心が温かくなった時
一寸嬉しいことがあった時
自分を褒めたい時
メイカーズを飲る
お気に入りのバーで
一人カウンターに座り
「メイカーズをロックで」
トクトクトク・・・
グラスへ注がれる琥珀色の液体を眺めつつ
メイカーズだけのことを考える時
店内のざわめきも
街の喧騒も
日々の憂鬱も
一瞬この世から消え去る
「お待たせしました」
静かにグラスが目の前に置かれると
一呼吸置いた後
そっと手を伸ばす
琥珀色の液体が喉元を過ぎ去り
体内で黄金色の輝きを放つ時
その時だけ
その時だけは
世の呪縛から解き放たれ
己の肉体からも離脱し
そこはかとなく空間を漂う
バーの天井の片隅から
店内を俯瞰する時
耳元でジョン・コルトレーンが流れ
限りなく透明な時が流れ
そして未来へと想いは流れてゆく
これから先も
この贅沢が許される限り
日々の柵から逃れ
一瞬の逃避と虚脱に身を置くことであろう
戦士の休息として
未来の糧として
そして
現実の世界を認識するために