リサイタルの稟議がとおり、社長決済を受け実施が決定した。
早速会社の応接室で会うことになる。
長いストレートの髪、品のよいワンピース。
「初めてまして。白鹿菜々子です。」
可憐な笑顔を彼女は浮かべた。
俺はその笑顔に硬まった。
雷に打たれたような衝撃を受けた。
写真以上の衝撃だった。
「常務」
秘書に声をかけられて我に帰る。
「ああ…。すまん。よろしく」
俺は右手を差し出し彼女に微笑んだ。
彼女はにこやかな笑顔で俺の手を握った。
心臓が飛び出してしまいそうなくらい、どきどきしていた。
まるで、高校生の恋のような感じだった。
夜には食事会を行った。スタッフ数名と彼らだった。
俺は真ん中の席で彼女は斜め向かいに座っていた。雑談を少しし、酔いが回った頃に彼女に聞いた。
とてもしらふでは彼女に多弁に話し掛けることはできなかった。
「君の御実家は白鹿流の家元だね?」
「はい」
「私は君のお母さんをよく知ってますよ」
「母を、ですか?」
俺が頷くと少し驚いた顔をする。
「萌々子からはいつもお世話になってるとは聞いていましたが、母の知り合いだったんですね」
「ええ。よく知ってます」
俺は昔の野梨子の話しを始めた。
二人で野梨子と美童の話しをして、盛り上がっていた。俺の過去は言わずに。
今度は萌々子を交えて3人で会おうと菜々子とは約束し、食事会を終え、その場は別れた。
その夜、俺は萌々子の部屋に行く。
菜々子と会った話をした。
「なんか妬けちゃうな~。すっかり菜々子ファンなんだ。」
萌々子がブスッと膨れっ面をする。
「まあ、妬くな。お前にはちゃんと彼氏がいるだろう半年後には結婚じゃないか。」
「そうだけど。」
萌々子はもうじき結婚する。しかし、旦那になる奴が忙しいからこの関係は続けたいと言う。
全くもってわがままだ。
「そういう菜々子は彼氏がいるのか?」
「知らないわ。双子だけどそれほど仲良くないのよ。菜々子はお上品だから。」
「まあ、それは言えてるな。お前みたいに擦れてはいないし。」
「酷いわ。」
俺達は笑い合った。
萌々子と菜々子は本当に性格が違う。
俺はそう思いながら萌々子の下腹部に手を延ばし、いつものようにキスはせずに抱いた。俺は菜々子を想像しながら抱いていた。
菜々子が、まだ、誰のものにもなっていなければいいな、と思いながら。
菜々子を抱く機会は案外早くやってきた。
菜々子と会った3日後の夜だった。
萌々子が菜々子を家に呼んだのだ。そこに俺も呼ばれた。ピザや寿司などを宅配して貰い、飲んで食べていた。菜々子は余りお酒が強くないらしく、割とすぐに酔って眠ってしまった。
「魅録さん、送って行ってよ。」
萌々子が俺の下半身に手を伸ばしながら言う。
「こんなところで手を伸ばすな。」
俺は口頭で窘めつつもその手の動きに身を任せていた。
結局、菜々子が寝ている脇で萌々子を抱いてしまう。寝てる女のそばでその女そっくりの女を抱くと言うのも不思議な気分だった。
「これで送り狼にならないかしら、それとも一層…?」
コトが終わると楽しそうに萌々子は笑った。
ほんとに何を企んでいるのかわからないが変な女だ。
服を着て、菜々子を起こすとタクシーに乗り込んだ。タクシーの中では俺にもたれて眠っていた。優しく愛らしいその顔に触れてしまいたい思いに駆られたがそこでは堪えた。
彼女の泊まっているホテルに到着する。
実家に帰ればいいのに、ホテルをとって泊まっている。
菜々子はまだ寝ぼけており、タクシーからおりても足元がふらついていた。
部屋まで送る。
鍵を開け、中に入ると俺は菜々子に口づけた。
最初は少し抵抗を見せたが最後には俺にされるがままだった。
それでも、服を脱がされるときには、抵抗を見せた。
「君は私のものになるんだ。」
そう言いながら、さるぐつわをしてあたりに声が漏れないようにしてから、彼女を抱いた。
菜々子はこの年齢で俺が初めての男だった。
菜々子は、俺だけの、…野梨子だ。
菜々子は俺の勢いに負けたと言ったほうが正しいのかもしれないが、戸惑いながら付き合うことを了承した。
明後日菜々子はドイツに帰る。
菜々子は家族と離れて、ずっとドイツに住んでいる、と言っていた。
見送りには行けないので、ドイツで再会することを約束して、菜々子と別れた。
ある時、菜々子は、ずっと男の人と関係を持たなかった訳を話してくれた。
美童が原因だと話してくれた。
母親のことを愛していると思っていた美童が、萌々子と関係を持っていたのを、偶然、家に帰ったときに、目撃してしまった。
その姿を見た瞬間に、2人に対して嫌悪感を覚えた。
美童と萌々子の関係も知らずに、母が美童と関係を持っている姿を見て、とても哀れに思えた、と言っていた。
あの家には近づきたくない、と菜々子は言った。
だから日本に帰ってきても、少し顔を合わせるだけで、実家には帰らない。
「魅録さんは、美童と同じではないよね?」
菜々子に問われ、「勿論、違う」と答えた。
俺だけの野梨子を得た今、昔の俺とは違う。
萌々子との関係も絶ったし…。
菜々子と付き合い始め、1年が経過しようとしていた。
今、菜々子は俺の腕の中で眠っている。
今日はリサイタルの最終打ち合わせで、菜々子が日本に来ていた。
いつもどおり、ホテルを予約し、俺は菜々子と夜を過ごす。
菜々子との関係は未だ内緒だった。
リサイタルが済んだら、俺は菜々子にプロポーズをするつもりだった。
婚約指輪を内緒で購入する。
野梨子がどんな反応を示すか少し恐ろしいと思うが、俺の中では、もう野梨子とのことは終わったことだった。
野梨子とは、会う機会が一度だけあったが、結局、会わなかった。
萌々子の結婚式だ。
俺がたまたま重要な出張が入っていけなかったのだ。
だから、野梨子に会うのは、彌緑を渡されて以来ということになる。
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俺は違うといってるけど、実際は同じ・・。
この人たちスパイラル・・。
早速会社の応接室で会うことになる。
長いストレートの髪、品のよいワンピース。
「初めてまして。白鹿菜々子です。」
可憐な笑顔を彼女は浮かべた。
俺はその笑顔に硬まった。
雷に打たれたような衝撃を受けた。
写真以上の衝撃だった。
「常務」
秘書に声をかけられて我に帰る。
「ああ…。すまん。よろしく」
俺は右手を差し出し彼女に微笑んだ。
彼女はにこやかな笑顔で俺の手を握った。
心臓が飛び出してしまいそうなくらい、どきどきしていた。
まるで、高校生の恋のような感じだった。
夜には食事会を行った。スタッフ数名と彼らだった。
俺は真ん中の席で彼女は斜め向かいに座っていた。雑談を少しし、酔いが回った頃に彼女に聞いた。
とてもしらふでは彼女に多弁に話し掛けることはできなかった。
「君の御実家は白鹿流の家元だね?」
「はい」
「私は君のお母さんをよく知ってますよ」
「母を、ですか?」
俺が頷くと少し驚いた顔をする。
「萌々子からはいつもお世話になってるとは聞いていましたが、母の知り合いだったんですね」
「ええ。よく知ってます」
俺は昔の野梨子の話しを始めた。
二人で野梨子と美童の話しをして、盛り上がっていた。俺の過去は言わずに。
今度は萌々子を交えて3人で会おうと菜々子とは約束し、食事会を終え、その場は別れた。
その夜、俺は萌々子の部屋に行く。
菜々子と会った話をした。
「なんか妬けちゃうな~。すっかり菜々子ファンなんだ。」
萌々子がブスッと膨れっ面をする。
「まあ、妬くな。お前にはちゃんと彼氏がいるだろう半年後には結婚じゃないか。」
「そうだけど。」
萌々子はもうじき結婚する。しかし、旦那になる奴が忙しいからこの関係は続けたいと言う。
全くもってわがままだ。
「そういう菜々子は彼氏がいるのか?」
「知らないわ。双子だけどそれほど仲良くないのよ。菜々子はお上品だから。」
「まあ、それは言えてるな。お前みたいに擦れてはいないし。」
「酷いわ。」
俺達は笑い合った。
萌々子と菜々子は本当に性格が違う。
俺はそう思いながら萌々子の下腹部に手を延ばし、いつものようにキスはせずに抱いた。俺は菜々子を想像しながら抱いていた。
菜々子が、まだ、誰のものにもなっていなければいいな、と思いながら。
菜々子を抱く機会は案外早くやってきた。
菜々子と会った3日後の夜だった。
萌々子が菜々子を家に呼んだのだ。そこに俺も呼ばれた。ピザや寿司などを宅配して貰い、飲んで食べていた。菜々子は余りお酒が強くないらしく、割とすぐに酔って眠ってしまった。
「魅録さん、送って行ってよ。」
萌々子が俺の下半身に手を伸ばしながら言う。
「こんなところで手を伸ばすな。」
俺は口頭で窘めつつもその手の動きに身を任せていた。
結局、菜々子が寝ている脇で萌々子を抱いてしまう。寝てる女のそばでその女そっくりの女を抱くと言うのも不思議な気分だった。
「これで送り狼にならないかしら、それとも一層…?」
コトが終わると楽しそうに萌々子は笑った。
ほんとに何を企んでいるのかわからないが変な女だ。
服を着て、菜々子を起こすとタクシーに乗り込んだ。タクシーの中では俺にもたれて眠っていた。優しく愛らしいその顔に触れてしまいたい思いに駆られたがそこでは堪えた。
彼女の泊まっているホテルに到着する。
実家に帰ればいいのに、ホテルをとって泊まっている。
菜々子はまだ寝ぼけており、タクシーからおりても足元がふらついていた。
部屋まで送る。
鍵を開け、中に入ると俺は菜々子に口づけた。
最初は少し抵抗を見せたが最後には俺にされるがままだった。
それでも、服を脱がされるときには、抵抗を見せた。
「君は私のものになるんだ。」
そう言いながら、さるぐつわをしてあたりに声が漏れないようにしてから、彼女を抱いた。
菜々子はこの年齢で俺が初めての男だった。
菜々子は、俺だけの、…野梨子だ。
菜々子は俺の勢いに負けたと言ったほうが正しいのかもしれないが、戸惑いながら付き合うことを了承した。
明後日菜々子はドイツに帰る。
菜々子は家族と離れて、ずっとドイツに住んでいる、と言っていた。
見送りには行けないので、ドイツで再会することを約束して、菜々子と別れた。
ある時、菜々子は、ずっと男の人と関係を持たなかった訳を話してくれた。
美童が原因だと話してくれた。
母親のことを愛していると思っていた美童が、萌々子と関係を持っていたのを、偶然、家に帰ったときに、目撃してしまった。
その姿を見た瞬間に、2人に対して嫌悪感を覚えた。
美童と萌々子の関係も知らずに、母が美童と関係を持っている姿を見て、とても哀れに思えた、と言っていた。
あの家には近づきたくない、と菜々子は言った。
だから日本に帰ってきても、少し顔を合わせるだけで、実家には帰らない。
「魅録さんは、美童と同じではないよね?」
菜々子に問われ、「勿論、違う」と答えた。
俺だけの野梨子を得た今、昔の俺とは違う。
萌々子との関係も絶ったし…。
菜々子と付き合い始め、1年が経過しようとしていた。
今、菜々子は俺の腕の中で眠っている。
今日はリサイタルの最終打ち合わせで、菜々子が日本に来ていた。
いつもどおり、ホテルを予約し、俺は菜々子と夜を過ごす。
菜々子との関係は未だ内緒だった。
リサイタルが済んだら、俺は菜々子にプロポーズをするつもりだった。
婚約指輪を内緒で購入する。
野梨子がどんな反応を示すか少し恐ろしいと思うが、俺の中では、もう野梨子とのことは終わったことだった。
野梨子とは、会う機会が一度だけあったが、結局、会わなかった。
萌々子の結婚式だ。
俺がたまたま重要な出張が入っていけなかったのだ。
だから、野梨子に会うのは、彌緑を渡されて以来ということになる。
---
俺は違うといってるけど、実際は同じ・・。
この人たちスパイラル・・。