ギリシャへ そして ギリシャから From Greece & To Greece

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45分

2012-01-28 | ギリシャから

26日金曜(ギリシャ時間)アテネの教会で告別式が行われ、故アンゲロプゥロス監督はアテネ第一墓地に埋葬されました。

メディアでは監督の生前の業績が大々的に取り上げられる追悼特集がひしめく中で小さな記事が気になりました。

監督が事故にあったのは24日の夜7時過ぎでしたが、緊急出動要請の電話があってから救急車が事故現場に到着するまで、なんと45分間もかかっていたというのです。

元の記事:Athens News 英語のみ

すぐに搬送されていたら命は助かっていたのではないかと考えてしまいます。

この件に関しては、遅れた理由を調査をするということになりましたが、それはもしかして、亡くなったのが有名な人で、話題になったからで、実は頻繁に起っていることなのではないかと不安になりました。

ギリシャでは現在、市民生活に必要な基本的なサービスの低下が目立ってきています。誰にでも起きうる悲劇ですが、ギリシャからの声を世界に伝えてきた傑出した才能の持ち主がその犠牲者のひとりになったというのなら・・、なんと悲しい現実でしょう。

 

 

 

 

 

 


偉大なる魂の旅路

2012-01-25 | ギリシャから

人生にはいくつもの危険な落とし穴がしかけてあるようです。

「世の中に危険なことはたくさんあるけれどもね、なんといっても一番危険なのは、道路を横切ることなんだよ」というのが私の義母の口癖だったそうです。

24日の夜から私のfacebookの友人たちの「お知らせ」に「シテール島への旅」ΤΑΞΙΔΙ  ΣΤΑ ΚΥΘΗΡΑがいくつもアップデートされているのは何故なんだろうと思いつつ、まさか彼が亡くなったとは考えてもみませんでした。

テオ・アンゲロプウロスは76歳でしたが、現在も最新作をギリシャ国内で撮影中という記事を読んだばかりでした。現地時間の24日夕方、ピレウスの近くで映画の撮影の最中、道を横切ろうとしてオートバイにはねられ、救急病院に搬送されましたが、数時間後に集中治療室で亡くなりました。

第一報ではオートバイに乗っていたのが警官だったということでしたが、未確認情報のようです。偉大な魂の持ち主を交通事故で失うなんて・・・言葉がありません。

映像は「ユリシーズの瞳」ΤΟ ΒΛΕΜΜΑ ΤΟΥ ΟΔΥΣΣΕΑ(1995年)の秀逸な場面です。いわゆる「ギリシャ危機」が囁かれはじめた頃、メディアによく登場していました 

というのも、「ギリシャは死にかかっているんだ。でも、死ぬんなら、いっそひと思いに死ぬがいいや。時間がかかると苦しみが長引いて、周りを騒がせることになる・・」というタクシーの運転手の台詞が、予言のようだというのでした。

改めて振り返ってみると、「旅芸人の記録」も「永遠と一日」も「ユリシーズの瞳」も、彼の作品の舞台はいつも雪の多い山中の国境です。太陽の溢れるギリシャとは思えない景色なのですけれど、それこそがアンゲロプウロスの心の情景だったに違いありません。

製作中だった作品はどうなるのでしょう。三部作の最終章になるはずでした。ライフワークを完成させずに、天国へ彼を招いた神様の意図はどこにあるのでしょうか。

せめて 彼の最後の旅路がやすらかでありますように・・・

 

 


サガポ/愛している

2012-01-16 | ギリシャへ

 Σ'αγαπω γιατι εισαι ωραια - Γιαννης Παριος

ー愛している 愛している

それは あなたが 美しいから

愛している 愛している

それは あなたが あなただからー 

 

ミクラ・アシアから伝わった詠み人知らずのこの古い歌が

まさに私のギリシャへの想いを代弁してくれます。

今、ギリシャの人びとはまさに窮地にたっています。真冬なのに暖房をつけることができずに震えている家庭が増えています。太陽の溢れる地中海とはいえ、真冬のアテネは東京と同じくらいの気温。北部には雪の多いところもたくさんあります。

普通の商店だけではなく、必要不可欠な薬局の閉店があい続き、健康な市民生活が脅かされているといいます。

そんな中で唯一活況なのがアンティックを扱う商売だそうです。宝石や銀器、家具など少しでも価値のある物を手放す人が増えているのです。毎日曜日に開かれるアテネのフリ−マーケットにもこれまでにない掘り出し物がたくさんでているのよ・・と友人は言います。

ギリシャは持ち家率の高い国で、ひとりで複数の家を所有している場合もけっこうあります。デザイナーの友人は祖父母から受け継いだ家を三軒持っています。ところが、昨年固定資産税が急上昇したことで、使っていない家を手放したいと思い、売りに出したけれどいまだに全く買い手が着かない、とこぼしています。

家を売ってどうするのと聞くと、比較的景気のよいドイツへ引っ越すというのです。

EU圏内は移動が可能なので、多くの若い人たちが仕事のないギリシャを出て行こうとしています。もともと移民の国だったギリシャ、地中海世界の覇者だった時も、貧しくカバンひとつで新世界へ向ったときも、ギリシャ人は祖国を後に世界中へ旅たちましたが、「ギリシア」から「ギリシャ」へ変わっても、なくなったことは一度もありません。

ギリシャを美しいままに、ギリシャ人を彼らのあるがままに、と願って止みません。