音次郎の夏炉冬扇

思ふこと考えること感じることを、徒然なるままに綴ります。

一括借り上げを考える

2008-06-29 12:48:34 | レオパレス、賃貸住宅
前にも書きましたが、レオパレス21関連のエントリーに毎日30人以上の来訪者があり、コメントも断続的に入ってきているのですが、ある楽観的な地主さんから2度コメントを頂戴し、あまりのナイーブさに心配になりました。投資は自己責任だし当人の自由です。所詮は他人事ですから、放って置けばいいのですが、こういう方がまだ全国に沢山いるとすれば、当分レオは安泰だなあと思うと、看過できずにコメント欄に返信を書いたのですが、やたら長くなってしまったので、エントリーを立てることにしました。というわけで、興味のない方は、本文をスルーしていただいて結構です。

レオパレス21の高笑いの本文で論点はほぼ言い尽くしているのですが、「プラス思考の地主」様と私とのコメント欄のやりとりを以下に転記します。


管理会社の変更について (プラス思考の地主より)
2008-06-22 08:28:05
今、ローン審査の段階ですが、管理会社の契約のとき、途中で管理会社の変更ができるかどうか、交渉できる余地はあるのでしょうか?
収支が思うようにならなければ、変更するという文言を入れればいいでしょうか?
借金が完納できれば、建物の解体は200万くらいでできると聞いていますので、土地だけでも自分の財産で残るのでは?


交渉してみては? (音次郎)
2008-06-22 09:35:46
>プラス思考の地主さま
私は同社と契約した経験がありませんから、形態やフローは存じ上げません。もし他に既契約ユーザーの情報源をお持ちでなければ、先方の営業にぶつけて交渉するしかないでしょう。
ここから先は私見ですが、「管理会社の変更」というのを分譲マンションのリプレースと同じようにイメージされているとしたら、それは違います。分譲マンションは、管理会社は住民自治組織たる管理組合から委託されるという建前なので、替えられても文句はいえません。
ただ、一括借り上げ(レオが一番儲かる商品)の賃貸は建設・募集・管理・修繕が一体ですから、それを前提に、業者からオーナーに種々の条件(建設費、賃料など)が出されているので、すんなりとはいかない気がします。
それに「管理会社の変更」が地主の利益になるのか疑問ですね。築年数経ったあの安普請の画一的なアパートは市場価値が低いので、逆にレオ以上の募集ノウハウを持った不動産屋はないでしょう。つまり建てたら負けということです。


参考になりました。 (プラス思考の地主より)
2008-06-24 15:38:19
管理会社を変える必要はないということですね。
規約では10年間は家賃保証は確実なんで、安請負の画一アパートが市場価値が低くなったとしても、会社契約の入居者募集が強みのレオのコンセプトであるといっている点が、よりどころですが、・・・(原文ママ)
建てたら負けというのは、具体的にどんな点か教えていただけませんか?
オーナー側としては、10年後の更新時は強気で家賃交渉に臨むつもりですが、もっと前向きに考えられないものですか?



うーん・・・、レオにしてみれば、とても有り難い地主さんですね。10年目以降は転貸業者の方がしんどくなるのですから、渡りに船というものでしょう。両者物別れで終了というのは、願ってもない展開です。強気で交渉に臨むも何も、レオの方は内心ほくそえんで「サヨウナラ~」って感じじゃないですか?

10年目以降の度重なる保証賃料値下げの通告と交渉は、

レオ:「条件を下げないと入居者が入らず、一括借り上げの継続ができなくなりますよ」
地主:「そんなの聞いてないぞ、話が違うじゃねえかゴルア」

といった感じで、大阪府の団交のような不毛なやりとりになるのは火を見るより明らかです。10年で終了するか、管理会社を変えてくれれば、そんな対応にコスト(手間)を割かずに済んで助かりますよね。(ただしこれは今後各地で頻発するパターンだと思いますが)

一括借り上げ契約が築10年を過ぎれば2年ずつの契約更新を要し、趨勢としては徐々に保証家賃を下げざるを得なくなりそうだということは、さすがに認識が広まってきているようです。この「プラス思考の地主」さんも、レオがパンフで謳う「30年間のパートナーシップ」が幻想にすぎないのは、おそらくわかっておられるのだと思います。だから10年間で店閉まいするくらいの覚悟で、「借金完納」「建物解体」ということに言及されているんでしょう。

でも、この「プラス思考の地主」さんは、無条件に10年間の家賃保証は確実だと盲信しておられますが、これだってこの先どうなるかわかりませんよ。レオが10年以内に潰れる会社とは思えませんが、賃貸市場がシュリンクしている上に、同社や大東や東建の専門業者やハウスメーカーが入り乱れて、マーケティングなどお構いなしに競って地主にアパートを建てさせたために、既に市場は供給過剰状態に陥っています。逆ザヤが顕在化し各地で火を噴くようになれば、民法でいうところの「事情変更の原則」により、10年の固定期間内でも保証賃料見直しに踏み込んでくる可能性は十分にあります。

まあリスクばかりを言っていてもキリがないので、百歩譲って少なくとも10年間は固定賃料が保証されるという前提で、短期でフィニッシュする賃貸経営を想定してみます。このエコ時代において、10年で建物スクラップというのはどうかとも思いますが、あくまで机上の計算です。抽象論ではわかりにくいので、具体的なシミュレーションをしてみましょうということです。

賃貸事業はロケーションによって条件が異なり、当然ながら地方に行けば行くほど不利になります。建設費は変わらないのに、高い家賃がとれなくなるからです。いや、むしろ北の方は寒冷地仕様、海の近くは塩害仕様と建設コストは割高になる傾向がありますので、そうなると地方はさらに収支が悪くなります。でも、全国にいらっしゃるレオの提案を検討する人たちのための例示としては、比較的条件の良いケースを題材にした方が説得力に富むと考えました。よって、まず私が住む首都圏の埼玉で至便なところを想定することにします。川口市は、東京都北区に面したロケーションで、都心や副都心のいずれにも30分足らずでアクセスできる地域です。賃貸物件も比較的多いですから、需要がある地域といっていいでしょう。レオの物件紹介サイトで検索し、川口市において家賃がほぼ中間レベルの物件を調べると、ワンルームの相場賃料が、大体6万円前後だということがわかります。

そこで、川口にまとまったボリュームの遊休地を持つ地主が、レオの営業攻勢に陥落し1億円の建築費を投じて1K20戸のアパートを建築したとします。

家賃は相場の6万円です。角部屋も真ん中部屋も同一賃料ではないでしょうが、計算をラクにするために、ここでは全戸6万円の設定です。保証料率は、私の知る限り一括借り上げは7掛けが多いようですが、つまりオーナーと転貸業者とのレベニューシェアが7:3ということですね。ただこれは物件や会社によって違ってきますので、ここでは家賃保証料率を80%と、オーナー有利で算定します。そうすると、入居者から入ってくる家賃6万円のうち、オーナーの取り分は1戸あたり4万8千円ということになります。

48,000円/戸×20戸=960,000円(月間保証賃料)

960,000円×12ヶ月=11,520,000円(年間保証賃料)

よって、オーナーは10年間で1億1520万円の収入となります。

ただご存知のように、一括借り上げの場合、当初3ヶ月間の賃料はオーナーには入ってこない「免責期間」が設けられているのが一般的です。この商慣行は、「スタート時は入居者募集が不安定なため」と説明されていますが、これは詭弁もいいところで、賃貸は新築時が一番入居者を集めやすく美味しい期間です。ここで業者はがっぽりと稼ぎ、利益を確保するのです。
48,000円×20戸×3ヶ月間=2,880,000円

「プラス思考の地主様」は解体費用が200万円と書いておられますが、これはちょっと甘い見積もりですね。いくらスカスカペラペラの建物とはいえ、昨今は廃棄コストが上昇しており、今から10年後には、150坪程度の鉄骨アパートを解体して更地に戻すのには300万円近くかかることを覚悟しておいた方がよいでしょう。ただ、ここでは200万円超の計上にとどめておきます。よって、免責期間に得られない288万円と合わせて、上記の収入から約500万円を差し引きます。

その結果として、

建設費:1億円
収入:1億1千万円

10年で締めた結果、1億円の投資に対して10%にあたる1千万円のリターンがありますから、単純年利回りとしては悪くないように見えます。でも、既にお気付きのことと思いますが、これはあくまで1億円を全額キャッシュで投入した場合の話です。借り入れの場合に発生する金利やローン保証料・火災保険料といった諸費用を一切考えていません。仮に全額1億円を10年固定3.0%で借りたとしても、元利均等で年間の金利負担は300万円であり、10年間で3000万円にもなります。つまり、一括借り上げで、ローンを組んでアパートを建てた場合、10年間で投資回収するのは無理だということがわかります。まあ、ここまでは小学生でも出来る計算であり、皆さんも先刻承知のことと思います。

ここからが肝腎なのですが、次はレオのサイドに立ってこの計画を眺めてみます。
値引き圧力が一般住宅より強くない賃貸住宅においては、1億円のアパートを受注した際の粗利益率は35~40%程度と予想します。ただこれは受注粗利であり、竣工時点では40%超、時に50%近い利益を確保しているのではないかと思います。これはどういうことかというと、建築業においては、営業&設計積算と工事担当の関係は、外で働いてお金を稼いでくる夫と、それをうまくやりくりして貯金やへそくりをする賢い奥さんに喩えることができるのです。営業担当が受注してくる工事金額は、施主に対してはイコール請求金額でありますが、社内的には、設計積算担当の見積もりに基づく、いわば予算どりのようなもので、営業&設計が工事に「あとは現場で頼みます」と託すわけです。

建築という目に見えないものを請け負うための見積もり内訳は、キッチンセットやシステムバスのように値札がついているものだけではありません。現場は敷地・近隣状況など千差万別ですから、土工事や造作などやってみないとわからない部分が少なくないのです。これを予め積算マニュアル通りに計算し(多めに)積み上げておくわけですが、優秀な工事担当であれば、うまく現場を差配し、2人工(にんく)で予定していた工程が1人工(にんく)で済んだとか、天候を勘案して2日間にわたって計算していた資材運搬も1日で終わったとか、だんだん貯金が出来ていくことになります。(これは手抜きではなく、やり繰りの問題です)まあ、逆に予期せぬ近隣クレームで余分に養生シートを追加したり、工事ミスにより原価流失することもままありますが、アパートの場合、そもそも施主の工事への要求も高くないし、建物自体も注文建築と違って規格プランですから、複雑な造作などありゃしません。つまり工事積算では受注時よりも粗利が上昇する傾向にあるのです。だから私は、レオが1棟当たり50%近い利益を叩き出していると睨んでいますが、まあここは仮に40%程度としておきましょうか。つまりAさんの物件では1億円の建設費のうち、レオの粗利が4000万円超あるということです。

オーナーだけでなく、レオの被害者は入居者側にもたくさんいるようで、ネットには若者の怨嗟の声で溢れています。曰く「半年しか済んでいないのに、退去費用に20万円も請求された」とかなんとか・・・・。オーナー・入居者双方から、結構あこぎに修繕メンテ費用を稼いでいる様子ですから、この調子では、短期貸しの回転の速さもあり、年間で1戸あたり5万円、10年で1000万円程度の利益を吸い上げていそうです。

つまり、レオは賃料収入以外にも、10年間で5千万円くらいの利益を余裕であげているのだということを念頭に置いて、ここから先を読み進んでください。

レオは一括借り上げの契約により、入居者があろうがなかろうが、オーナーに家賃の80%を保証しています。少なくとも固定の当初10年間で、レオはオーナーに1億1520億円の債務を負っていることになるのです。

入居者からの賃貸収入は

全期間満室だとすると、
60,000円×20戸×12ヶ月×10年間=1億4400万円
ですから、単純計算で2880万円の儲けになります。

総務省の統計を基に試算した住宅全体における直近の空室率は13%だそうですが、本質をよりはっきりさせるために、ここで極端なシミュレーションを試みます。

全期間入居率50%だとどうなるか。10年間通算で半分が空室だったらということです。

レオの入居者からの収入は、1億4400万円×0.5(50%)=7200万円となりますが、

オーナーへ支払うのが1億1520万円ですから、▲4320万円と赤字になるものの、賃料以外で5000万円の利益を確保するので、レオはトータルでマイナスにならないのです。

よく考えてくださいね。巨額の借り入れをしたうえで、自分で賃貸事業に乗り出したとして、全期間空室率が50%だったとしたら、首をくくるとまで行かないけど、オーナーは毎夜安眠するのが困難になるでしょう。はっきりいって目茶目茶ヤバイ状況で、アパート経営としては完全な破綻ですよ。

でもオーナーから物件を借り上げて経営しているレオは、たとえ空室率が50%でも破綻どころか利益まで出てしまう・・・。これは一体何を意味しているのでしょう。

うまく利益とリスクを分散している素晴らしいビジネスモデルだと思えますか? 私は利益とリスクが極端に偏在しているアンフェアなスキームだと思います。がっつり儲けるレオに対して、オーナーサイドにかなりの部分のリスクとコストが移転されています。さらにいえば、期間中に薄い壁に悩まされ、退去時にもぼったくられて「もう懲り懲りだ」とがっかりする入居者にもリスクとコストが寄せられているのです。

私はネット企業の営業担当者がよく口にする「win-winで行きましょう!」という常套句があまり好きでないのですが、営業としては、自社が利益をしっかり上げて、サービスを提供した相手方にもそれが喜ばれベネフィットをもたらすというのは、商売の理想だろうと思います。ただレオ商法のように、最初から勝ち負けが極端にはっきりした仕組みはどうなのと首を捻ってしまうわけです。



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6 コメント

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Unknown (滑稽本)
2008-07-01 16:51:08
要するにてめぇの夕飯くらい惣菜屋で買わずに自分で支度せいという事ですわな
返信する
コメントありがとうございます。 (音次郎)
2008-07-01 22:53:01
お惣菜買ってもいいんですけど、食あたりしないように、よく確かめてねということです。
返信する
Unknown (あすなろ君子)
2008-07-06 16:31:49
オーナーとレオパレスの関係については、詳しく解説済みなので言うことありません。
が、かつてこの会社はバブルの崩壊に伴うグアムでの事業の失敗で多額の有利子負債(3000億円程度)を抱えていたと思います。
もうほとんど無くなったのでしょうが、これが東証一部上場、増資、全国展開、と同時に何か変だぞという疑念を抱かざるを得ないこの事業の発端なのかもしれません。
産業再生機構が手掛けたダイア建設の、りそな銀行仲介による支援、某大手建築会社所有のビルの購入、前々社長によるライフサポートサービスの借用、前倒し決算、それに伴う監査法人の変更、胡散臭い理由による決算下方修正、
宅地建物取引業の違反行為、などなどなにか胡散臭いのです。君子危うきに近寄らず、はためくノボリにも目をそむける昨今です。
返信する
そうですね (音次郎)
2008-07-14 09:14:55
>あすなろ君子様、コメントありがとうございます。
アパート経営という、事業パートナーの選定なのに、企業情報を一顧だにしない地主の気楽さは不可解です。
返信する
レオは問題だらけ! (番犬パセリ)
2008-08-27 10:32:28
音次郎様。
参考記事を拝見出来、ありがとうございました。
東京下町で100坪弱の土地があり、レオの営業攻勢を受けている最中です。自己資金ゼロですので、一億二千程の借り入れ(ノンリコースローン 金利6%)で、四階建てのワンルーム(14室)を建て、当初の10年は、月額30~40万の手取り収入を保証するという話です。

ですが、10年を過ぎれば家賃も下げざるを得ず、オーナー負担の修繕費等も発生するでしょう。周辺には競合物件も既に多いです。10年保証の約束が履行されても、その後は、私の素人試算でもオーナーは破綻が明らかです。

また、ワンルームという物件が問題含みです。
居住者の管理はレオがすると言ってますが、管理人はなしの条件です。夜中に友達を呼んでは騒ぐ等の近隣迷惑があれば、隣地に住む我が家は苦情の受付窓口になります。我が家は、レオの無給の常駐管理人になってしまいます。昼は建物は無人になりますから、防犯にも問題が生じます。

とにかく、レオに限らずこの手の不動産運用をするならば、時間貸駐車場か土地の売却の方がましでしょう。
長々と失礼致しました。
重々、参考記事に感謝いたします。(敬白)
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コメントありがとうございます (音次郎)
2008-08-31 12:07:53
>番犬パセリさま、面白いご指摘ですね。

たしかに自宅のはなれに建てる場合、オーナーが事実上「レオの無給の常駐管理人」になってしまうのは避けられないんでしょうね。
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