ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第14回 Bodega NQN@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:10:42 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年9月11日)

第14回  Luis Maria Focaccia  <Bodega NQN>

アルゼンチンといえば情熱的なアルゼンチンタンゴ、そしてサッカー!
今回のゲストは、その情熱溢れるアルゼンチンからやってきました。
パタゴニア地方のワイナリー"NQN"(エヌ・キュー・エヌ)のオーナー、ルイス・マリア・フォカッチアさんです。



<Luis Maria Focaccia>
パタゴニア地方ネウケン出身。
本業は弁護士。現在、弁護士の仕事とワイナリーの仕事は半々。「弁護士を引退したら、ワイナリーに専念できそうですね?」と尋ねたら、満面の笑みで「ええ、もちろん」と答えてくれたのが印象的。好きなワインはマルベック。
日本のテクノロジーに非常に興味があり、今回の来日では愛知万博や秋葉原も見学してきたとか。


パタゴニアって、どこ?

アルゼンチンのワイン生産地といったら"メンドーサ"。ぶどうの生産量も、95%以上をメンドーサエリアが占めています。このメンドーサと首都ブエノス・アイレスを含む地帯は"Centro"(チェントロ)(中央の意味)と呼ばれ、チェントロの南に南北に長ーく広がるのが"Patagonia"(パタゴニア)地方です。

フォカッチアさんのワイナリーは、このパタゴニア地方の"Neuquen"(ネウケン)という地にあります。  

彼のワイナリー名の"NQN"は、なんだか不思議な名前ですが、実はネウケン(Neuquen)から取っています。(ネウケン空港のコード名も"NQN"です)。

フォカッチアさんは、まずネウケンからブエノス・アイレスに飛び、次にブラジルのサン・パウロへ。
そして北米のニュー・ヨークと3回乗り継ぎ、38時間かけて日本にやってきました!気が遠くなるほどの長旅です。




Q.ネウケンはどのような土地ですか?
A.メンドーサの800km南に位置しています。チリとの国境にはアンデス山脈がありますが、ここは海抜300m程度です。雨は年間で180mlと少ない半砂漠地帯です。夏は暑く(40℃くらいまで上昇)、冬は寒くて(マイナス7~8℃まで低下)、また、一日の気温差も18℃くらいあり、寒暖の差が激しい土地です。

Q.いつからこの土地でワインをつくり始めましたか?
A.2001年にブドウを植え、2003年からワインを生産しています。
2003年は8万本、2004年は42万本、2005年は92万本の生産量でした。2004年から生産量が増えたのは、ワイナリーを2004年4月30日に本格的に稼動させたからです。醸造施設だけでなく、レストランも併設しているんですよ。

Q.なぜネウケンでワインづくりをしようと思ったのですか?
A.私はネウケン出身で、ここにリンゴやナシの果樹園を持っていました。この土地には愛着があります。
また、ここは半砂漠地帯のため量は望めませんが、品質を追求するのであれば、素晴らしいブドウが得られると思ったからです。元々ワインが好きで、ワイナリーを持つのが夢でした。ワイナリーは私の末息子のようなものです。

Q.ネウケンはワインづくりに適した土地ですか?
A.ブドウを植える前は、まったく手の入っていない荒地でした。土壌は砂地に小石が混ざっています。それを切り拓き、162haの土地にブドウを植えました。
風が強い土地柄で、空気がとても乾燥しますが、それがブドウの健康状態をよい状態に保ってくれます。

Q.半砂漠地帯ということですが、灌漑は行っていますか?
A."ドリップ・イリゲーションシステム"を採用しています。
畑のセクターごとにセンサーを取りつけ、コンピュータで湿度を管理し、灌漑を行います。畝の間には砂よけの雑草を植え、また、雹よけにネットを張ったりということもしています。

Q.NQNで生産しているワインは?
A.品種は、白はソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを、赤はマルベック、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワールです。全て手摘みで収穫します。
醸造に関しては、メンドーサからエノロゴを呼び、フレンチ・オーク、アメリカン・オークなども使ったワインづくりをしています
現在は4つのレベルのワインを生産しています。さまざまな品種、レベルのワインを生産するのは、マーケット戦略を考えてのことです。

Q.マーケット戦略というのは、海外を意識しているということですか?
A.国内と国外は、今は半々です。国外ではアメリカに輸出していますが、ブラジルへの輸出が決まっています。メキシコとドイツは途上中です。日本はまだですが、近いうちにぜひ、日本のみなさんにも飲んでいただきたいですね。

Q.アルゼンチンでは、NQNのような新しいワイナリーは増えていますか?
A.ここネウケンでは、立ち上げて4~5年という若いワイナリーが5つあります。どこも同時期に立ち上げたところで、ネウケン全体では2000haになります。
他の地域でも、新しいコンディションを持った土地を求め、メンドーサ以外の新しい地域に広がる傾向が見られます。




<テイスティングしたワイン>

1) Malma Pinot Noir 2004
ピノ・ノワール100%で、アルコール度数は14.5%!完熟したフルーツの凝縮感が強く、ボリュームのあるボディを持った力強いワインですが、ビロードのように超しなやか。

2)Malma Merlot 2004
メルロー100%。80%をステンレスタンクで、20%を樽で熟成させています。樽はフレンチオークとアメリカンオークの両方を使用。
色は非常に濃厚。香りはフローラルな若々しさを感じ、口にするととてもなめらかです。花のような豊かなアロマを持った、きれいなスタイルのワインです。

3)Malma Malbec 2004
アルゼンチンのお家芸ともいうべきマルベック100%。こちらも80%をステンレスタンクで、20%を樽で熟成させています。紫の色が非常に濃く、深みがあります。フルーツのジャム、コンポートのような甘い香りが華やかで、果実味が口いっぱいに広がります。タンニンも豊富でパワフルなのに、とてもまろやかに感じます。



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インタビューを終えて


NQNのワインには、上から
"セレクション"、"マルマ・リゼルヴァ"、"マルマ"、"ピカダ" の4つのラインナップがあります。

ブランド名となっている"マルマ(Malma)"は、先住民であるマブーチェ族の言葉で"誇り"を意味するのだとか。


こちらは マルマ・リゼルヴァ

アルゼンチンワインというと、地域では"メンドーサ"、品種では"マルベック"という認識があり、「大きな肉の塊を濃厚なマルベックのワインで流し込む!」みたいなイメージもありました。
しかしここ数年で、ネウケンをはじめ、各地方で新しいワイナリー、そして新しいワインが誕生しつつあるのです。

特に国際マーケットを意識しているワイナリーでは、クオリティが高く、かつ洗練されたワインを次々と生み出しています。有機栽培に取り組むところも増えてきました。

しかし、そうしたワインは、まだまだ日本ではお目にかかれる機会がほとんどないというのが実状です。
近いうちにぜひ、みなさんに新しいアルゼンチンワインをごく気軽に飲んでいただき、驚いてもらいたいものです。


*NQNのホームページ   http://www.www.bodeganqn.com.ar

(取材協力:アルゼンチン大使館)


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