ミロク式

ミロクレコーズの雑記。

雑記_篠田桃紅の線による解放感

2020-09-26 03:00:35 | 日記

みなさんこんばんは。ミロクレコーズの大澤です。

もう2年以上投稿していませんでした。本当に久しぶりに書きます。

 

ミロクレコーズは河内宙夢&イマジナリーフレンズをリリースしてからしばらくリリースはありません。

 

2017年に仕事を始めてから東京を離れたこともあり、目まぐるしく生活が変わりました。今は名古屋に住んでいます。生まれ故郷を離れしばらくさみしい気持ちが夜な夜な襲ってきましたが、今は名古屋で平穏に暮らしています。

サラリーマンとしての日々は、今まで身近だった感覚を気が付かないうちに無くしてゆくものと思っていました。精神的に摩耗することもありますが、しかし、根本の性格は変わり様がありません。サラリーマンになったらマーシーの「さよならビリー・ザ・キッド」に出てくる悲しい友達のようにうらぶれてしまうのかと戦々恐々としていました。

先日あるアーティストを知りました。篠田桃紅という書道家です。彼女は今年107歳でいまだに現役として活動しています。驚異的な体力です。その人を知ったのは、何もやる気の起きない休みの日でした。YouTubeでサーフィンしていると、数年前のNHKの特番の映像に出会いました。彼女の大きな筆で書くとても力強くかつ繊細な線にはっとし、一気に目が覚めました。あの時の感情を言語化するのは不可能ですが、私はあのさらっと描かれた一本の線に未来に対してとても明るい気持ちになり、また過去を大切に抱擁できるような気持ちにさせられました。

後日岐阜県の関市の市役所にある「篠田桃紅美術空間」というところに作品を見に行きました。

大学生の頃以来美術館なんて行っておらず、緊張していたので一周目はなにも面白くありませんでした。抽象的な作品が多いので、「なんじゃこりゃ。こんなの見に来たのか。意味わからないな」と少しがっかりしたのは確かです。しかし、もう一週見て回ると、まるで違う世界でした。生き物のように走り回る線、精霊が木から溢れるような動きのある線、死を感じさせるような静かな線など、それぞれの線がとても立ち上がって見えてきました。原始的なパワーに近いものがありました。墨だけであれだけの表現ができることに驚嘆しました。図録も迷いなく購入し、その晩も次の日もずっとそれらの作品の事を考えていました。また、それだけ惹かれている自分にも驚きました。久しぶりにこれだけ心を揺さぶられるものに出会えた喜びが大きかったです。今の仕事をする以前ならなにも感じないようなアートです。これほどに琴線に触れたことに戸惑いました。

今の仕事は文字を作る仕事です。職人のような、町工場のような仕事です。文字を見る日々は様々な曲線、直線に気を配ります。しかし、それはあくまで四角の枠の中での線の交通整理です。個人の表現とは似て非なるものです。それは他の文字との整合性を保つ線です。篠田桃紅の作品に感銘を受けたのは、仕事で面倒をみる線たちと対照的で、とても刺激的な線に見えたからかもしれません。自由で、はかなくてもろいその線に啓示を受けたような感覚がありました。

篠田桃紅の作品に憑りつかれたのはサラリーマンとして働いている今の仕事があってのことです。この生活ままでいいのだろうかとずっと気にしていましたが、ようやく現状を肯定できるようになったと思います。

別になにかするわけでない日々の生活の積み重ねが、自分の新しい感覚を生む土壌になったり、触れるきっかけになるだけで価値があると思えるようになりました。他人にわかるような表現をせずとも自分の何かが変わった気がするだけで生きるのにリズム感が出てきて楽しいと思います。大人になっちまったな。


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