☆みかん☆と☆惑星☆

小ネタ乗せようかと思ってます。
時々二次系の下書き・・・

符合5

2017-03-20 23:13:41 | 二次系
昔から絵に関わる仕事をしたいと鮎子は思ってた。しかしながら、鮎子には絵心は全くなかった。自分で「下手だ」ということは認識していたが、中学・高校は美術部、大学では絵画サークルに入っていた。いつか青繍展に出品できれば、と夢をみていた。
鮎子の実力では青繍展に出品するのは到底無理だったので、大学在学中にデザインに関わる資格をいくつか取得した。
この会社を鮎子が受けたのは、青繍会所属の作家のマネジメントをしているからというのが理由だった。
もしかしたら、あの人に会えるかも…と、淡い期待を抱いていた。やっぱり未だに会えたことはない。展覧会や美術館に、普通にお金を払って行かないと作品にも会えない。
超有名な作品は複製画もしくは本に掲載されている写真でしかみることができない。ただ鮎子が好きなのはそれらの超有名作品ではなく、それほど有名ではない雄鶏の掛け軸と薄い桃色の牡丹の掛け軸だった。家から電車一本で行ける範囲の美術館に収蔵されている。

最初にその絵を見たのは、小学三年生の時だった。
暑い夏の日だった。
父と妹の早苗は、父の実家に行ったので、母と鮎子の二人で出かけた。まだ4歳の早苗を連れていけなかったため、鮎子だけを美術館に連れて行ったというのが本当のところだ。時折、母の仕事の関係で、祖母が保育園に早苗を迎えに行くことがあったため、早苗は祖母に懐いていた。そのため、喜んで父と二人で出かけて行った。
鮎子はお出かけ用の薄い水色のワンピースを着て、麦藁帽子を被った。母は日傘を持ち、足首が見える丈の白いパンツに鮎子と同じような色の半袖のブラウスをきていた。
駅までバスで行き、電車に乗りかえ、最寄駅でおりて、そこから徒歩で美術館へ向かった。母と二人きりで出かけることがなかったので、鮎子は嬉しく思っていた。
最寄駅でおりてから徒歩で美術館へ向かう道はとても暑かった。鮎子は汗びっしょりになった。美術館につくと母がタオルで鮎子の顔などを拭いてくれた。美術館の中は涼しくて、生き返る、と鮎子は思った。
いろいろな絵を母と二人でみていると、雄鶏の掛け軸が目に止まった。
茶色の雄鶏が掛け軸の中心に描かれ二羽書かれていた。艶やかな羽の色と鮮やかなトサカの赤、流れるような尾羽の優美さをもった鶏が二羽、少し重なって書かれていた。黄色の嘴に鋭い眼光の鶏一羽はこちらを向き、手前のもう一羽は地面を啄んでいた。
掛け軸から、今にも雄鶏が飛び出てきそうだった。
そこから少し離れたところに牡丹の掛け軸があった。
牡丹は鶏とは異なり、優雅で気高かった。掛け軸の真ん中に大きな牡丹が書いてあった。かしんの雄蕊は黄色で、雌蕊は官能的に濃い赤の強い紫で、かしんを取り巻く花びらの下のほうは桃色で、花びらの先端に向けては薄い桃色をしていた。
幾重にも花びらが重なりところどころ濃い桃色が混ざり、翡翠色の茎、少し濃いめの緑の葉と合っていた。小学生ながら天上の世界の花みたい、と鮎子は思った。
絵を見終え、美術館内にある喫茶店でお昼を食べた。鮎子はナポリタンとクリームソーダを頼み、母は日替わりのスパゲティーとコーヒーを頼んだ。
鮎子は初めてのクリームソーダを飲み、おいしくて感動した。
その後、喫茶店近くの売店で、雄鶏と牡丹のポストカードを買ってもらった。
家に帰ってから、それを見ながら一生懸命真似しようとしたが、全く似もしなかった。
それにポストカードは所詮ポストカードだった。
本物ではない。
飛び出しそうな感じも、天上の花であるような感じもしなかった。
鮎子は時々ねだって、母に美術館に連れて行って貰った。
いまは、母を連れて行く。鮎子の母は別の画家のシルクロードの絵が好きだったということを鮎子は最近知った。

そんな訳で、念願叶って入った会社だったが、よりによって秘書…もとい雑用係。
配属されて一週間ほどだが既に辞めたくなっていた。
でも、次の仕事の目処がたっていなかったため淡々と掃除をする。
「川中さん、おはようございます。」
ドアを開け、朝霧が入ってきた。マスクをし、少しグレーの色のついた眼鏡をかけてきた。今日は明るいブルーのスプリングコートを着ている。髪はおかっぱである。出社時はいつもこうだった。
「おはようございます。」
挨拶をしてから時計をみる。
まだ8時40分だ。
「随分早いですね。今日はデザイン部との打ち合わせが午後2時からですよ!」
鮎子がびっくりしてそういうと、朝霧が眼鏡とマスクを外して微笑んだ。
今日は化粧が薄いな、と思う。いつもは目元がもっと濃かった。
あれ…?
以前、どこかでこんな雰囲気の人にあったような…。
「川中さん、これから、外出いたしますわ。」
「はい。」
出社して早々、外出かあ…。
あ、かつら…。
外出するのだから、かつらの準備をしなければと思い、急いで掃除用具を片付け、手を洗ってきた。
戻ってくると朝霧はスプリングコートをきたままスマホをいじっていた。
「いま、準備いたします。」
鮎子は声をかけ、小部屋に入ろうとした。
「川中さん、準備は結構ですわ。今から一緒に外出するんですのよ。」
「はい?」
「今日は川中さんにお手伝いいただきたいことがありますの。それで、今から外出いたしますわ。」
「はい…。では、外出の準備をしてきます…。」
鮎子はバッグとコートを取りに執務室に戻った。

朝霧と鮎子はタクシーに乗った。
「銀座まで。」
朝霧は運転手に言った。
銀座?何しに?
「取締役、銀座で何があるんですか?」
「ジュエリーの新作発表会よ。」
「ジュエリーの新作発表会…?」
「そう。正確にはセカンドラインみたいなものかしら。若い女性…20代〜30代をターゲットとしたブランドね。学生というより大人女子向けかしら。いま、莉子もコラボしようと考えている、ジュエリーブランドですわ」
「莉子が大人女子?」
「そうですの。大人女子向けですので、Rico(アールアイシーオー)でリコにしようと考えてましたわ。背伸びしたいティーン向けのものも作るつもりですの」
「そうなんですか。」
こんな話しを朝霧から聞くのは初めてだな、と鮎子は思う。だいたい、いつも朝霧は忙しそうで、鮎子とはほとんど会話しない。
「ところで、発表会に行くなら莉子の格好しなくてよかったんですか?…それに私じゃなくて連れて行くならマネジメント部の課長とか…」
鮎子がコラボしようと思ってるブランドなんか見に行っても、役に立たないのではないか、と思った。
「何か勘違いをなさってるようですわね。」
そう言って、朝霧はクスクスと笑った。
「まあ、いまのわたくしの言い方では勘違いなさるわね。」
「はい」
一体、何?
「今日の目的は、受付ですの。」
「受付ですか?!」
「ええ。友人にジュエリー発表会の受付を頼まれましたの。スタッフの方が三人いらしたらしいのですが、三人中二人が昨日の夜に食べたお弁当で食あたりになったらしく、急遽、今朝、受付を頼まれましたの。」
「はあ…」
「それで川中さんと二人で行こうと思いましたのよ」
朝霧はニコニコしながら言う。
ホントに私は雑用要員…。
そう思いながら苦笑する。
秘書に配属されてから、テンションが下がることばかり、と鮎子は思った。

銀座のとあるデパートが近づくと、朝霧はバッグから黒ぶちの眼鏡を取り出した。
眼鏡をかける。
どこかで見たような…。
あ…!!
「…あ、朝霧取締役!!」
「どうかなさいました?大きな声だして」
朝霧が怪訝そうに鮎子をみた。
「朝霧取締役って…、あのときの…」
朝霧は真顔で鮎子を見つめた。
「受付の方だったんですね!!」
朝霧は何のことだろう?という顔をして、少しだけ顔を横に傾けて鮎子をみる。
「私の入社試験で受付にいた、タオルを貸してくれた方だったんですね…!!」
鮎子の顔を見ながら朝霧は苦笑いをした。
「…今頃、気づきましたの?」
それに驚いたようだった。
「はい…。全く、わかりませんでした。」
朝霧は鮎子に笑顔を向けると「三枝さんには、黙っててくださいね。シロにも」と言った。
「はい。…シロもですか?」
「シロは時々、田嶋さんと役員室の小部屋に遊びに来ますのよ。わたくしを見ると遊び相手と勘違いするようですの」
朝霧は困ったような顔をしたあとに、微笑んだ。
ジャンル:
ネタ帳
コメント   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 符合 4 | トップ | 符合 6 »
最近の画像もっと見る

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
ブログ作成者から承認されるまでトラックバックは反映されません。