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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

「ずっと遠いところ」

2006-05-18 13:52:02 | 好きな絵本

 画家のジョージア・オキーフをご存知ですか?

 この本も、先日紹介した『いちばん美しいクモの巣』と同じ、「詩人が贈る絵本」シリーズ
の中の1冊です。
 
近くの図書館には、シリーズ全部は揃ってなくて、やっと3冊見つけたのですが、
この題名を見たときに、一瞬手がとまりました。なぜって、私はずっとずっと前から、
ジョージア・オキーフの絵が大好きで、もしやこれは、彼女のことを書いた本だったりして、
と思っただけで、ドキドキしてきたからです。


私、ジョージア
『私、ジョージア』

ジャネット・ウィンター 作
長田 弘 訳






 この本の作者、ジャネット・ウィンターさんは、画家ジョージア・オキーフの自伝として、
この本を描きました。中味の絵はすべて作者自身が描いたものですが、ジョージアの
絵への敬愛をこめて、どの絵も、ジョージア自身しばしば用いたたくさんのイメージに
もとづいています。
 
また、文章も様々なジョージア伝に収められた彼女自身の言葉から選んで、作者が
自分の言葉に書き直したものだそうです。

 ジョージア・オキーフは1887年に、アメリカ合衆国ウィスコンシン州の農場に生まれました。

 12歳のときには、もう、
 じぶんが何になりたいか、わたしは知っていた。
 ―わたしは芸術家になるのだ。


 
わずか12歳で、自分の進む道がわかっていたことに、まず驚き、


 しかし、美術学校をでると、わたしは
 ひろい世界のなかへ、じぶんからふみだしたのだった。
 じぶんのかきたい絵を、わたしはかきたかった。

 
誰かから与えられたり、教えられたりするものではなく、自分の内面が求めるものに
耳を澄す、その姿勢に感じ入りました。


 ジョージアは、テキサスの大平原の空を描き、芸術家たちの住むニューヨークへ戻ってきて、
高層アパートメントの窓から見えるものを描き、都会の中の庭に咲く、花の絵を描きました。
 
 彼女の描いた花は、なぜあんなにも大きいのでしょうか?
それは、わたしが、見つめたように、みんなに、花を見つめてほしかった 
からだったのですね。

 わたしが見つめた花々を、みんなが見つめられるように、
 わたしは、じぶんの絵いっぱいに、花々を咲かせた。

 
多くの人が彼女の、彼女にしか描けない絵を見るようになっても、ジョージアの心は
まだ先を見つめています。 「ずっと遠いところが、いつも、わたしをよんでいた」

 
そして彼女は、ニューメキシコの砂漠へ行き、(そこは土が乾きすぎていて花は
育たなかったため)、砂漠に散らばっていた骨を集めて、その骨の絵を描きました。

 骨、赤土、ペダナル山、そして空。

 98歳でこの世を去るまで、ジョージア・オキーフは描き続けたのでした。
「ずっと遠いところ」へ想いを馳せて、「ずっと遠いところ」から聞こえてくる心の声に従って。


 ジョージア・オキーフの作品をあまり見たことがなくても、この本を楽しむことは
できるのではないかな、と思います。長田弘さんの訳は、それ自体が、画家の生涯を
モチーフとした、詩としても読むことができ、日本語のそのつらなりが、とても素敵なのです。

Georgia O'Keeffe: One Hundred Flowers


One Hundred Flowers

  Georgia O'Keeffe




 私はこの画集を持っているのですが‥。画家の、若い頃と、もう少し年月がたってからの
写真がそれぞれ1枚づつ、載っています。どちらもはっとするほど美しい女性です。










 

 

 


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10 コメント

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Unknown (まつかぜ)
2006-05-18 16:43:22
ジョージア・オキーフについて

残念な事に、今まで何も知りませんでした。

作品も、その人自身にもとても興味を持ちました。



先日の『ルピナスさん』(こちらはお話の中の女性ですが)やこのジョージア・オキーフのような

しっかりと内なる声に耳を傾け、自分を見据えてまっすぐに生きていこうとする女性の存在を知る事は、今の私にとってとても大事な出会いのように感じているのです。

それと、rucaさんのところで出会うという事も、大きな意味があるのだと思います。
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素敵 (こもも)
2006-05-19 08:29:20
「自分の見つめた花々を、みんなが見つめられるように絵を描いている」・・・そういう目で見ると、芸術って、違う輝きを放ってきますね。是非、彼女の絵を見てみたいと思いました。



それから・・・長田弘さん。「いちばん美しいクモの巣」とうとう借りてきました!そして、本棚に眠っていた長田弘さんの詩集を読み返しています。いつか、詩集も手にとることがありましたら、「最初の質問」「散歩」という詩を読んでみて下さい!お勧めです。

rucaさんのおかげで、長田弘さんを以前に増して好きになっています!





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まつかぜさんへ (ruca)
2006-05-19 16:16:33
こんにちは。



ジョージア・オキーフの絵は本当に素敵です。

カラーの花を描いたポストカードをフレームに入れて、

いつも見えるところに(トイレなんですけどね)

飾っています。きっと、まつかぜさんもいいと

思うと思うのですが。



そんなふうに、絵を飾っているにもかかわらず、

この絵本を図書館で借りてきて、

「もっと絵が見たいなあ」と言ったところ、

「うちに画集があったじゃない」と夫に言われました。



あんなに好きと公言したくせに、あんなに素敵な

画集の存在を忘れていたんですね~。

なので、とっても新鮮な気持ちで、今回ページを

めくることができました。
返信する
こももさんへ (ruca)
2006-05-19 16:23:39
こんにちは。



長田弘さんの詩。「最初の質問」「散歩」ですね。

メモしときました。



ジョージア・オキーフの絵、機会があったら

見てみてください、ほんとうに素敵な絵です。

それと、みすず書房から出ているこの「詩人が贈る

絵本」のシリーズ、面白い本がいろいろありました。

セレクトも長田弘さんご自身がされたのだろうなあ

とは思うのですが、そのあたりの事情が、本には

書かれていないのが残念です。
返信する
オキーフは大好きデス。 (山猫編集長)
2006-05-21 21:51:33
rucaさん。お久しぶりです。山猫です。

オキーフは好きです。

あの花の妖艶さ。クローズアップの画面!

化石のモチーフ・・・。

すてきですねぇ。(^^)

はじめて見た時、背中に電流が走りましたよ。はは。

江国香織さんもオキーフの大ファンですよね。日曜美術館で一度、オキーフの解説をされていたのを見ました。

-(や)-

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山猫編集長へ (ruca)
2006-05-23 15:51:16
こんにちは。こちらこそご無沙汰しています。



編集長もオキーフの絵のファンだったのですね。

ほんとにいいですよね、彼女の絵。

うちにあるのは花の絵の画集だけなので、

骨シリーズや他の風景を描いた

絵も見たくなっています。



それと。

江国さんもファンだったとは、知りませんでした。

私、江国さんの小説もよく読んでいます。

江国流のオキーフ解説、聞いてみたかったです。
返信する
はじめまして (月うさぎ)
2006-06-16 00:41:38
はじめまして。

絵本の検索で、偶然にもふたつのキーワードがrucaさんに一致したのでびっくりしました。

過去にもさかのぼって読ませていただきました。

ジョージア・オキーフは私も大好きな画家です。「オキーフの家」という本も素敵です。この「私、ジョージア」も購入したばかり。

長田弘さんの本も大切にしているので。

バーバラ・クーニーも!



ロバート・マックロスキーや、プロヴェンセン夫妻・フランシスシリーズなど、もしかしたらrucaさん、お好きじゃないでしょうか(笑)なんて。



また、これからも読ませていただきたいので遊びに来させてください。

返信する
月うさぎさんへ (ruca)
2006-06-16 16:13:27
こんにちは。ようこそお越しくださいました。

「はじめまして」と言うところですが‥もしや、月うさぎさんは、hinataさんのところへお立ち寄りではないですか?なんだか拝見したことがあるHNだなあと、思っているのです。(もしも、そうなら非常に嬉しいです。もし勘違いだったら、ごめんなさい)



ジョージア・オキーフ。バーバラ・クーニー‥。



『オキーフの家』読んだことないので、今度探してみます。

ぜひぜひ遊びに来てください。私も寄らせて頂きます。
返信する
驚きました! (月うさぎ)
2006-06-17 13:22:23
rucaさん、こんにちは。

早々にお返事をありがとうございました。



そうです!hinataさんのところにお邪魔している月うさぎです。

rucaさんは、hinataさんのご友人のrucaさんなのですね?!!

しかも、以前お邪魔したことありました・・(苦笑)。

以前と雰囲気がちがうように感じて・・まったく気がつきませんでした。

何という偶然でしょう!

これからもどうぞよろしくお願いいたします。



新しい記事の、荒井良二さん。

わたしも好きで数冊所持しています。

「はっぴいさん」、江国香織さん(「モンテロッソのピンクの壁」「ぼくの小鳥ちゃん」)、長田弘さん(「森の絵本」)など。

色がほんとうにきれいで胸が透くようなんです。

この本、ぜひ図書館で探して読んでみます。

返信する
またまた月うさぎさんへ (ruca)
2006-06-20 16:19:46
こんにちは。

そうなんです。おそれおおくも、あのhinataさんの友だちなんです、私。

前回のコメント書いたあと、月うさぎさんのところにめだかの写真があるのを見て、もしやあれは「らふと」へ行っためだかの兄弟ではと思い、確認してしまいました(笑)。



前に見ていただいた時雰囲気が違っていたと感じられたのなら、それはテンプレートが「ブルーフラワー」かあるいは、お正月ヴァージョンの「犬」の時だったのかもしれませんね。



私はhinataさんがblogを持っていることを知り、それから自分でもやってみたくなり始めたのでした。ほとりの音経由で、mizoさんとも、トモさんとも知り合い、トモさんの個展にも出かけました。

今度は、月うさぎさんと行き来する事ができて、ほんとに嬉しいです。好きな本の感想も聞かせて下さいね。
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