北岳山麓合唱団

ソウルジャパンクラブ(SJC)の男声合唱団です。毎週火曜日、東部二村洞で韓国の歌と日本の歌を練習しています。

ミハイル・プレトニョフ ピアノリサイタル

2014年06月21日 21時58分47秒 | ソウルライフ

ミハイル・プレトニョフ、といっても、誰のことが分からないでしょう。

ミハイル・プレトニョフ(Mikhail Pletnev)は1957年生まれのロシアのピアニスト、指揮者です。78年のチャイコフスキーコンクールで1位となり、現在、世界最高のピアニストの一人として知られています。

確か2007年頃だったと記憶していますが、プレトニョフはピアニスト引退を宣言しました。高名なピアニストの突然の引退宣言は、ピアノ愛好家の間で大きな話題になったのですが、最近、活動を再開すると宣言し、舞台に復帰しました。

ソウルでも6月1日(日)にリサイタルが催され、会場となった芸術の殿堂に出向いてまいりました。

プレトニョフの訪韓は実に9年ぶり。しかしながら、9年ぶりの復帰と言うわりに曲目は地味。ピアノ愛好家ですら、にわかにメロディーが思い浮かばないのでは。

シューベルト ピアノソナタ 第4番 イ短調作品164 D.537

シューベルト ピアノソナタ 第13番 イ短調作品120 D.664

バッハ イギリス組曲第3番 ト短調 BWV808

スクリャービン 24の前奏曲 作品11

ソウル公演に先だち、5月29日に東京オペラシティーで同じ曲目を演奏しています。演奏を聞いた日本の友人から受け取ったメールによれば、ピアニストとしてのプレトニョフは破格の「聖域の住人」だった! この確信は揺るぎようがない、とのこと。いやがうえにも期待が高まります。


プレトニョフの演奏はCDで何度も聞いていますが、実演は今回が初めて。舞台に照明が照らされ、いよいよコンサート開始。大歓声の中、颯爽と舞台に登場し、と言いたいところですが、足を引きずりながら、のそっと舞台に現れました。客席の入りは7割ぐらい。あちこちに空席が目立ちます。

それでも、熱心なファンから大きな拍手が沸いたのですが、プレトニョフは軽く会釈して、「拍手はもういい」といわんばかりに軽く手を払い演奏に、ではなく、椅子の調整に取り掛かりました。


ピアノは河合楽器。二代目社長、河合滋(Shigeru Kawai)の名前を記した最高級品です。プレトニョフクラスの演奏家になれば、通常はスタインウエイのピアノを使用するものですが、河合で演奏したことも大きな話題になりました。同社の経営資料によれば、「今まで弾きたいピアノが無く、演奏活動を休止していた彼がSK-EXを弾いたことをきっかけに演奏活動を再開した」とあり、河合に対する氏の信頼は並々ならぬものがあるようです。


演奏はピアニッシモ(音楽の強弱標語で、きわめて弱くの意味)の芸術に尽きると思います。ホールを揺るがすような大音響で観客を引き込む派手な演奏は、幾多とあるのですが、耳をそばだてないと聞き逃してしまいそうなデリケートな演奏。かといって、消えいるようなモノトーンではなく、実に見事な色彩の変化(グラデュエーション)が重層的に展開するのです。国宝級の墨絵を見ているよう、といえば、お分かりいただけるでしょうか?


沈思黙考。静謐でありながら、ダイナミック。私のような素人でも、突き抜けた、彼岸の世界にある演奏であることが分かります。

残念ながら、2600人を収容できるコンサートホールでは、大空間で響きが希釈してしまい、肝心のピアニッシモが十分に聞き取れませんでした。友人のアドバイスもあって、2階席左の最前列(A席)で鑑賞しましたが、お金を余計に払ってでも、1階前列で鑑賞するべきだったと思います。


アンコールはショパンの夜想曲。確か第16番変ホ長調だったと記憶しますが、デリカシーの極みという感じの演奏。真夜中にたった一人で、耳をそばだてたくなるような、そんなショパンでした。


会場を見渡すと、ピアノを学ぶ子供でしょうか?小さな女の子の姿がたくさん見受けられました。韓国でのピアノコンサートはおしなべて、このような傾向があるのですが、今回のコンサートはやや通好みの曲目だったと思います。次回は、ショパン、モーッアルト、ベートーベンといった「幕の内」コースにも期待したいです。


2000年11月にアメリカ、カーネギーホールでのライブ演奏CD。私の愛聴盤の一つです。


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