MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

運命の3度音程?

2012-03-01 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

03/01 私の音楽仲間 (366) ~ 私の室内楽仲間たち (339)



             運命の3度音程?




         これまでの 『私の室内楽仲間たち』



                関連記事
                  悩ましい6連符
                 運命の3度音程?
                  精緻な静謐さ
                ひとこと多い Brahms
                  渋滞で深呼吸
                そっぽを向く Brahms
              自己表現に徹した Brahms




 ブラームスの弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.51-2。 その
第Ⅱ楽章は、Andante moderato。 ゆっくりな 4/4拍子です。



 この楽章、調号だけ見ると、「まず "イ長調 (A-Dur)" から
"ヘ長調 (F-Dur)" へ移り、再び "イ長調" に戻る」…という
形を取っています。

 "A" と "F"。 前回も登場した "F-A-E 音列" との関連を
思い出さずにはいられません。



 この楽章とよく似ているのが、代表例の交響曲第3番ヘ長調
Op.90
の第Ⅰ楽章。 そこでは、"F-A-F-D-F" と、"ニ長調" の
部分もありますが…。

 "A" と "F" の位置は、ちょうど反対ですね。

 両曲の完成年代は、四重奏曲が1873年、交響曲が1883年
でした。




 そこでもう一つ、どうしても挙げたくなる曲があります。

 それは、弦楽五重奏曲第1番 ヘ長調 Op.88。 1882年
の夏前に、極めて短期間で着手、完成され、同じ年のうちに
初演されています。

 この曲は3楽章構成ですが、第Ⅰ、第Ⅲ楽章とも、調号は
"F-A-F"…となっています。 ただし転調部分も多いので、
必ずしも「調性が F と A だけ」…というわけではなく、その
点は他の曲も同じです。

          関連記事 非現実のイ長調




 こうなると気になるのが、"作品番号89" の曲ですね。

 それは、混声六部合唱と管弦楽のための、『運命の女神
たちの歌
(Gesang der Parzen)』 Op.89。 ゲーテの詩による
曲で、1882年に作曲、初演されています。



 さて、調号は…? やはり♭が一つですが、ここではニ短調
が主流です。



 しかしここでも、"FA が主役" であることには、変わりが
ありません。 曲の冒頭では、響きや動き方の点で、この二つ
の音が特に目立ちます。



 また最後の数小節間では、A に♭がついています。 交響曲
第3番の冒頭とは、向きが反対で、"A→F" と下降します。

 ただし、"A→F" (La→Fa) が鳴るのは、他の調の中での
こと。 すぐに "Fa-Re-La-Fa-Re" (下降)と、ニ短調が聞え、
同時に下からは "Re-Fa-La-Re" も押し寄せ、曲は終ります。




 ヘ長調でもニ短調でも重要な、この二つの音、F と A。

 3度音程を重視したブラームスが扱う音たちの中でも、
特に "運命的な3度" に聞えてなりません。




 演奏例の音源]は、引き続き四重奏曲 イ短調で、その
第Ⅱ楽章。 相変わらず編集もので、鑑賞には向きません。
冒頭の数小節と、最後の20小節余を、無理に繋げてしまい
ました。 共に "イ長調" (A) の部分です。

 ブラームスさん、ごめんなさい。




     [音源ページ (ブラームスの室内楽曲)

     [音源ページ (四重奏曲 イ短調)