03/01 私の音楽仲間 (366) ~ 私の室内楽仲間たち (339)
運命の3度音程?
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ブラームスの弦楽四重奏曲第2番 イ短調 Op.51-2。 その
第Ⅱ楽章は、Andante moderato。 ゆっくりな 4/4拍子です。
この楽章、調号だけ見ると、「まず "イ長調 (A-Dur)" から
"ヘ長調 (F-Dur)" へ移り、再び "イ長調" に戻る」…という
形を取っています。
"A" と "F"。 前回も登場した "F-A-E 音列" との関連を
思い出さずにはいられません。
この楽章とよく似ているのが、代表例の交響曲第3番ヘ長調
Op.90の第Ⅰ楽章。 そこでは、"F-A-F-D-F" と、"ニ長調" の
部分もありますが…。
"A" と "F" の位置は、ちょうど反対ですね。
両曲の完成年代は、四重奏曲が1873年、交響曲が1883年
でした。
そこでもう一つ、どうしても挙げたくなる曲があります。
それは、弦楽五重奏曲第1番 ヘ長調 Op.88。 1882年
の夏前に、極めて短期間で着手、完成され、同じ年のうちに
初演されています。
この曲は3楽章構成ですが、第Ⅰ、第Ⅲ楽章とも、調号は
"F-A-F"…となっています。 ただし転調部分も多いので、
必ずしも「調性が F と A だけ」…というわけではなく、その
点は他の曲も同じです。
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こうなると気になるのが、"作品番号89" の曲ですね。
それは、混声六部合唱と管弦楽のための、『運命の女神
たちの歌(Gesang der Parzen)』 Op.89。 ゲーテの詩による
曲で、1882年に作曲、初演されています。
さて、調号は…? やはり♭が一つですが、ここではニ短調
が主流です。
しかしここでも、"F と A が主役" であることには、変わりが
ありません。 曲の冒頭では、響きや動き方の点で、この二つ
の音が特に目立ちます。
また最後の数小節間では、A に♭がついています。 交響曲
第3番の冒頭とは、向きが反対で、"A♭→F" と下降します。
ただし、"A♭→F" (La♭→Fa) が鳴るのは、他の調の中での
こと。 すぐに "Fa-Re-La-Fa-Re" (下降)と、ニ短調が聞え、
同時に下からは "Re-Fa-La-Re" も押し寄せ、曲は終ります。
ヘ長調でもニ短調でも重要な、この二つの音、F と A。
3度音程を重視したブラームスが扱う音たちの中でも、
特に "運命的な3度" に聞えてなりません。
[演奏例の音源]は、引き続き四重奏曲 イ短調で、その
第Ⅱ楽章。 相変わらず編集もので、鑑賞には向きません。
冒頭の数小節と、最後の20小節余を、無理に繋げてしまい
ました。 共に "イ長調" (A) の部分です。
ブラームスさん、ごめんなさい。
[音源ページ ① (ブラームスの室内楽曲)]
[音源ページ ② (四重奏曲 イ短調)]