ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第13回 Chateau Pape-Clement@「キャッチ The 生産者」

2009-01-07 13:05:19 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2005年8月11日)

第13回  Anne Le Naoul  <Chateau Pape-Clement>



今回は、フランスのボルドーから素晴らしい生産者をお迎えしました。
グラーヴ地区のペサック・レオニャンでも指折りの名門、
シャトー・パプ・クレマンのワインメーカーである、アンヌ・ル・ナウルさんです。

<Anne Le Naoul>
パリ生まれ。料理学校の先生をしていた父と、ホテル業界を経て"ゴー・ミヨ"誌の編集に携わっている母の影響を受け、ワイン業界へ。
モンペリエの醸造学校でディプロマを取得後、オーストラリアのヤラ・ヴァレーのワイナリーでアシスタント修業。その後はシャンパーニュのマム、シャブリのラロッシュなどを経て、パプ・クレマンに入社。
好きなワインは赤で、品種ではメルロー。自分のつくるワインはもちろん、ラングドックあたりのものもよく飲むとか。


パプ・クレマンは、グラーヴの"クリュ・クラッセ・デ・グラーヴ"(赤ワインは12シャトー、白ワインは9シャトー)に格付けされている超一流シャトーです。

現在のオーナーはベルナール・マグレ氏で、他にもメドック格付け4級のシャトー・ラ・トゥール・カルネをはじめ、フランスではボルドー地方やラングドック地方、国外ではスペイン、アルゼンチン、カリフォルニア、ウルグアイ、モロッコなどの32のワイナリーを経営しています。
また、コンサルタントには、あのミッシェル・ローラン氏が参画しています。



Q.パプ・クレマンには何人のワインメーカーがいますか?
A.当社では、パプ・クレマン以外のワインも数多くつくっているので、6~7人のワインメーカーがいます。が、女性は私ひとりで、しかも、私が一番年下です。

Q.あなたの担当範囲は?
A.ボルドー地域とカリフォルニアのナパ・ヴァレーで、7つのぶどう園を管理しています。そのため、ナパには年に何度も出向きます。

Q.オーナーのマグレ氏は、なぜそんなにたくさんのワイナリーを経営しているのですか?
A.みなさんに違ったワインを届けたいためです
例えばパプ・クレマンはグラン・クリュクラスのワインで、ラ・トゥール・カルネは4級格付けですが、もっと気楽に飲めるものも提供したいと考えています。また、ブティック・ワインといった、稀少価値の高いワインもつくりたいと考えています。
それらを、ネゴシアンとしてではなく、"ワイン生産者"として提供したいと思っているので、ワインにはマグレのサインを入れ、保証の印としています。私たちは、プライスよりクオリティの追求に力を入れているのです。

オーナーは現在68歳ですが、新しい考えを持っている人です。ボルドーは、シャトー側の主張が強いところが多いのですが、消費者の求めるものを常に気にかけています。サインには、消費者を失望させてはいけないという、オーナーの気持ちが込められています。

Q.パプ・クレマンのワインづくりのポイントは?
A.ワインづくりには、"エグ味(苦味)"と"酸化"といったマイナスの要素の危険性を伴いますが、それをどれだけ押さえるか、ということに最大の注意を払っています。
例えば、よく熟していない未熟なぶどうだったり、また、醸造の際にぶどうの種が潰れたり、茎や葉っぱなどの緑の部分が混ざったり、ということでエグ味が出てきますので、そうならないような作業をします。

具体的には、房の一粒ずつを手で外しながら丁寧に選別しています。

これは2001年から始めたことなのですが、収穫時の2週間は150人体制でこの作業に当たります。そのための人員を確保したり、特別な部屋を用意したりと、非常にコストがかかりますが、品質のためには仕方がありません。
これにより、ワインにエグ味が出ないようになりますし、実に傷がつかないので、酸化を防ぐこともできるのです。

Q.すべてのワイナリーで、一粒ずつ取り外す作業を行っているのですか?
A.全てではありません。機械を使って除梗するところもありますが、なるべく手作業に近づけるような方法を取っています。

Q.フランス以外でワインをつくる理由は?
A.我々は常に良いぶどうを求めています。良いぶどうを求めるということは、良い畑を求めるということです。良い畑を求めていたら、例えば、スペインであればトロとプリオラートにポテンシャルの高いテロワールを持った畑が見つかったのです。そこで我々の持てる技術を駆使し、良いものを最大限に引き出したいと考えてます。

Q.今後のプロジェクトの予定は?
A.現在、南アフリカやイタリアで土地を探しているところです。イタリアではシチーリアに素晴らしい畑がありそうです。



<テイスティングしたワイン>  


La Croix du Prieure 2002(ラ・クロワ・デュ・プリウレ)
AOCプルミエール・コート・ド・ブライエの赤ワイン。
収穫量を26hl/haに押さえ、最高のテクニックを使ってつくった、生産本数3,000本というブティック・ワイン。メルロー90%、カベルネ・ソーヴィニヨン10%を100%の新樽で熟成。
果実味が凝縮し、タンニン量も豊かな力強いワインで、今からでも充分おいしく飲めますが、長期熟成のポテンシャルを持っているので、今後が楽しみです。


Chateau Fombrauge Blanc 2003(シャトー・フォンブロージュ・ブラン)
AOCボルドークラスであるにもかかわらず、収穫量は28hl/haとかなり低く押さえています。ソーヴィニヨン・ブランを中心に、セミヨンとソーヴィニヨン・グリと少量のミュスカデルをブレンドした白ワインです。
フレッシュな状態の2~3年以内に飲むことを勧められましたが、新樽を使っているので、樽の風味がしっかり感じられ、ワインに厚みもあります。発酵から瓶詰めまで、すべて重力のみで作業され、フィルターもかけていません。


Chateau La Temperance 2003 (シャトー・ラ・タンペランス)
AOCオー・メドックの赤ワインで、メルロー主体に、カベルネ・ソーヴィニヨンとプティ・ヴェルドがブレンドされています。収穫量は48hl/haで、つくりもシンプルなので、ハレの日よりは週末に気軽に楽しんでほしいワインだそうです。たしかに、まろやかで飲みやすく、料理によく合います。
「このワインはフォアグラの脂に合うと思います。日本で食べたマグロの赤身にもよく合いましたよ」とアンヌさん。



Chateau Pape-Clement 1984 (シャトー・パプ・クレマン)
カベルネ・ソーヴィニヨン60%、メルロー40%で構成されています。
20年の熟成の時を経たワインは非常にやわらかくこなれ、いい飲み頃を迎えていました。こういうワインを飲むと、熟成したボルドーの素晴らしさを再認識させられます。(マグナムボトル)

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インタビューを終えて

ボルドーも男性中心の世界で、女性のワインメーカーはまだまだ少ないそうですが、有名シャトーでも少しずつ女性が活躍しはじめたようです。
ある統計によると、香りや味覚に一番敏感なのは、若い世代の女性なのだとか。
ということは、アンヌさんのような人材が醸造の分野に積極的に携わっていくことは、実は非常に理にかなっているといえるでしょう。
しかもアンヌさんは、両親の影響で"香り"と"味"に対して敏感に育ち、自然にワインの道に進んだ、というのですから。

彼女たちを起用するかどうかはオーナー次第かもしれませんが、伝統的な体質が根強く残るボルドーにも、これからはマグレ氏のようなオーナーが増え、人材の起用だけでなく、シャトー経営のさまざまな面において、驚くような変化が見られるようになっていくのかもしれません。


*ホームページ  http://www.pape-clement.com



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