Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Phyl Sheridan

2007-03-25 | Folk
■Phyl Sheridan / Simple Things■

シアトルをベースに活動したフォークシンガー Phyl Sheridan のファーストアルバムは、Morning Glory というマイナーレーベルから 1975 年にリリースされました。
 
 Phyl Sheridan のスタイルはアコギをバックに朴訥としたボーカルが重なるというもので、曲によっては初期の Bob Dylan に似たフォーキーだったり、カントリーブルースという趣きだったりします。 特徴的なのが、ギターのアルペジオなども複雑でテクニカルなものではなく、ほとんど素人が音楽を演奏しているのに近い雰囲気です。 全曲一発録音でオーバーダビングは一切ないものと思われます。 曲はトラディショナルの「Shady Grove」と「Jack Of Diamonds」以外は全曲オリジナルとなっています。
 A 面の冒頭 3 曲は、そんな実直な Phyl Sheridan のスタイルが貫かれるシンプルな曲が並び、やや単調な印象はどうしても否定できません。続く「Vagabond’s Blue Trail」はハーモニカのイントロでサウンド的なアクセントが入るだけでなく、メロディーにも抑揚があり、古き良きフォークのなごりを感じる名曲です。この曲が彼のオリジナルというところは高く評価できます。
 B 面の「Bad Money」は珍しく完全にリズム&ブルースです。無骨で汗臭いギターをバックに Phyl Sheridan のトーキング調のボーカルが展開されます。ほとんど、ストリート・ミュージシャンのような気分ですね。 「Black Gypsy」と「Naturally Stoned」は、3 人のバックミュージシャンが加わります。 「Black Gypsy」では、Quinto Drum と Tumba らしき音は確認できますが、面白いのが中間部で聴けるベース・ハーモニカのソロです。 ウシガエルの鳴き声みたいな音なので、クレジットを見ないと何が鳴っているのかわからないかもしれません。 「Naturally Stoned」は、1970 年代のニューソウルに影響された洗練されたグルーヴ感のある曲調ですが、楽器が楽器なのであくまでもカントリーブルースの範疇かなあと。 曲の途中で聴けるソロはサックスにしか聞こえないのですが、クレジットがないので誰の演奏なのかも分りません。 ラストの「Take It Like It Comes」は、ワシントン州のモンロー刑務所で行われたライブ・レコーディングです。 歌詞のアドリブも交えた R&B 的な曲なのですが、あまり盛り上がりません。 二箇所ほどで歓声が聞こえますが、すぐに沈静化してしまうし、手拍子なども巻き起こりません。 1975 年にこのようなオールドスタイルのフォークを聴かされた収監者はどんな気持ちで彼のライブをみたのでしょうか。

 Phyl Sheridan の公式ページは見当たりませんでしたが、CD Baby のサイトで、3枚のアルバムが CD 化されていることを発見しました。 「Sand In My Last Hour Glass」「Freedom Calling Me」そして、「That’s When I Knew」の3タイトルです。 「Freedom Calling Me」のレビューを読んでいて新たな事実を知りました。 Phyl Sheridan は、2006 年 3月に亡くなっていたのです。 この「Simple Things」から亡くなるまでの 30 年もの間、おそらく彼の音楽スタイルはまったく変わらなかったのでしょう。

 

■Phyl Sheridan / Simple Things■

Side-1
Simple Things
Shady Grove
People Seem To Forget
Vagabond’s Blue Trail
Jack Of Diamonds

Side-2
Bad Money
Black Gypsy
Naturally Stoned
Take It Like It Comes

Produced by Frank H. Ferrel and Phyl Sheridan
Recording by Tom Martin , Rick Keefer and Richard Harris

Phyl Sheridan : guitar and vocals
Carolyn Brandy : Quinto Drum on ‘Black Gypsy’ and ‘Naturally Stoned’
Don Wilsun : Tumba on ‘Black Gypsy’ and ‘Naturally Stoned’
Jim Hokanatul : bass harmonica on ‘Black Gypsy’ and ‘Naturally Stoned’

Morning Glory Records No.1