ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

第 5回 Domaine C. et Claude Marechal@「キャッチ The 生産者」

2008-12-28 11:18:08 | キャッチ The 生産者
「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。

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  (更新日:2004年10月11日)

第 5回  Claude Marechal  <Domaine Catherine et Claude Marechal>



第5回目のゲストは、 フランスのブリニィ=レ=ボーヌ(Bligny-les-Beaune)村の"Domaine Catherine et Claude Marechal"(ドメーヌ・カトリーヌ・エ・クロード・ マレシャル)のオーナー、クロード・マレシャルさんです。

マレシャルを訪問したいと思ったのは、東京で飲んだ彼のワインのピュアでみずみずしいおいしさに感動したからです。
ブリニィ=レ=ボーヌという村のことも、非常に気になりました。彼はどんなところで、どんなふうにワインをつくっているのでしょうか?

<Claude Marechal>
ドメーヌの設立は1981年。
以前は他の仕事をしていたクロードは、カトリーヌと結婚した後、実家に戻り、ワインづくりに携わるようになりました。
現在は夫婦二人三脚でぶどう&ワインづくりに力を注いでいますが、仕事を離れると、小さな男の子を持つパパの顔に戻ります。リビングにはおもちゃがあちこちに散らばり、ベビーの写真が飾られていました。



そもそも、ブリニィ=レ=ボーヌ村ってどこにあるのでしょう?

実はブルゴーニュにあるのですが、この村の名前のAOC(*1)名がないため、残念ながら、ブルゴーニュの生産地マップにはめったに載っていません。

ブルゴーニュの中心ボーヌの街から南に向け、国道74号線を3kmほど車で走らせると、"Bligny-les-Beaune"の標識が見えてきます。その標識を左折し、ちょっと日本の田舎的な風景にも見える平坦な畑の中を通り抜けると、そこはもう村の中。  
しかし、本当に小さな村です。ドメーヌはどこ?と探しているうちに、車は村を通り過ぎそうになりました。村の中は人っ子ひとりとして歩いていないので、道を尋ねることもできません。
なんとか無事に到着すると、ダイニングではマレシャル一家と友人たちとのランチがちょうどお開きになるところでした。
クロードのパパもかなりいい感じにご機嫌状態(下のにこやかなお顔の写真をごらん下さい)です。


マレシャルではコート・ド・ボーヌエリアのワインを生産しています。
ここを訪問したのはこの前の冬だったので、樽に入れたばかりの2003年のワインを中心にテイスティングさせてもらいました。下記はその一部です。

●Bourgogne Aligote (B)

●Bourgogne Blanc Gravel (B)

●Bourgogne Rouge Gravel (R)

●Auxey-Duresses (B) (R)

●Ladoix-Serrigny (R)

●Chorey-les-Beaune (R)

●Savigny-les-Beaune (B) (R)

●Savigny-les-Beaune 1er Les Lavieres (R)

●Volnay (R)

●Pommard La Chaniere (R)

(注)(B)は白、(R)は赤ワインです





Q.ブリニィ=レ=ボーヌ村で収穫されたぶどうからのワインは、どういう名前で出されるのですか?

A.ご存知のように、"ブリニィ=レ=ボーヌ"というAOC名はありませんが、ここもブルゴーニュですので、白は"ブルゴーニュ・ブラン"、赤は"ブルゴーニュ・ルージュ"として出しています。
赤白とも"Gravel"という畑名を付けています。

 
Q.ぶどうの樹齢はどのくらいですか?

A.Ladoixは20年くらいですが、Choreyは30年、Savignyは35~40年、Volnayは50年で、ラベルに"ヴィエーユ・ヴィーニュ"(*2)と入れているものもあります。
 

Q.現在はブルゴーニュでもビオディナミ(*3)の生産者が増えていますが、あなたのところはどういう農法ですか?

A.私のところはビオディナミではなく、必要最小限の除草剤や殺虫剤類を使う"リュット・レゾネ"です。ビオディナミは大変です。
 

Q.あなたのワインづくりのコンセプトは何ですか?

A. "ベスト・フルーツ"を大切にすることを心がけています
そのため、樽の風味が勝ち過ぎないよう、新樽の使用はできるだけ控えめにし(平均20%ほど)、キュヴェによっては新樽は使わず、3~4年経った樽を使うようにしています。
また、ろ過にはこだわりがあり、ワインにフィルターはかけません

 
Q.あなたにとって"ワイン"とは?

A.ワインは生きています。決して同じものはなく、いつ飲んでも違っています。今日はこう感じても、明日はまた違ってきます。それがワインの面白さだと思っています。

(*1)
Appellation d'Origine Controleeの略で、原産地統制名称ワインのこと

 
(*2)
"vieille"(=古い)+"vigne"(=ぶどうの樹)で、樹齢の古いぶどうの樹からつくられたワインを意味し、"V.V."と略されたりする。何年以上をV.V.にするかは、各生産者の捉え方によっても違う。

(*3)
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。

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インタビューを終えて  

樽に入れられたばかりの2003年のワインはどれも色が濃く、よく熟した果実感がたっぷり。まだワインになっていない、フレッシュでプチプチとしたアタックが舌に小気味良く当たります。
しかしながら、通常は酸味が強いとよく言われる"アリゴテ"には熟したパイナップルのようなニュアンスがあり、とてもまろやかな味わいでした。

白では珍しい"サヴィニ・レ・ボーヌ"があり、そのやさしくふくよかな味わいには、一気にファンになってしまったほど。見かけたらぜひ試してみて下さい。
"ポマール"になるとさすがにパワフルで逞しく、長い熟成の必要性とポテンシャルを感じました。


とってもにこやかなクロードのパパ


約20種のテイスティングを終えて感じたのは、
彼のつくるワインにはすべて、自然な果実のピュアで凝縮したおいしさがある、ということです。
突き刺すような攻撃的なところは一切なく、なめらかな舌触りで、すうっとノドをすべり落ちていきます。

おとなしくシャイな感じの彼ですが、ワインに向かったときに見せる鋭い目の奥の輝きが、妥協を許さない意志の強さを物語っています。
それが、やさしいのに凝縮している彼のワインに現れているのでしょう。


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