ギリシャへ そして ギリシャから From Greece & To Greece

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ギリシャの本 2

2009-04-07 | ギリシャを知る本


前ブログ『ギリシャの本 1』からずいぶん間が空いてしまいましたが、
ギリシャを知るための本2冊目はLaurence Durrell: ロレンス・ダレル著
『予兆の島』Prospero's Cell 渡辺洋美:訳 1981年/工作舎です。


観光局の統計によると
ギリシャを訪問する観光客で一番数が多いのはイギリス人だそうですが、
そのかげにはギリシャブームを起こした二人のイギリス人の存在があります。

ひとりは ギリシャが独立するきっかけを作ったともいわれる
ロマン派の詩人George Gordon Byron:バイロン卿

そして、もうひとりがこのロレンス・ダレルです。

その土地の魂を描き出すことにかけて 
彼をしのぐ作家は その後生まれていないとも言われ
私の最もお気に入りのひとりでもあります。

彼の小説の代表作『アレキサンドリア四重奏』4部作は
コルフ島からキプロス島へ
そして戦争を逃れるために渡った
エジプトのアレキサンドリアで誕生します。

小説以外にも上質の地中海紀行をたくさん書いていて
「予兆の島」は1935-39年彼が妻で画家のナタリーと移り住んだ
ケルキラ:コルフ島での日記を本にまとめたものです。

この本に始まりReflections on a Marine Venus「海のヴィーナス考」では
ロードス島およびドデカニサ諸島を、
Bitter Lemon「にがいレモン」ではキプロス島を
Sicilian Carousel 「シチリアの回転木馬」でシチリア島を紹介。

70年代にThe Greek Islands「ギリシャの島々」が出版されると
イギリス人は彼の本をスーツケースに入れ
毎夏こぞって南を、ギリシャの蒼い海を目指すようになったのです。

さて、この本の中で一番気に入っているエピソードは

ダレル夫妻の隣人の娘が小学校に入学した夜のこと
普段は油を節約するため早く寝る隣家に夜通し灯りがともっていた。
夜が明けるのを待ちかねたかのように
隣家の主人がやってきて
「あんたがもちっとギリシャ語ができたら『すごい』話を聞かせてやれるのに」
という。
「今迄に俺が訊いた中で一番面白い話なんだ。
長い航海の末、ある島に打ちあげられた男がいてな・」

彼の手に小学校の教本があるのを見たダレルが
「その男の名はオデッセウスというのだろ」というと

「なんで、あんたがこの話を知ってるんだ??これはアテネで
印刷されたギリシャ語の本だぞ」と男は不審がる。

ダレルが男を招き入れて英訳の大型本「オデッセイア」を見せても
それが世界中で読まれている物語で しかも
主人公が流れ着いたのが自分が住むケルキラ島だとは
どうしても信じられない・・・

続きはぜひ自分で読んでみて下さい。









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6 コメント

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この国で (sue)
2009-04-07 17:27:54
脈々と語り歌い踊り演奏
されてきた文化。

頭で考え技術のみを追う日本人が
表現する事には
・・・ギリシア神話も演奏も歌も踊りも・・・
無理がある。

素敵な記事にこんな
マイナス思考コメントで
ごめんなさい

ただ
しみじみそう思う最近で。
感性がね、ないと、、
理屈や技術‘だけ'に
走るから。
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sueさ~ん (lesvosolive)
2009-04-07 21:52:57
ギリシャ音楽やダンスなどが
ギリシャ人だけのものなんてこと
ないと思いますよぉ。

ギリシャ神話の研究家には
イギリス人が多いですし

現在ギリシャのミュージックシーンで
活躍しているミュージシャンには
アラブ系の人もバルカンの人も
たくさんいます。

もちろん個人差はある。
それは確実にありますけど、
日本人だからという理由でダメって
ことは絶対ないと思う。

去年のパーティーのフラゴシリアーニの
映像を見たギリシャ人の友は
「とってもいい!」といってましたよ。



返信する
もちろんですぅ~ (*^^*) (sue)
2009-04-07 23:43:19
その国の文化は
その国の人だけのもの
ではないですから。。。

う~んと。
基本の知識は大切なんですけれど
何ていうか、知識や技術に溺れる?
っていうんですか。


私はもう一度ギリシャに行かなきゃ
踊る事は出来そうもないです
返信する
sueさん (lesvosolive)
2009-04-08 08:58:07
ダンスや音楽のパフォーマーではない
私にはわからない部分?かもしれませんが

芸術には感性が必要で、
感性には栄養が必要ということでしょうか?

魂の昂りがないと面白みがないのは
どの芸術もおなじ

「もう~できそうもない」とは
sueさんらしくないなぁ・・・
 
私はダンスの専門ではないですが
ギリシャの「ハサピコ」
阿波踊りの「よしこの」
ニューオリンズの「セカンド・ライン」
が聞こえてくると もうダメ

ルールなんか関係なしに
足が勝手に踊っちゃいます。








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虫とけものと家族たち (kyotakaba)
2009-04-08 09:40:05
こんにちわ、
私がギリシャに行ったとき、
ギリシャに関する知識はほとんどなかったのですが、
ジェラルド・ダレルの本は何冊か読んでいて、
あの虫がいっぱいの島へは行きたいとは思っていました。
行っていませんですけれど。
『アレキサンドリア四重奏』も、ギリシャが舞台だったのですか。
『予兆の島』は、図書館で探してみます。
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kyotakabaさん (lesvosolive)
2009-04-08 10:24:11
そうそう「虫とけものと家族たち」
面白かったですねぇ。

たしかずいぶん歳は離れていたように
思いますが、ロレンスの弟ジェラルドにも
ダレル家共通のユーモアのセンスがあって
とても楽しく読んだのを覚えています。

文庫になってたのに、
今は廃刊になってるみたい。

「予兆の島」は図書館で見つかると思います。

「アレキサンドリア・カルテット」の
舞台はエジプトの地中海沿いの街
アレキサンドリアで、その旧ギリシャ人地区や
そこに住む人たちがたくさん出てきます。

詩人カヴァフィや、
ミュージシャンとしてはフランス人に
分類されているジョルジュ・ムスタキも
この街の出身のギリシャ人です。


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