僕は生まれた子供の父親になるつもりだった。だから悠理が生む一月前に婚姻届を提出した。悠理はこのことを知らない。偶然ばれてしまった姉に秘密を共有と言う響きで騙し、義兄には共犯者として証人にサインしてもらう。
出生届も僕の子供として提出した。これでこの子は僕の子供だ。そう思うと安堵する。魅録の子供には法律上はならない。
区役所に出生届を提出し、僕は悠理の好きなプリンを買うために駅に向かっていた。ここから2駅先にそのプリンの店があった。車で行ってもよかったのだが、車を出すのが面倒だった。
駅に着いて目的の店まで歩いて行く。駅から5分くらいだった。
店に入ろうとして足を止めた。
魅録…。
魅録が若い女性と仲良くプリンを買っていたが、僕は魅録がその店にいたというだけで、複雑な感情が胸を占めていた。
そのプリンが悠理と魅録の仲を表しているような気がしたのだ。同棲していた間にここに買いにきて、一緒に…。
僕は踵を返し元来た駅に向かう。
僕は自分で妄想し、嫉妬していた。悠理と魅録の仲は終わっているが、それでも子供が生まれた以上、何かが起こるかもしれない。それが怖かった。
電車に乗り、駅に着いてカフェに入る。少し落ち着いてから帰ろう、そう思い、アイスコーヒーを頼む。
ふと一息ついて、先程の店でのことを思い出す。
あの女性は…?
魅録が一緒にいた若い女性は剣菱のメイドだ。メイド服は来ていなかったが。従業員にわりと人気があったので覚えている。魅録があのメイドとデート?どういう繋がりで?
野梨子は?
悠理の妊娠を告げたときに野梨子を愛してると言っていたが、一年も経たないうちに、違う女性という訳か。
冷静に考えれば、魅録はすでに悠理を離れているのだ。魅録と悠理の関係に嫉妬してしまったのが馬鹿らしくなった。
少し気が楽になり、違う店でプリンを購入し家に帰った。
家に帰ると悠理は子供を見ていた。ふと僕に向かって、「この子は誰に似てるんだろう?」と言う。
「えっ…。」
突然の問いに僕は戸惑った。まだ誰に似ているかと判別出来る状態ではないのだが。
「どうして突然そんなことを。」
「全然魅録に似てない気がするんだ…。」
何故?
僕は魅録に似ていないという悠理の言葉に不快な気分になり、冷やかな口調で「魅録に似て欲しいんですか?」と言う。
悠理はバツの悪そうな表情をして、首を横に振った。
「ううん…。似ていないほうがいい。」
そう言いながらも何か解せないような顔で子供を見ている。
少し気まずい雰囲気になる。
僕は手に持っていたプリンを思い出した。
「そうそう、プリン買ってきたんですよ…。いつものプリンじゃありませんが。」
「ありがとう。」
悠理は嬉しそうに僕を見る。
「ここのプリン…。安いわりにおいしいんだよな。」
悠理は箱から取り出し、付属のスプーンの袋を破る。
「でもあそこのプリンが、一番好きなんでしょ?」
思い入れの強さを知りたかった。やっぱり魅録に若干嫉妬している。
強張った表情で尋ねると悠理は笑った。
「あそこのプリンはここから近いから買ってたんだ。ここのプリンは駅までいかなければならないだろ?」
えっ…。
意外な回答に僕は戸惑った。
「ここの近くにあったんですか?」
「うん、あるよ。二、三年くらい前かな?できたんだ。チェーン店だからわりとどこでもあるよ」
ニコニコしながら悠理は言った。
「クックックッ」
笑いがこみあげてくる。
「どうしたの?」
「なんでもないんです。」
わざわざ本店まで足を運んで買いに行っていた。
しかもあの店に魅録がいただけで、魅録と二人で生活していたときに食べていた思い出のものだと勝手に妄想していた。悠理の口ぶりから、魅録との思い出を引きずって食べていたとは思えない。
「変な清四郎。」
不思議そうな顔で悠理は僕を一瞥した。
---
清四郎編です。魅録がメイドと付き合ってます。
次回は清×悠です。悠理ほとんど清四郎ちょっと。
その次は魅録予定・・・。気が変わらなければ。
野梨子の展開は、頭の中で構想中・・。
出生届も僕の子供として提出した。これでこの子は僕の子供だ。そう思うと安堵する。魅録の子供には法律上はならない。
区役所に出生届を提出し、僕は悠理の好きなプリンを買うために駅に向かっていた。ここから2駅先にそのプリンの店があった。車で行ってもよかったのだが、車を出すのが面倒だった。
駅に着いて目的の店まで歩いて行く。駅から5分くらいだった。
店に入ろうとして足を止めた。
魅録…。
魅録が若い女性と仲良くプリンを買っていたが、僕は魅録がその店にいたというだけで、複雑な感情が胸を占めていた。
そのプリンが悠理と魅録の仲を表しているような気がしたのだ。同棲していた間にここに買いにきて、一緒に…。
僕は踵を返し元来た駅に向かう。
僕は自分で妄想し、嫉妬していた。悠理と魅録の仲は終わっているが、それでも子供が生まれた以上、何かが起こるかもしれない。それが怖かった。
電車に乗り、駅に着いてカフェに入る。少し落ち着いてから帰ろう、そう思い、アイスコーヒーを頼む。
ふと一息ついて、先程の店でのことを思い出す。
あの女性は…?
魅録が一緒にいた若い女性は剣菱のメイドだ。メイド服は来ていなかったが。従業員にわりと人気があったので覚えている。魅録があのメイドとデート?どういう繋がりで?
野梨子は?
悠理の妊娠を告げたときに野梨子を愛してると言っていたが、一年も経たないうちに、違う女性という訳か。
冷静に考えれば、魅録はすでに悠理を離れているのだ。魅録と悠理の関係に嫉妬してしまったのが馬鹿らしくなった。
少し気が楽になり、違う店でプリンを購入し家に帰った。
家に帰ると悠理は子供を見ていた。ふと僕に向かって、「この子は誰に似てるんだろう?」と言う。
「えっ…。」
突然の問いに僕は戸惑った。まだ誰に似ているかと判別出来る状態ではないのだが。
「どうして突然そんなことを。」
「全然魅録に似てない気がするんだ…。」
何故?
僕は魅録に似ていないという悠理の言葉に不快な気分になり、冷やかな口調で「魅録に似て欲しいんですか?」と言う。
悠理はバツの悪そうな表情をして、首を横に振った。
「ううん…。似ていないほうがいい。」
そう言いながらも何か解せないような顔で子供を見ている。
少し気まずい雰囲気になる。
僕は手に持っていたプリンを思い出した。
「そうそう、プリン買ってきたんですよ…。いつものプリンじゃありませんが。」
「ありがとう。」
悠理は嬉しそうに僕を見る。
「ここのプリン…。安いわりにおいしいんだよな。」
悠理は箱から取り出し、付属のスプーンの袋を破る。
「でもあそこのプリンが、一番好きなんでしょ?」
思い入れの強さを知りたかった。やっぱり魅録に若干嫉妬している。
強張った表情で尋ねると悠理は笑った。
「あそこのプリンはここから近いから買ってたんだ。ここのプリンは駅までいかなければならないだろ?」
えっ…。
意外な回答に僕は戸惑った。
「ここの近くにあったんですか?」
「うん、あるよ。二、三年くらい前かな?できたんだ。チェーン店だからわりとどこでもあるよ」
ニコニコしながら悠理は言った。
「クックックッ」
笑いがこみあげてくる。
「どうしたの?」
「なんでもないんです。」
わざわざ本店まで足を運んで買いに行っていた。
しかもあの店に魅録がいただけで、魅録と二人で生活していたときに食べていた思い出のものだと勝手に妄想していた。悠理の口ぶりから、魅録との思い出を引きずって食べていたとは思えない。
「変な清四郎。」
不思議そうな顔で悠理は僕を一瞥した。
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清四郎編です。魅録がメイドと付き合ってます。
次回は清×悠です。悠理ほとんど清四郎ちょっと。
その次は魅録予定・・・。気が変わらなければ。
野梨子の展開は、頭の中で構想中・・。