社長日記

日々の出来事や、感じることなど、思いつくままに・・

西庄 旧町開発物語 8

2012-09-29 08:50:47 | Weblog

 

いつもこのブログを見て頂いて有難うございます。

26日、超名門ゴルフクラブ 「 六甲国際ゴルフ倶楽部 」にて、二回目の参加となります @ドリームカップに参加

してきました!

ここは、そう、石川 遼さんがパナソニックオープンでホールインワンを達成したコースですのでご存知ですよね♪

実に、関東~関西、四国、山口県に至るまで、各地で大活躍されておられる社長さん達の末席にて、和歌山の選手として

の参加です。

 

服装だけは負けじ!と「 ドン小西 」を思わせるパンツの人が私。

ちょっと地味かな?と思いましたが、中々の浮きっぷりでしたよ^^

成績は四位ともうひとつでしたが、こんな機会でもなければ、回る事の出来ない東コースでのラウンドに加え、各都市で

活躍されている方々とお話もできて貴重な一日となりました。

この冬に東京でも開催されるそうですが、もし行けそうならば是非に!と願っております。(費用が心配・・・)

 

さて、本日は西庄 旧町開発物語 を記載したいと思います。

打って変ってあまりにローカルネタですが、ご愛読頂けましたら幸いです。

 

 

  ~  西庄 旧町開発物語 第8話 ~

 

 

プルルルル♪

 

「 はい、クリエイト 西本です 」

 

水曜日という事も有り、午後からは仕事を休み、き○く湯でサウナに入った帰りの事、一本の電話が鳴った。

 

 

この頃は、刈払機のおかげもあってか、複数の預かり物件を預かる状態になってはいたが、依然、作業を無料で続ける

繰り返しの日々が続いていた。

しかし、いつかはこの作業が報われると信じ、不動産の所有者が近隣から苦情を受ける事の無い様に一生懸命に

管理作業を行ってきた自負も大いにある。

年末まで残す所二か月あまりというこの頃、ふいに鳴った電話の番号をみると、それは一番最初に預かる事になった

例の東京の○○さんの電話番号だった。

 

一瞬?とは思いはしたが、取りあえず電話をとり、用件を聞く事にした。

 

 

「  あ~西本さん?東京の○○です。西庄の件でお世話になっております。 実はですね~ 今月和歌山に行こうと

 思うんですよ。ようやくですけど、もう西庄の不動産を処分する事に大体踏ん切りがつきましたんで・・・・・」

 

願っても無いご相談だった!

遡る事、一か月前、実はこの不動産の内、半分を購入したいというお客様が現れ、その旨を連絡していたのだ。

金額もほぼ合意に達し、すぐに「 じゃあ売ります 」とはならなかったのだが、一か月を経てようやくの売却意思

を売主は示してくれたのだ。

 

又、その折に、残り半分の面積についても、私が良く知る人からの購入申し込みが入った。

私としては、売主にスムーズに全ての土地を処分できる提案が出来、売る気持ちさえ整理がつけば、売主に

とっても「 もっけの幸い 」となるチャンスで有る事は間違いなかった。

 

 

「 そうですか!有難うございます。それでは、前もって日時を指定して頂ければ、スケジュールを空けておきます」

 

 

足掛け一年の草刈りがついに実を結ぶ時が来た事に、私は言いようも無い達成感を感じた。

電話を切った後、止めていた車のエンジンをかけ、意気揚々と自宅へと車を走らせたのだった。

 

その日の夕食は、この人一体どうなるんやろう?的な感じで普段の私を見ていたであろう嫁さんも大いに喜んで

くれ、「 どうや見たか! 」的な私のしょうもない自慢話も、辛抱強く最後まで聞いてくれた。

不動産の売買はそれぞれが高額である事は間違いないのだが、今回の件は、中でもそこそこの規模となる

開発のきっかけとなる案件であり、この件単体で見ても、「 良い仕事 」である事は間違いなかった。

 

 

翌日、マイルドセブンを片手に、私は早速120坪程度の土地の分割提案書の作成に係り、土地家屋調査士の

元へ持ち込むことにした。

又、既存の古屋敷の解体工事に係る費用を売主に提示する為、複数社へ見積の依頼の電話をかけたり、これから

行う事になる境界確定の為に、現場でそれらしき形跡が残っていないか確かめに行く等、実に充実した数日を

過ごす事になる。

 

 

「 大体出来たな・・・・。解体費用と、所有権移転登記の費用、不動産譲渡税、後は・・・・売った後入る金額を書いて・・」

 

 

残す所、重要事項説明書の作成と契約書の作成の作業だけとなった。

これらの書類については、今になって良く分かる事だが、不動産屋さんにもやはり経験に基づく精度の優劣が有り、

良くできた説明書と契約書と、少しの不備があるそれとがある。

当時の私はまだ経験も多くは無かったが、それでも人づてに聞きまわり、自分でもこれなら大丈夫!と思える物を

作成出来た様に思う。

買う人にとっては、一生の財産となるはずの「 不動産 」を扱う売買書類である。

作る私にとってもなかなかのプレッシャーであり、何度も何度も読み返した記憶が有る。

 

ようやく殆どの準備を終え、後は売主の和歌山への到着を待つだけとなった私は、所在不明の両側の地主達を

どう調べるかについて、司法書士や市役所など関係すると思われる様々な所を飛び回っていた。

 

 

 

 

 

 

そして事件は起こった・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

                                                 続く・・・・・・・

 

 

 

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西庄 旧町開発物語 7

2012-09-18 08:50:18 | Weblog

いつもこのブログを見て頂いて有難うございます。

巷は三連休・・・・私はと言いますと、二組のお客様をご案内し数件のお問い合わせをこなすという作業に留まりました。

う~ん・・・案内をもっと取りたかったな~と反省しています。

 

さて、TVで流れるニュースで皆さんもそろそろ辟易として来ているのではと思いますが、国内政治、外交問題・・・・

大きな視点で見てみますと、全てとある国の大統領選に起因している気がしてなりません。

翻弄されるだけに加えて、日本の国益を有る程度無視せざるを得ない状況下での混乱ですね。

 

総理大臣は国民総選挙になったらいいのになぁ~と思う今日この頃です。

 

 

  ~ 西庄 旧町開発物語 7 ~

 

 

ビジネスで有る以上、利益に繋がる事のない行動はしてはいけない。

これは当たり前の事である。

しかし長期に物事を考えて、来たるべき日の為に行う準備というものは、一見すると 「 奉仕 」にしか

見えない事もある。

 

 

「 速報!!草刈り無料!! 」 と書かれたチラシを作成した私には、実は一つの目的が有った。

 

 

まず、そこそこ値段のする「 刈払機 」を、自分のビジネスに生かして行く為に、何かする必要があった。

しかし、「 刈払機 」にできる事は、草を刈る以外にはない。

となると、「 草を刈る 」 → 不動産事業に関係させる → 収益を生むという構図を具現化させなければ

ならない。

 

ここで重要な事は一つ、 「 草を刈る料金を頂く 」という事は避けなければならない。

なぜなら、料金を頂いてしまうと、草刈り事業になってしまう上に、シルバー人材センターから派遣される

高齢の作業員との価格競争になってしまう。

何よりも、不動産業とリンクさせられないのである。

 

実際の所は、「 不動産管理業 」という業種もあるのだが、当時の駆け出しの私の思考範囲は狭く、管理を

行う事を「 生業(なりわい) 」とするには、経験も知識も乏しい状態であった。

 

考えた末、空いている時間を有効活用する事と、刈払機を有効に活用する為にくだんのチラシを作成した

わけである。

恐らくではあるが、「 このチラシは反響が有る 」と予想した。

 

 

チラシの中段には、大きな文字で

 

「 クリエイトは不動産屋です。無料で草刈りを行うには、その不動産に管理物件もしくは売り物件の

 看板を設置させて頂く必要があります 」と、記載する事も忘れなかった。

 

上手くいけば、売却物件を預かれる事と、すぐには売却とはならずとも、クリエイトの看板が西庄の

あちこちで人目に触れる状態を作り出す事を最大の目的としたのである。

すぐには収入とならないこの見出しは、他人の目には「 ただの奉仕 」と映ったかもしれない。

 

勢い勇んでチラシを撒きに出かけた私は、既に大型犬のいる家も把握しており、いつもよりも早めのスピード

で最初の500枚を撒く事ができた。

 

 

「 結構、早めに撒けたな・・・。足痛いけど、後500枚頑張るか・・・・ 」

 

 

マイルドセブンを片手に、事務所へ戻ろうとした時、一発目の電話が鳴った!

事務所の電話は常に携帯に転送しているのだ!

 

 

「 クリエイト 西本です 」

「 あ~ クリエイトさん?あのなぁ、チラシみたんやけど・・・・ 」

 

声の感じからして、お年寄りの男性である事は推察できた。

 

( 来たっ!)

 

   「 はい、草刈りの件でしょうか? 」

相手「 おお、そうやぁ~、あんたとこ親切にタダで草刈ってくれるんかぁ? 」

   「 はい、チラシに記載の通りです。場所はどの辺りでしょうか・・・ 」

相手「 西庄なんやけどなぁ。300坪ほどあるんや。もう何年も遊ばせ取ってなぁ。頼めるかぁ? 」

 

と老人特有のスロ~なテンポで来る。

 

   「 ええ、やらせて頂きますよ!」

 

刈払機で作業をすれば、二時間もあれば余程の事がなければできる!

 

相手「 それとなぁ、出来たら根ぇもとって欲しいんや。コルブゆうてなぁ、なんぼ刈ってもしつこい奴おんねや。 」

 

あの雑草はイカンなどと、かれこれ十分程度はやり取りを重ねた。

話の途中、老人はとぼけていたのか、本気で気付いていなかったのか、「 タダで草を刈ってもらう 」という念押しを

何度か繰り返し、その度に私は同じ返答を返した。

チラシには見落とすはずもない程に大きく記載していたが、私は一つだけこちらからも念を押した。

 

 

  「 ただし、うちの看板は設置させて頂く事になりますが、それはご納得頂いていますか? 」

当たり前の事である。

 

 

相手「 はぁ?何の看板や?(゜.゜) 」

 

 

やはり!だった。

チラシに書いている事の説明を丁寧に行うと、電話の相手は明らかなトーンダウンを見せた。

 

 

相手「 わし、売りも貸しもするつもりないんや。草刈りだけっちゅうのは無理なんか? 」

   「 すみません。そういう事ですとお引き受け出来かねます。うちもビジネスなんで・・・ 」

という言葉が終らないうちに、相手はガチャッと電話を切った。

 

あの時、携帯電話を握りつぶさなくて本当に良かったと思う。

 

 

その後も、なんやかんやと数件の問い合わせが入り一週間を過ぎるころには、念願の売却物件も手に入れた!

 

「 まあ、費用対効果でいえば上々やな^^ 」

当時の現段階では満足できる結果であった。

 

また、既に伐採を行ってはいたが、少しの作業を残していた、例の西庄の預かり物件の作業もコツコツとこなして

行き、結果的には「 刈払機 」は大活躍となったのである。

 

 

 

 

約、三カ月後・・・・・・・・又伸び始めた雑草を刈りにその物件へ赴いた時の事である。

ふいに横切る時に、気付いたのだが、その物件の両となりの空き家の内、手紙が転送されていると

予想したにも関わらず、私の出した封筒が、ポストに突き刺さったままとなっていた物件を覚えておられる

だろうか?

 

病院と居宅が一体となり、庭がきれいに整頓されていたそのお家のポストに、何カ月もささったままだった

私が郵送した封筒が、何と、なくなっていたのだ!

 

 

 

 「 あ!なくなってる!なんでや・・・・ 」

 

 

 

 

 

疑問と期待が折り重なる瞬間だった・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

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西庄 旧町開発物語 6

2012-09-10 17:35:19 | Weblog

いつもこのブログを見て頂いて有難うございます。

早いもので九月の中旬に突入しました。

しかし、私は8月より今日に至るまでの時間を、少し無駄に過ごした様な気がしております。

心機一転、少し気合いを入れなおしたいと思います。

 

さて、本日は西庄 旧町開発物語 第六話を投稿いたします。

この話は事実に基づいて書いておりますが、「 世の常 」として、私から見た事実である事柄と、かたや

関係する別の方から見た事実とは、必ずしも一致するとは限りません。

記載者である私へのご感想は間違いないかと思いますが、登場する方にも常に、「 その方の事情と都合 」

がある、という事をご理解頂きます様、お願い申し上げます。

 

 

~ 西庄 旧町開発物語 第六話 ~

 

順○堂で草刈り鎌を購入した際、ひとつ目に入った物があった。

自転車のハンドルの様な物から伸びる棒の先端にギザギザの円盤がついたそいつは、「 刈払機 」と

いうものだった。

 

一瞬、頭をよぎらなかったわけではない。

果たして、「 草刈り鎌 」一本を武器に、平屋とは言え一軒の家を飲み込もうかという、あの雑草達を

やっつけられるのだろうか・・・・

しかし、「 2サイクルエンジン 」「 混合燃料使用 」「 先端の刃取り付け簡単」と説明されるその機械は

今までの私にとって、あまりに無縁すぎた上に、当時の価格で2万円は必要だった。

私はその機械を使って毎日何かしらの作業をするわけではない。

 

「  この物件だけでしか使わんかもしれんしなあ・・・・・・その割に高いし・・使えるかな・・・ 」

 

数分だけ刈払機の説明書を読んだ私は、取りあえずは「 ガッツでやれる! 」と決断し、安価な鎌を

購入したのだった。

しかし、その決断が誤っていた事にすぐに気付く事となる。

梅雨の季節のしかも何年もそこに育ってきた雑草や樹木は、予想以上にてごわいのだ!

 

 

1時間ほどは、成果を確認せずにムシムシと雑草を刈り始めては見たものの・・・全くはかどらない。

我慢して更に作業を続けた私ではあったが、100坪を超えるその敷地の何%にも満たない上に

一つ一つを刈り取るのも困難なほどに雑草達は密集していた。

ついにはハチの巣を発見し、ふと気づけば頭上にぶんぶんとハチ達が舞い踊っていた。

 

「 やめや! 」

 

他にぶつけようもない怒りに駆られた私は鎌を投げた。

タバコに火をつけた私は、空き家の敷地から出て、憎たらしげに物件をみつめた。

 

「 しもたな・・・引き受けてもうたがな・・・ 」

 

座り込んでタバコを吸いながら、後悔先に立たずとはこの事か・・などと考え込んでいた。

 

「 あいつ高いしな・・・・ 」

 

当時、そんなに仕事も無い私は、すぐに収入に結び付かない出費は、たとえ1000円でも痛かった。

そんなに仕事が無いと言えば聞こえはいいが、平たく言えば「 無職 」の様なものである。

クリエイトという物を立ち上げている関係上、色んな人に「 社長 」と呼ばれる事がこの上もなく恥ずかしく

自分が小さい存在である事をその度に感じていた。

そんな折の、「 2万円で刈払機を買う 」という行動は絶対に避けたかったのである。

 

結局その日は事務所に戻り、成果も無いのに疲れている事で自分を許し家に帰る事にした。

実にその後、管理を引き受けているにも関わらず、3,4日は何も作業をしなかった。

正確にいえば、出来なかったのだが!

 

頭のどこかに罪悪感とモヤモヤを抱えたまま、いつもの様に缶コーヒーとタバコで朝を過ごしていた。

 

「  ええわ。いったれ! 」

 

ストレスの限界に至った私は、順○堂に車を走らせ、とうとう念願の 「 刈払機 」を購入した。

何もせずふつふつ考えるより、そうする方が精神衛生上、自分の為に相当の効果があった。

 

ウイ~ン、バリバリバリバリ。

 

必要も無いのにマスクとサングラスを付け、刈払機を振り回す私は相当おもしろく見えたに違いない。

しかし、当の私は今までのうっ憤が消えてゆくのと、驚くほどのスピードできれいに刈られていく雑草達を見て

人目等はどうでもよく、楽しくて仕方が無かった。

カラになった燃料を補充し、更にバリバリと作業を進めた結果、私は爽やかすぎる達成感を感じ、一度

作業を中断してタバコに火をつけた。

 

「 ふ~。最高やな・・・ 」

 

震えてちゃんと持てないタバコを落とさぬ様に注意を払いつつ、スポーツドリンクを飲んだ。

刈払機は常に振動している為、1時間も使い続ければ、手が震えて定まらなくなる所を

2時間位はぶっつづけでやってしまったのだ!

震える手で説明書を読み返した時、「 使用時間に要注意 」と書かれた箇所を凝視した。

 

 

わずか二日で100坪を超える敷地は驚くほどの仕上がりを見せた!

 

 

数日後、いつもの様に事務所で缶コーヒーを横に置きながら、私は次のチラシの準備に係っていた。

 

「 できた!ふふ・・・みとれよ・・・・ 」

 

タバコに火を付けた私は満足気に画面を見つめた。

刈払機を購入して以降、この無駄な出費を何とかする事を考え続けていた私は一つの結論を出したのだ。

印刷機からザッザッと繰り返し飛び出してくるチラシを見つめながら、私は一つの確信を得ていた。

 

500枚も擦った頃、自動で更に500枚を印刷設定を行った後、擦りあがったチラシをポストに投函しやすい

形に折り込み、私は颯爽(さっそう)と事務所を出て行った。

後にこのチラシには大いに感謝をする事になる。

反響だけでも不動産チラシに比べて相当な差があっただけでなく、売却物件を幾つか預かるキッカケとなった

上に、何より土地を山ほど持っている西庄の農家の地主さん達に、クリエイトという名が初めてインプットされる事と

なったのである。

 

 

 

 

そのチラシには 「 速報!!草刈り無料!!」 と大きく見出しが書かれていた・・・・・

 

 

 

 

                                                       続く・・・・・・

 

 

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西庄 旧町開発物語 5

2012-09-04 13:29:27 | Weblog

いつもこのブログを見て頂いて有難うございます。

お問い合わせを頂くお客様よりも、今シリーズを見ています、との複数のお声を頂き、大変感謝しております。

私としましては、このブログを通じて 「 苦労 」ではなく、あくまで 「 経験 」を忠実に書いて行きたいと

考えております。

時折、「 大変なんだなぁ~ 」と感じられる様な内容もあるかと思いますが、誰しもが・・・という事は世の中で

仕事をする人であれば必ずある、と思いますし何も不動産に限った事ではありません。

どの業種、どの職種にも必ず障壁が有り、立場が変われば考えも変わるという事なんだと思います。

 

~ 西庄 旧町開発物語 第五話 ~

 

 

まだ寒風吹きすさぶ頃に始めたチラシ撒きを通じて、一つの方向転換に行きついた私は、無駄に終わるかもしれない

費用と労力と時間を使い、一つの「 取り組み 」を行った。

 

雨が毎日降り続くであろう季節が近づく頃、その取り組みはフイなタイミングで一つの成果をもたらした。

狙いを定めていた空き家のオーナーらしき人物から、電話がかかってきたのだ。

 

「 実は和歌山から転送されて来たお手紙を拝見しまして・・・・・ あの~・・・・・え~と・・・・ 」

 

「 あ、はい、その手紙は間違いなく、私が発送したものです。書面の内容を繰り返す事になりますが

 実は私は○○様のご親族が所有されております、西庄の空き家の近くで最近、不動産屋を始めた者です 」

まずは、挨拶をさせて頂き、まだ話す内容の整理がつかない感じの所有者様(この時点では(?))に

事の次第を順に説明した。

 

「 ええ、お話の通りの内容を手紙で拝見しました。実は、その空き家は私が生まれ育った家でして・・・ 」

聞けば、電話の相手はご両親が他界された後、この家を相続し、家の中の整理を行った後は手付かずで

一年以上は経つとの事だった。

 

私としては、自分が自ら行った取り組みにも関わらず、実際に手紙が転送された相手から電話を頂いた、と言う事が

驚きでもあり、満足でもあった。

しかし、この不動産をクリエイトで預からない事には、ただの自己満足であり、何が目的かも分からない行動となる。

 

「 不動産の管理はお困りではないですか? 」

雑草が生い茂り、家すらも飲み込もうかという程の荒れっぷりを既に把握してはいたが、「 所有者様の見解 」が

なければ、ただの売り込みになってしまい、「 はい、そうなんです。宜しく 」とはならない事は容易に想像できた。

 

「 もう一年以上、和歌山へは行っていないんで、全くそちらの状況が分からないんですけどね・・・・ ちなみに、管理

 って、どういう事なんでしょうか・・・・ 」

至極当然の反応である。

例えば、近年に建てられた建築物で、賃貸人を探そうかと言う状況でもあれば、窓を定期的に開けに行って

換気を行ったり、不審者の出入りが無いか定期的に巡回する等の必要はある。

しかし、この不動産は昭和の中後期に建築された古い建物で、実際、建物を維持するという名目においては

既に何をする必要も無い程に劣化していた。

 

「 草刈りと敷地を超える樹木の伐採 です。ご近所にご迷惑がかかるといけませんので・・・ 」と説明した。

しかし、高校を卒業してからは他府県に居住し、ご近所さんとも既に面識はない、という所有者様は

意外にも無反応に近い印象だった。

 

「 そんなに伸びてるんですか・・・・う~ん・・・その管理をお願いするというのは、お金がかかるんですかね・・ 」

 

「 管理をする事で月々の費用がかかる不動産屋もありますが、うちは一切費用は頂きません。

 但し、一つだけお願いがあります。

 それは、この不動産を売却する際は、クリエイトと専任契約を行って頂きたいという事です。 」

そもそも、それのみが目的なのである。

 

「 あ~、それは別に他に知り合いの不動産屋もいませんし、どうせなら、西庄の不動産屋さんに依頼するのが

 私も妥当だと思いますので、全く依存はないのですが、売る時期についてはどうなんでしょうかね・・・ 」

 

先方の意見は、和歌山へ戻る予定も無く、税金が係るだけにいつかは処分しないといけないとは考えているが

具体的なビジョンが全くないし、それについての予備知識もないので戸惑っているというものだった。

万一、数年間もふんぎりがつかなければ、管理だけを委託していて問題が無いのか?という趣旨の問いだった。

 

「 構いません。売却しない事が分かっているのであれば、私もお引き受けできませんが、売却予定であるという

 事で有れば、是非、うちにご依頼ください。又、売却に係るまでの経緯と費用、税金等、これから疑問になるで

 あろう事は、全て事前にお知らせ申し上げますし、ご相談に乗らせて頂きます。 

 ただ、売却はするが、複数の不動産屋さんに依頼する事と、他社に依頼する事はご遠慮頂けませんでしょうか?」

 

この点を曖昧にする事は、後にトラブルとなる可能性があり、労働力を先に無報酬で提供するならば

この約束は必ず取り付ける必要があると思った。

もし、後にハシゴを掛け替える(他社に急に乗り換える)様な相手であるのならば、むしろこの時点でハッキリさせて

おくべきである。

 

「 分かりました。私の方も良く考えてからもう一度、お電話をします。 少し時間をください・・・ 」

そう言って所有者様は電話を切った。

 

 

それから数日後、再び私の電話が鳴った。

 

「 もしもし、東京の○○です。この間はどうも・・・・あれから考えたんですが、やはり管理をお願いしようと思います 」

売却を依頼する不動産屋が縁者にいないかの確認と、やはり近々西庄の家を売却する気持ちに整理がついたと

いう内容の電話だった。

 

「 有難うございます。責任を持って管理させて頂きます。売却についてのプロセスは、時間をかけて相談しましょう 」

右手のガッツポーズは崩さず、受話器を持つ手と、口調ははあくまで冷静を保ったまま電話を終えた。

 

電話を終えた後、マイルドセブンに火をつけた私は、ゆっくりと椅子にもたれかかった。

まるで、アメリカのテラスに置いてある、ゆっくりと前後に揺れる椅子に座っている様な心地であった事は今でも忘れない。

 

「 ふ~~。良かった。やってみるもんやな・・・・・・ 」

 

毎日毎日、大海のど真ん中で釣り竿一本で釣りをしていた様な作業とは裏腹に、売主を確保し、物件を預かるという事は

非常に発展的であり、その事は、不動産仲介業においては、一年の収支が見えてくると言う事に繋がる。

 

「 マーケティングやな ^^ 」

 

<必ず売れるゲリラマーケティング>と題名が書かれた、机の隅に置かれた本に一瞬目をやった。

 

「 さて、では早速・・・・ 」

私はすぐさまホームセンターへ向かい、一本の草刈り鎌と軍手を購入し、作業着に着替えて事務所から程近い

ホヤホヤの預かり物件に向かった。

 

 

鉄の門を開け、空き家の敷地に足を踏み入れた瞬間、私は草刈り鎌は全く必要なかった事に気づくのであった・・・

 

 

 

 

        

 

                                                        続く・・・・・