと一緒にいる」と言ったのは、何もディズニーランド限定の話じゃなくて、こう、何て言うか、もっと視野の広い話と言うか、2人の未来を語ったと言うか・・・
「あのさ、瑠璃さん」
言い掛けた次の瞬間「ドーン」と大きな音がして、歓声が沸き上がった。
「わぁ・・!」
瑠璃さんが夜空を見上げ、ぼくも釣られて見上げると、パークの上空に大輪の花が咲いている。
花火だった。
パッと咲いた大輪の花は、キラキラと瞬きながらシンデレラ城に振りかかっては消えていく。
「綺麗ね」
瑠璃さんに下から笑顔で言われ
「・・うん。そうだね」
「すごく楽しい!高彬、誘ってくれてありがとう」
「うん」
ぼくも笑って頷き返した。
告白は失敗に終わったけど、でも、瑠璃さんのこの笑顔に免じてヨシとしよう。
また次の機会もあるだろう。
「ねぇ、高彬。スタージェット乗りに行きましょうよ。きっと綺麗よ」
瑠璃さんに言われ、夜のパークを歩き出す。
まだ遊ぶ人の波、出口に向かう人の波で、人が入り乱れている。
「瑠璃さん、手、繋ごうよ」
手を差しだすと、瑠璃さんがじっとぼくの手を見てきた。
「はぐれないようにさ」
「・・うん」
そっと出された手をしっかりと握り、歩き出す。
せっかくの「夢と魔法の国」で、残念ながらミラクルは起きなかったけど、それでも十分に幸せな気分だった。
それにしても───
嬉しそうな顔で隣を歩く瑠璃さんを盗み見ながら、そっとため息をつく。
瑠璃さんに告白するのは、どうやら一筋縄ではいかないみたいだぞ・・
「ぼくは瑠璃さんが好きだ」
例えばそう言ったとしても、瑠璃さんのことだ
「あら。あたしだって高彬が好きよ。だってあたしたち幼馴染だものね」
なんて言いだしかねない。
いや、言いだしかねないどころか、多いにあり得そうだ。
瑠璃さんに間違いなくぼくの気持ちを伝えるには、いくら鈍い瑠璃さんでも勘違いしないくらいにストレートで、他に解釈のしようがない言葉にした方がいいわけで───
そんなウマい言葉があるのだろうか。
ほんと、授業に「恋愛」の科目を作って欲しいくらいだよ。
告白への道のりはなかなかに前途多難のようで、ぼくはまたしてもそっとため息をついたのだった。
<続>
ディズニーデート編はこれにて終わりです。たくさんの情報提供をありがとうございました。
高校生編はまだ続きます。楽しんでいただけましたらクリックで応援をお願いいたします。
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瑠璃さんをすっぽりと腕の中に閉じ込めながら、ぼくはギュウギュウと回した腕に力を入れた。
「瑠璃さん・・」
泣きじゃくる瑠璃さんは小さな子どもみたいだった。
「怖かったんだから・・」
「ごめん」
瑠璃さんは手の平で涙を拭うと、ぼくの顔を見上げてきた。
涙に濡れる瑠璃さんの目はキラキラしていて、じっと見ていると吸い込まれそうになる。
「瑠璃さん」
ぼくは瑠璃さんの両肩に手を置いた。
言え。
言うなら、今しかないぞ。
ひとつ大きく息を整えると、ぼくはゆっくりと口を開いた。
「瑠璃さん。ずっとぼくが一緒にいてあげるから、だから、もう泣かないで」
一言一言ゆっくりと心を込めて言うと、瑠璃さんはハッとしたように目を見開き、じっとぼくを見ていたかと思うと、やがてコクンと頷いた。
そうして
「本当ね?本当にずっと一緒にいてくれるわね。約束ね?」
「うん、約束するよ」
大きく頷くと、瑠璃さんは、ほぉ・・っと大きく肩で息をついた。
「良かった。あたし、方向音痴だから、こう言う広いところって苦手なのよ」
「・・え」
「でも、高彬がずっと一緒にいてくれると言うのなら安心だわ」
「・・・」
「もうはぐれたりしたらイヤよ」
「・・・」
い、いや、ちょっと待って、瑠璃さん・・
ぼくが「ずっと一緒にいる」と言ったのは、何もディズニーランド限定の話じゃなくて、こう、何て言うか、もっと視野の広い話と言うか、2人の未来を語ったと言うか・・・
「あのさ、瑠璃さん」
言い掛けた次の瞬間「ドーン」と大きな音がして、歓声が沸き上がった。
「わぁ・・!」
瑠璃さんが夜空を見上げ、ぼくも釣られて見上げると、パークの上空に大輪の花が咲いている。
花火だった。
パッと咲いた大輪の花は、キラキラと瞬きながらシンデレラ城に振りかかっては消えていく。
「綺麗ね」
瑠璃さんに下から笑顔で言われ
「・・うん。そうだね」
「すごく楽しい!高彬、誘ってくれてありがとう」
「うん」
ぼくも笑って頷き返した。
告白は失敗に終わったけど、でも、瑠璃さんのこの笑顔に免じてヨシとしよう。
また次の機会もあるだろう。
「ねぇ、高彬。スタージェット乗りに行きましょうよ。きっと綺麗よ」
瑠璃さんに言われ、夜のパークを歩き出す。
まだ遊ぶ人の波、出口に向かう人の波で、人が入り乱れている。
「瑠璃さん、手、繋ごうよ」
手を差しだすと、瑠璃さんがじっとぼくの手を見てきた。
「はぐれないようにさ」
「・・うん」
そっと出された手をしっかりと握り、歩き出す。
せっかくの「夢と魔法の国」で、残念ながらミラクルは起きなかったけど、それでも十分に幸せな気分だった。
それにしても───
嬉しそうな顔で隣を歩く瑠璃さんを盗み見ながら、そっとため息をつく。
瑠璃さんに告白するのは、どうやら一筋縄ではいかないみたいだぞ・・
「ぼくは瑠璃さんが好きだ」
例えばそう言ったとしても、瑠璃さんのことだ
「あら。あたしだって高彬が好きよ。だってあたしたち幼馴染だものね」
なんて言いだしかねない。
いや、言いだしかねないどころか、多いにあり得そうだ。
瑠璃さんに間違いなくぼくの気持ちを伝えるには、いくら鈍い瑠璃さんでも勘違いしないくらいにストレートで、他に解釈のしようがない言葉にした方がいいわけで───
そんなウマい言葉があるのだろうか。
ほんと、授業に「恋愛」の科目を作って欲しいくらいだよ。
告白への道のりはなかなかに前途多難のようで、ぼくはまたしてもそっとため息をついたのだった。
<続>
ディズニーデート編はこれにて終わりです。たくさんの情報提供をありがとうございました。
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