「ワイン村.jp」 (社団法人日本ソムリエ協会 オープンサイト)(2004年5月~2008年12月終了)に連載していた「キャッチ The 生産者」(生産者インタビュー記事)を、こちらにアップし直しています。
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。
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(更新日:2005年7月11日)
第12回 Louis-Jean Sylvos <Chateau de la Roche>
今回のゲストのルイ=ジャン・シルヴォさんに会うのは、実はこれが二度目です。彼から、「また日本に行くから、ぜひ会いましょう!」とメールをもらった私は、「もちろん!」と、返信しました。
<Louis-Jean Sylvos>
1946年生まれの59歳。シャトー・ド・ラ・ロッシュのオーナー兼ヴィニュロン(ぶどう栽培家)。前職を引退後、ワインビジネスの世界へ。
シャトー・ド・ラ・ロッシュ は、ボルドーのシャトー?と勘違いしてしまいそうな名前ですが、フランスのロワール地方にあるシャトーです。
ロワールのワイン生産地域は、ロワール河を河口に近いナント地域から上流に上ってくると、アンジュー&ソーミュール地域、その上流のトゥーレーヌ地域、さらに内陸の中央フランスとなっています。
シャトー・ド・ラ・ロッシュは、 "フランスの庭園"と呼ばれるトゥーレーヌ地域の、アゼイ・ル・リドー(Azay-le-Rideau)にあるシャトーで、その歴史は1580年に遡ります。
シャトーが所有する土地は35haで、うちぶどう畑は6.5haあり、シュナン・ブランを中心に、カベルネ・フラン、グロロー、コー(マルベック)種が栽培されています。
土壌は粘土石灰岩質で、シレックスと呼ばれる火打石も混ざっています。
Q.たしか、あなたがこのシャトーを手に入れたのは最近ではありませんでしたか?
A.はい、私がこのシャトーを買ったのは2000年でした。その前は、私は建築家で、ワインとは全く関係ない仕事をしていました。フランスでは、ビジネスマンが引退した後、好きなワインづくりをはじめるということはときどきある話です(笑)。
Q.ということは、昔からワインが大好きだったということですね。毎日飲みますか?
A.もちろん、ワインは毎日飲んでいますよ(笑)。
Q.あなたのワインづくりのコンセプトは?
A.まず、自然な農法でぶどうを育てることにあります。
Q.ということは、ビオディナミ(*1)を採用しているのですか?ロワールではビオディナミの生産者が多いようですが?
A.いいえ、特にビオディナミというような名前のついたものでなく、本当に伝統的な自然な方法なのです。
化学的なものは使いません。施肥は剪定した枝を利用していますし、うねの間に草を生やし、害虫や雨対策をしています。
ロワールではたしかにビオディナミという看板を掲げている生産者が多いのですが、私は敢えて言いません。
Q.今日のワインについてコメントをお願いします。
A.私のところでは発泡性のワイン(ペティアン)もつくっていますが、今回は持ってきませんでした。とても泡がやわらかいスパークリング・ワインです。
● Touraine Azay-le-Rideau Blanc Sec 2004
シュナン・ブラン100%でつくっている白ワインで、セック(辛口)ですが、やわらかい果実味があります。
● Touraine Azay-le-Rideau Blanc Demi Sec 2003
ご存知のように、2003年のヨーロッパは猛暑でしたので、ぶどうの糖度が上がり、最初の2004年のワインと同じシュナン・ブラン100%ですが、ワインはドゥミ・セック(半辛口)になりました。しかし、かなり強い甘味を感じるかと思います。
● Touraine Rose 2002
グロロー種を使ったロゼです。これは、ノドが渇いたときに冷たーくして飲むと、とても美味しく感じるワインです。少し発泡している感じもあります。
● Touraine Rouge 2002
カベルネ・フランでつくった、やわらかくやさしい口当たりの、まろやかな赤ワインです。
(*1)ビオディナミ:
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。
≪さて、ワインをテイスティングしてみると…≫
この地域のシュナン・ブランの白ワインは、大概やさしい印象を受けますが、シャトー・ドゥ・ラ・ロッシュの白ワインは本当にソフトで、しかもナチュラルな魅力にあふれています。
しかし、2003年の甘さにはかなり驚きました!ドゥミ・セックなんてものではなく、しっかりとした甘さで、フォアグラやデザートなどにも合わせてみたくなるほど。
同じ構成なのに、2004年はミネラル感がしっかりと感じられ、非常にクリーンなスタイルで、ルイ=ジャンによると、2004年は"普通の年"だったので、こちらがこのシャトーの白ワインの典型のようです。
ロゼワインは透明感のある淡いローズ色が美しく、外観はうっとりするほどですが、口にすると生き生きとした酸が素晴らしく、非常にフレッシュでキリッとした味わいです。
気持ちがスカッとし、リフレッシュに最適のワインで、夏のバカンスに連れて行きたくなります。
カベルネ・フランを使った赤ワインには青臭いものが見られますが、ルイ=ジャンのつくる赤にはそんな面は一切なく、タンニンがよく熟してなめらかで、飲んでほっとする心地良いやさしいワインです。
これらのワインに共通するのは、"つくりすぎていない"こと。
わざとらしさがなく、自然で、すーっと入ってきます。
ルイ=ジャンの言う「自然な農法でつくったぶどう」が素直に生かされているのだなぁ、と実感しました。
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■ インタビューを終えて
"元建築家"というと、なんとなくキッチリとして生真面目そう、というイメージがありますが、ルイ=ジャンはとても気さくで、ユーモアもたっぷり。
たしかに、素朴な"農夫"という雰囲気ではありませんが、「自由気ままにやってるさ…」と、田舎暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきます。
こんなルイ=ジャンがつくるワインたちは、どれも伸びやかで、ナチュラル。
ワインはつくっている人を表す、というのは本当です。
ロワール地方は、ぶどうの品種もさまざまで、甘口から辛口まで、バラエティ豊かなワインがつくられています。
また、このところAOCに昇格する村も多く、ビオディナミや有機栽培の生産者も多いことから、注目されつつあるエリアでもあります。
ワインは値段も手頃で、味わい的にも普段の生活にすーっとなじめそうなものが多く、ルイ=ジャンのワインも正にその通り!
フランスには、ボルドーやブルゴーニュをはじめ、素晴らしいワイン生産地がたくさんありますが、肩肘張らずに楽しめるロワールのワインは、もっと飲まれてもいいのにね…、と強く感じた私でした。
*ホームページ http://www.chateaudelaroche.com/(日本語バージョンもあり)
シャトーでは、ツアー客の見学受け入れのほか、宿泊施設も備えています。さまざまなイベントも開催されていますので、ロワールのシャトーめぐりのひとつに加えてみてはいかがですか?ルイ=ジャンとは英語でも会話可能です。
*取材協力: 横浜君嶋屋
以前に会った時のルイ=ジャン。・・・かなり変化が(笑)
よって、現在はインタビュー当時と異なる内容があることをご了承ください。
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(更新日:2005年7月11日)
第12回 Louis-Jean Sylvos <Chateau de la Roche>
今回のゲストのルイ=ジャン・シルヴォさんに会うのは、実はこれが二度目です。彼から、「また日本に行くから、ぜひ会いましょう!」とメールをもらった私は、「もちろん!」と、返信しました。
<Louis-Jean Sylvos>
1946年生まれの59歳。シャトー・ド・ラ・ロッシュのオーナー兼ヴィニュロン(ぶどう栽培家)。前職を引退後、ワインビジネスの世界へ。
シャトー・ド・ラ・ロッシュ は、ボルドーのシャトー?と勘違いしてしまいそうな名前ですが、フランスのロワール地方にあるシャトーです。
ロワールのワイン生産地域は、ロワール河を河口に近いナント地域から上流に上ってくると、アンジュー&ソーミュール地域、その上流のトゥーレーヌ地域、さらに内陸の中央フランスとなっています。
シャトー・ド・ラ・ロッシュは、 "フランスの庭園"と呼ばれるトゥーレーヌ地域の、アゼイ・ル・リドー(Azay-le-Rideau)にあるシャトーで、その歴史は1580年に遡ります。
シャトーが所有する土地は35haで、うちぶどう畑は6.5haあり、シュナン・ブランを中心に、カベルネ・フラン、グロロー、コー(マルベック)種が栽培されています。
土壌は粘土石灰岩質で、シレックスと呼ばれる火打石も混ざっています。
Q.たしか、あなたがこのシャトーを手に入れたのは最近ではありませんでしたか?
A.はい、私がこのシャトーを買ったのは2000年でした。その前は、私は建築家で、ワインとは全く関係ない仕事をしていました。フランスでは、ビジネスマンが引退した後、好きなワインづくりをはじめるということはときどきある話です(笑)。
Q.ということは、昔からワインが大好きだったということですね。毎日飲みますか?
A.もちろん、ワインは毎日飲んでいますよ(笑)。
Q.あなたのワインづくりのコンセプトは?
A.まず、自然な農法でぶどうを育てることにあります。
Q.ということは、ビオディナミ(*1)を採用しているのですか?ロワールではビオディナミの生産者が多いようですが?
A.いいえ、特にビオディナミというような名前のついたものでなく、本当に伝統的な自然な方法なのです。
化学的なものは使いません。施肥は剪定した枝を利用していますし、うねの間に草を生やし、害虫や雨対策をしています。
ロワールではたしかにビオディナミという看板を掲げている生産者が多いのですが、私は敢えて言いません。
Q.今日のワインについてコメントをお願いします。
A.私のところでは発泡性のワイン(ペティアン)もつくっていますが、今回は持ってきませんでした。とても泡がやわらかいスパークリング・ワインです。
● Touraine Azay-le-Rideau Blanc Sec 2004
シュナン・ブラン100%でつくっている白ワインで、セック(辛口)ですが、やわらかい果実味があります。
● Touraine Azay-le-Rideau Blanc Demi Sec 2003
ご存知のように、2003年のヨーロッパは猛暑でしたので、ぶどうの糖度が上がり、最初の2004年のワインと同じシュナン・ブラン100%ですが、ワインはドゥミ・セック(半辛口)になりました。しかし、かなり強い甘味を感じるかと思います。
● Touraine Rose 2002
グロロー種を使ったロゼです。これは、ノドが渇いたときに冷たーくして飲むと、とても美味しく感じるワインです。少し発泡している感じもあります。
● Touraine Rouge 2002
カベルネ・フランでつくった、やわらかくやさしい口当たりの、まろやかな赤ワインです。
(*1)ビオディナミ:
英語では"バイオダイナミックス"。化学肥料や薬品を使用せず、独自の自然調剤を用い、暦や月の満ち欠けなどに従った独特の理論によって栽培を行う農法。
≪さて、ワインをテイスティングしてみると…≫
この地域のシュナン・ブランの白ワインは、大概やさしい印象を受けますが、シャトー・ドゥ・ラ・ロッシュの白ワインは本当にソフトで、しかもナチュラルな魅力にあふれています。
しかし、2003年の甘さにはかなり驚きました!ドゥミ・セックなんてものではなく、しっかりとした甘さで、フォアグラやデザートなどにも合わせてみたくなるほど。
同じ構成なのに、2004年はミネラル感がしっかりと感じられ、非常にクリーンなスタイルで、ルイ=ジャンによると、2004年は"普通の年"だったので、こちらがこのシャトーの白ワインの典型のようです。
ロゼワインは透明感のある淡いローズ色が美しく、外観はうっとりするほどですが、口にすると生き生きとした酸が素晴らしく、非常にフレッシュでキリッとした味わいです。
気持ちがスカッとし、リフレッシュに最適のワインで、夏のバカンスに連れて行きたくなります。
カベルネ・フランを使った赤ワインには青臭いものが見られますが、ルイ=ジャンのつくる赤にはそんな面は一切なく、タンニンがよく熟してなめらかで、飲んでほっとする心地良いやさしいワインです。
これらのワインに共通するのは、"つくりすぎていない"こと。
わざとらしさがなく、自然で、すーっと入ってきます。
ルイ=ジャンの言う「自然な農法でつくったぶどう」が素直に生かされているのだなぁ、と実感しました。
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■ インタビューを終えて
"元建築家"というと、なんとなくキッチリとして生真面目そう、というイメージがありますが、ルイ=ジャンはとても気さくで、ユーモアもたっぷり。
たしかに、素朴な"農夫"という雰囲気ではありませんが、「自由気ままにやってるさ…」と、田舎暮らしを楽しんでいる様子が伝わってきます。
こんなルイ=ジャンがつくるワインたちは、どれも伸びやかで、ナチュラル。
ワインはつくっている人を表す、というのは本当です。
ロワール地方は、ぶどうの品種もさまざまで、甘口から辛口まで、バラエティ豊かなワインがつくられています。
また、このところAOCに昇格する村も多く、ビオディナミや有機栽培の生産者も多いことから、注目されつつあるエリアでもあります。
ワインは値段も手頃で、味わい的にも普段の生活にすーっとなじめそうなものが多く、ルイ=ジャンのワインも正にその通り!
フランスには、ボルドーやブルゴーニュをはじめ、素晴らしいワイン生産地がたくさんありますが、肩肘張らずに楽しめるロワールのワインは、もっと飲まれてもいいのにね…、と強く感じた私でした。
*ホームページ http://www.chateaudelaroche.com/(日本語バージョンもあり)
シャトーでは、ツアー客の見学受け入れのほか、宿泊施設も備えています。さまざまなイベントも開催されていますので、ロワールのシャトーめぐりのひとつに加えてみてはいかがですか?ルイ=ジャンとは英語でも会話可能です。
*取材協力: 横浜君嶋屋
以前に会った時のルイ=ジャン。・・・かなり変化が(笑)
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