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團十郎の歌舞伎案内 / 歌舞伎十八番

2009年11月28日 15時07分38秒 | 文化
團十郎の歌舞伎案内 /  歌舞伎十八番 はそれぞれ別の著書ですが、双方とも
十二代目市川 團十郎の著作です。

まづは 「團十郎の歌舞伎案内」から~

十二代目團十郎丈が青山学院大学文学部日本文学科(十二代目團十郎丈は
小学校から高等部まで青山学院)にて客員教授として「歌舞伎の伝統と美学」の
テーマで集中講義されたときの様子を本にしたもの。

講義なので、口語体で書かれてをりまた「歌舞伎の素人」に解説してくださつてゐるので大変にわかりやすい。
歌舞伎の演目には能からきてゐるもの、歌舞伎の長唄が浄瑠璃と結びつきが深いことから能、狂言、人形浄瑠璃という伝統日本文化にも触れて説明してくださり、歌舞伎だけでなく日本独特の和楽器・音楽・演劇という芸能を感じることができ、大変素晴らしい一冊だと思ひます。

明治時代以降、「西洋文化」を善しとした政府の意向で洋楽・洋楽器・洋風演劇が日本でも奨励された結果、現代の形になり歌舞伎は「過去の時代のものを一部の人たちが楽しむ」やうな芸能になつてしまつたやうに思ひます。

歌舞伎だけでなく、和楽器や雅楽、浄瑠璃など日本独自の音楽も同様です。

しかし、日本に日本人として生まれて育っていくと、「江戸時代の文化」といふものは潜在的遺伝子として自分に残つてゐるな、と感じることがあります。
自分は20代初めにオーストラリアへ単身渡り、オーストラリアで働き旅行をするという経験をした後ヨーロッパ単身旅行など日本を単身で離れるという経験をして参りました。

その結果、海外では自分が意識してゐる以上に「日本人であること」を認識されられるのです。
それは何故か

海外の人たちは私が日本人であると知ると、日本について色々尋ねます。
それは文化のことだけでなく、仕事の習慣、生活習慣等々思ひもよらない質問が続きます。
そして一番痛感したのが、「海外で一番と言つていいくらい知られてゐる江戸の文化の数々(歌舞伎、浮世絵、芸妓(芸者))」について自分がきちんと説明できない、といふことでした。

「はじめに」で團十郎丈が10ページで仰つてゐる駐在員さんたちの言葉「歌舞伎について何も知らなかつた。これはやはり恥ずかしいことだと痛切に感じました」は全くあたくしの当時の心境であります。

あたくしが拝読しながら思つたのは、「日本政府が小学校から必修科目として大学まで「日本文化」の授業を確立させ、教育を行なうことが重要」といふことです。
一体、歴代の方々は何を考えてをられたのか。

そして初代から十一代目までの市川 團十郎についての講義。こちらも中々興味深い。
現在演じられてゐる演目で、初代が発表し二代目が「御家の芸」と大きく発展させ、代々が受け継ぎ七代目が歌舞伎十八番を制定される。

市川宗家の御家芸は、何故か子供のころから「漠然と知つてゐた」ものがあり、「暫」「助六」「勧進帳」は團十郎丈が演じてこられた衣装が非常に記憶に残つてをりました。なぜ記憶に残つたかと申せば見た瞬間「格好いいなあ」と思つたからだと思ひます。
ただその頃、自分が劇場に行き拝観するとは思ひませんでしたが・・・・

十二代目團十郎丈も申され、江戸歌舞伎に関する諸処の評論でも記述されてゐることですが、「助六には江戸が詰つてゐる」のは非常によくわかるところです。
「助六」は元々上方で起きた心中事件が元で上方で演じられたのが最初のやうですが、それを江戸っ子の好みに併せて変更したのが、江戸歌舞伎の「助六」ださうです。

あたくしの家も代々江戸者ですので、気性が「助六」に似てゐるところがあります。
なので、「助六には江戸が詰つてゐる」といふのは非常~によくわかる。
ちなみに、「橋向こう」は江戸ではないと思ひます。

「助六」を演じる際には、ご挨拶に伺ふ方々がいらつしやりその方々が出演を快諾なさると上演決定といふ江戸時代からのしきたりも大切に感じます。
「助六」上演に際し、魚河岸の旦那衆とのしきたりも感心すると同時に「人がきちんと顔を合わせて挨拶」といふ、人間の基本が大事にされてゐていいなと思ひます。

江戸時代つて基本人間で機械も何も無いわけだから、お互いが助けあふのが当たり前のことだつたと思ひます。だからかのやうなしきたりが出来たのではないかと思ふのですが・・・
いい時代だなあと思ひます。

そんな、現代人が忘れてしまつたやうなしきたりを「歌舞伎を知る」ことで取り戻せて行けたらいいなあなんて読みながら思ひました。
学校の授業で「歌舞伎・能を始めとした日本芸能にみるしきたり」として教へてはいかがでせうか?

次、歌舞伎十八番

これは七代目市川團十郎が「市川宗家の御家芸」として制定した十八の演目を簡単に説明してくださつてゐると同時にどのやうに演じられてゐるか、衣装の説明や化粧(かお)の説明をしてくださつてゐる一冊です。
お写真もあり、「粂寺弾正七つの見得」など大変わかりやすい。

ご子息の海老蔵丈が「毛抜」を上演された際に拝観しましたが、かのやうな知識があつて見ればなおよかつたなあと自分の不勉強さを恥じました。
テレビ等で役者さんを拝見して、「舞台が観たい」として劇場に行くのもいいが「歌舞伎の知識」をつけていくと大変楽しめると思ひます。

ああ、これが「弾正の七つの見得なのね!!」と感激する事間違ひなし

海老様の初春公演の演目を資料を探してお勉強してから行かふと思ひます。

十二代目團十郎丈、著作を有り難う御座ゐました。


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