良い子、悪い子、こまりん子

幼児教育20余年。多くの子ども達を育て、ママ達の悩みに耳を傾けてきました。辛口アドバイスも含め、子育ママ達にエールを!

口に合わない、という言葉

2015-04-14 13:25:05 | つぶやき
「おいしくなーい」「イヤだ」「きらい
これは、私の大嫌いな「子どもが発する3つの言葉」です。正直なところ、こんな言葉を日常から我が子が使っていて、どうして許せるのか?どうして捨て置けるのか、理解に苦しみます。
 その子の親は、よほど子どもが発する言葉に興味がないのか、よほど言葉の意味を理解していないのか、そのどれかなのでしょう

 「おいしくないもの」なんて、この世の中に存在しない、と私は思っています。たまたま、その人の口に合わないだけ、ですよね。

 本当にこの言葉、この表現って、おかしくないですか? 
普段私達は、近所のスーパーや市場、もしくは自宅や近所で栽培されたり、飼育されたりした野菜や食材を使って調理をしますね 買ってきたお惣菜でも、やはり同じこと、です。
 だから、それらは、誰かが誰かのために作ったもの。それがコンビニのお惣菜で、かなり機械化されて調理されていたとしても「人の口に入るもの」「食卓に並ぶもの」として存在しています。
 食べる人達に「おいしいね」と言ってもらえるように、作り手は調理しているでしょう。残念ながら「ママのお料理が下手」だったとしても、そこに悪意はない、ですよね。
 にも関わらず、「おいしくなーい」「まずーい」と子どもが言うことは暴言ですし、そんな心ない、間違った表現を許してはいけない、と強く感じています(自分が自分のために調理したものが、残念ながら失敗作で「ああ、おいしくなかったな、失敗だったわー」と自分自身で思うのは、あり、だとは思いますが)

 先日、とてもとても懐かしい人から、メールがありました 
その人は今から35年前、私と一緒にカリフォルニア州で開催された子ども向けのサマーキャンプに行った方でした 彼は当時、小学校3年生。私は大学を卒業して1年目の夏、仕事の一環として、通訳兼お世話係として同行しました

 参加者の中で一番小さかった彼の事はとても気にかかりで、10日間の滞在の間、お洗濯は上手に干せているか?とか、夜はホームシックで泣いていないか?と、細々と世話を焼きました。
 とても健気にがんばる彼は、積極的にアメリカ人の子ども達と一緒にアクティヴィティーにも参加していました でも、たった一つだけ、彼の困ったところは・・・食べ物の好き嫌いが多かったところ
 朝、昼、夜と食事をするたびに、「ああ、これはおいしくない」「これは、まずい」と何度も言っていました。始めのうちは私もそれを黙って見ていたのですが、だんだんとその言葉が耳触りとなって、3日目あたりだったでしょうか、「頼りになるけど、けっこう怖いおねえさん」は、その子のテーブルに行って注意をしました。

 「いい加減にしなさい 毎日、あなたがおいしくない、とか、まずい、とか文句を言っている食べ物は、おいしくないわけでも、まずいわけでもありません じゃあ、みんなに聞いてみなさい。あなたが言っているように、みんなもおいしくない、まずいって思っているかどうか。」

 (ここで、あちこちから「ぼくは好きだよ」「私はおいしいと思う」という合いの手が入りました)

 「いい これも、これも、あなたの口に合わないだけ あなたは、自分のおうちでもおいしくないとか、まずいとか、お母さんが作ってくれたお料理に文句を言っているのかもしれないけれど、それは大間違いよ お母さんは、あなたのために心を込めて作ってくれてるの それに、あなたが嫌だっていって食べないお肉もお野菜も、一生懸命に苦労をして作ってくれている人がいるの そんなこともわからずに、気ままにおいしくないとか、まずいとか言ってはいけません。たった今から、「口に合わない」と言いなさい。それに、口に合わないってことは、わざわざ口に出す言葉でもないのよ。だって、それをおいしいって思う人がたくさんいるんだもの。口に合わないと思っているのは、あなたの勝手な気持ちなんだから

 添乗員さんや、日本人のコーディネーターさんから拍手が沸き起こりました
いやいや、思えば、22歳の小娘が、偉そうなことを言い放ったものです。この子の親が一緒だったら、憤慨したかもしれませんね。でも、当時の私はどうしてもこの子の言葉が許せなかったし、とても良い子なのに、家庭でそんな暴言が許されている、ということが残念にも思えたのでした。

 すっかりオジサンになった「元3年生」メールの内容は・・・
長年待ち望み、生まれたお子さんは小学校3年生。この春にクラス替えがあり、初めて一緒になるお友達と席を並べて給食を食べた時のこと。お隣のお友達は「今日のおかずはまずい このデザートはおいしくない」と文句ばかり言って食べたのだそうです。
 この子は間違ってる!と思ったご子息は、「僕はおいしいと思うよ、まずくなんてない 〇君の口に合わないだけだよ」と注意をしたんだ、と、夕食の時、お父さんに話したのだそうです。

 「・・・先生。何だか、僕は泣けました。35年も経って、あの山のロッジの食堂でのことを、まるでついこの間のことのように思い出したのです。先生は怖い顔をして僕に注意をしていました。「口に合わないって言いなさい」「でも、わざわざ口に合わないなんて、言わなくていいの」ってね。あの日は、確実に今日につながっているんですね・・・」

 私も泣けました 
「元3年生」は、45歳のきっと立派なお父さんとなり「頼りになるけど、けっこう怖いおねえさん」は、57歳の子育てが終わったオバサンであり、幼児教室の先生になっています。35年前の自分の姿を想像すると、とても偉そうで恥ずかしいですが、それも今の自分につながっているのだなあ、と思うと、とてもとても感慨深いです。
 
 10歳だった彼は、きっと成長の過程で、とても多かった好き嫌いも減ったに違いありません。でも、苦手な食材や料理に出くわすたびに「これは口に合わないな・・・」と心の中で思い、そして父となってからは、我が子に「おいしくない、なんて言葉は間違っているんだよ。ママが君のために心を込めてつくってくれているんだもの」と語り継いでいてくれたのですね・・・ 


 


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。