その話しあいのあと、僕はリビングで一人、お酒を飲んでいた。
野梨子の考えていることは、恐ろしいことだった。
その計画には、僕も付き合わされる。
養子先を探すのだ。
養子先を探して、一旦養子に出したあと、施設にいれる。
そうせざるを得ない状況なんだと納得させるために。
酒が進むが頭は冷えていた。
野梨子とまた離れ離れになってしまうのは、僕には耐えられなかった。
酒は飲んでいる、というより煽っているというほうが正しかった。
気づくと、OPアンダーソンの2本目を開けた。
その時だった。背後から声がした。
「美童…。」
「萌々子…。」
「飲みすぎだわ。」
「ほっといてくれ。」
僕は酒をグラスに注ぐ。
「既に一本空けたのね。私も貰いたいところだけど、未成年だから、付き合えないし…。」
僕の隣に座る。
「いつ、2人は籍を入れることにしたの?」
無邪気な様子で萌々子は言った。
「籍は入れない…。暫くね。」
「えっ、どうして?」
「とりあえず、子供を生むまでは入れないことにしたんだ。一緒に生活はするけどね。」
「そう…。」
萌々子はそれ以上深入りできないと思ったのか、僕の隣でしばし黙りこむ。
僕が次のお酒を注ぎ足すと、話しかけてきた。
「ねぇ、美童。聞いてくださる?」
僕は黙っていた。
人の話を聞くどころではない。
「美童、あなたの言ったとおり彼氏が出来たわ」
「そりゃよかったね。」
僕は無視をして、酒を飲む。
「でも別れたの。やっぱり、私は美童が好き…。」
不意をつかれて萌々子にキスされた。
「何を…。」
「あなたが言うとおり彼氏にも抱かれてきたわ。もう処女じゃないの…。」
”僕ではなく最初は好きな人と恋愛して、その人とどんな形でもいいから恋愛を完結させなさい”、僕は以前、萌々子にそう言った。”私は美童が好きなのに、母様があなたの中にいたとしても、私はあなたに抱かれたい”と萌々子は泣いた。僕は”野梨子を愛している”とその時は萌々子に伝え、諦めて貰った。
それなのに。
萌々子は僕の上で喘いでいた。
僕は自暴自棄になり抱いてはいけない人を抱いていた。
心は、満たされない…。
翌日、二日酔いをする頭で、一番に愛することはできないと萌々子に伝えた。
「母さまを愛していると、いうの?母さまは妊娠してて、どうせできないじゃない。出産するまで結婚しないなら、その間だけでも付き合って欲しい」と泣かれた。
僕は根負けし、了承した。野梨子と結婚するまで萌々子だけを相手するのが怖かった。それで複数の恋人を持つことにした。そして、野梨子にも結婚しないなら彼女を好きに作るよ、と言った。
====
僕は萌々子と二人でいた。三日だけ二人でここに滞在予定だったが野梨子が魅録のところから戻って来ないので、親子鑑定が出るまで延長した。この旅行で萌々子とは終わりだと言うことは萌々子も了承している。だから僕からなかなか離れようとしない。
「どうしても母様がいいの?私のほうが若いわ」
「逆を言うなら僕は君からすればかなりおじさんだよ。君にはもっと君と釣り合いの取れる人がいるさ」
萌々子は僕の顔を暫く見たあとに黙り込み、「母様がよくてもいいわ…。でも旅行中は私を見て。」と言って僕に口づけた。
野梨子によく似た大きな目、小さな鼻、野梨子より少し厚めの唇…。野梨子ではない野梨子のような気がして、やはり彼女と付き合って行くことは出来ないと思っていた。彼女を抱くたび野梨子を僕が欲していると言うことを思い知らされた。
親子鑑定が出たと野梨子から連絡があった。
僕は萌々子に「明日、野梨子を迎えに行かなくちゃ。」と言った。
「どこに?」
「内緒だよ。婚姻届を出しに行くんだ。萌々子、これからは親子ではないけれど…、また家族だよ。」
「美童…。こんなに一緒にいたのに、やっぱり、私じゃ駄目なの?」
「ごめんね…。」
僕は萌々子を抱きしめた。
萌々子は僕の腕の中で泣き、ひとしきり泣いたあと、荷物を纏め始めた。
「どこに、行くの?」
「白鹿のおばあ様のところ。暫く、遊んでから帰るわ…。」
そう言って、まだ明日まで時間があるのに、荷物を持って、出て行った。
翌日、野梨子と泊まっていたホテルの近くの駅で待ち合わせる。僕の知人からサインを貰い、婚姻届を出した。その足で海辺のホテルに向かう。本来二週間滞在予定だったが野梨子が魅録のところにいたため一週間滞在になった。僕は野梨子と幾度となく身体を重ねた。野梨子は何度も絶頂を向かえ、僕に縋り付いた。
こうして、縋りついてくれることに、僕は安堵する。
野梨子が、僕を欲している、と。
体だけかもしれないけれど、それでもよかった。僕から、野梨子が離れられなければ…。
誰にも、野梨子は渡さない。
---
ということで、40を超えてしまいました・・・とうとう(苦笑)。
野梨子の考えていることは、恐ろしいことだった。
その計画には、僕も付き合わされる。
養子先を探すのだ。
養子先を探して、一旦養子に出したあと、施設にいれる。
そうせざるを得ない状況なんだと納得させるために。
酒が進むが頭は冷えていた。
野梨子とまた離れ離れになってしまうのは、僕には耐えられなかった。
酒は飲んでいる、というより煽っているというほうが正しかった。
気づくと、OPアンダーソンの2本目を開けた。
その時だった。背後から声がした。
「美童…。」
「萌々子…。」
「飲みすぎだわ。」
「ほっといてくれ。」
僕は酒をグラスに注ぐ。
「既に一本空けたのね。私も貰いたいところだけど、未成年だから、付き合えないし…。」
僕の隣に座る。
「いつ、2人は籍を入れることにしたの?」
無邪気な様子で萌々子は言った。
「籍は入れない…。暫くね。」
「えっ、どうして?」
「とりあえず、子供を生むまでは入れないことにしたんだ。一緒に生活はするけどね。」
「そう…。」
萌々子はそれ以上深入りできないと思ったのか、僕の隣でしばし黙りこむ。
僕が次のお酒を注ぎ足すと、話しかけてきた。
「ねぇ、美童。聞いてくださる?」
僕は黙っていた。
人の話を聞くどころではない。
「美童、あなたの言ったとおり彼氏が出来たわ」
「そりゃよかったね。」
僕は無視をして、酒を飲む。
「でも別れたの。やっぱり、私は美童が好き…。」
不意をつかれて萌々子にキスされた。
「何を…。」
「あなたが言うとおり彼氏にも抱かれてきたわ。もう処女じゃないの…。」
”僕ではなく最初は好きな人と恋愛して、その人とどんな形でもいいから恋愛を完結させなさい”、僕は以前、萌々子にそう言った。”私は美童が好きなのに、母様があなたの中にいたとしても、私はあなたに抱かれたい”と萌々子は泣いた。僕は”野梨子を愛している”とその時は萌々子に伝え、諦めて貰った。
それなのに。
萌々子は僕の上で喘いでいた。
僕は自暴自棄になり抱いてはいけない人を抱いていた。
心は、満たされない…。
翌日、二日酔いをする頭で、一番に愛することはできないと萌々子に伝えた。
「母さまを愛していると、いうの?母さまは妊娠してて、どうせできないじゃない。出産するまで結婚しないなら、その間だけでも付き合って欲しい」と泣かれた。
僕は根負けし、了承した。野梨子と結婚するまで萌々子だけを相手するのが怖かった。それで複数の恋人を持つことにした。そして、野梨子にも結婚しないなら彼女を好きに作るよ、と言った。
====
僕は萌々子と二人でいた。三日だけ二人でここに滞在予定だったが野梨子が魅録のところから戻って来ないので、親子鑑定が出るまで延長した。この旅行で萌々子とは終わりだと言うことは萌々子も了承している。だから僕からなかなか離れようとしない。
「どうしても母様がいいの?私のほうが若いわ」
「逆を言うなら僕は君からすればかなりおじさんだよ。君にはもっと君と釣り合いの取れる人がいるさ」
萌々子は僕の顔を暫く見たあとに黙り込み、「母様がよくてもいいわ…。でも旅行中は私を見て。」と言って僕に口づけた。
野梨子によく似た大きな目、小さな鼻、野梨子より少し厚めの唇…。野梨子ではない野梨子のような気がして、やはり彼女と付き合って行くことは出来ないと思っていた。彼女を抱くたび野梨子を僕が欲していると言うことを思い知らされた。
親子鑑定が出たと野梨子から連絡があった。
僕は萌々子に「明日、野梨子を迎えに行かなくちゃ。」と言った。
「どこに?」
「内緒だよ。婚姻届を出しに行くんだ。萌々子、これからは親子ではないけれど…、また家族だよ。」
「美童…。こんなに一緒にいたのに、やっぱり、私じゃ駄目なの?」
「ごめんね…。」
僕は萌々子を抱きしめた。
萌々子は僕の腕の中で泣き、ひとしきり泣いたあと、荷物を纏め始めた。
「どこに、行くの?」
「白鹿のおばあ様のところ。暫く、遊んでから帰るわ…。」
そう言って、まだ明日まで時間があるのに、荷物を持って、出て行った。
翌日、野梨子と泊まっていたホテルの近くの駅で待ち合わせる。僕の知人からサインを貰い、婚姻届を出した。その足で海辺のホテルに向かう。本来二週間滞在予定だったが野梨子が魅録のところにいたため一週間滞在になった。僕は野梨子と幾度となく身体を重ねた。野梨子は何度も絶頂を向かえ、僕に縋り付いた。
こうして、縋りついてくれることに、僕は安堵する。
野梨子が、僕を欲している、と。
体だけかもしれないけれど、それでもよかった。僕から、野梨子が離れられなければ…。
誰にも、野梨子は渡さない。
---
ということで、40を超えてしまいました・・・とうとう(苦笑)。