legno-Diario-自閉症児は不思議生命体-

~自閉症のすーさん(小学1年生)といい婆さんのなんでもかんでも~

音の不思議-「春」がきた

2006-04-03 15:46:34 | 音の不思議



今回は長いですが、それでも読んでもらえますか?(笑)

まぁ、うれし。

では・・。


【3月30日 木曜日】

爺婆&すーさんは、婆さんがボスと呼ばせて頂いておる人の高校2年生の長女が
出演する吹奏楽の定期演奏会に行ったことは前々回のブログでも書いたが、
結局パニックになりコンサート会場には入ることができなった。








演奏会の休憩時間に会場の外にいる爺婆&すーさんの様子を見に来てくれたボス。

「なんでダメなんだろうね?」 と言っていた。

休憩時間にトランペットパートの高校生が6人、
休憩中のロビーまで出て来て演奏してくれた。

すーさんはロビーでの演奏なら体でリズムをとりながら聴いている。

そんなすーさんの姿を見たら・・・また、ボスが言う。

「すっごい残念だ!」 と。


爺婆も同意のためうなずく。


「4月の2日のは 扉が1枚の会場だから大丈夫かもね」 とボス。

4月2日(日) 今度は、ボスの中学一年生の次女の吹奏楽の定期演奏会なのだ。


すーさんは扉の2枚目は開くことはできなかったが
爺さんと手分けして扉の向こうに何があるのかをビデオに撮影した。



【4月1日 土曜日】

都立 夢の島公園に桜を見に行った。



桜を見にこの公園に来るのはこれで3年目になる。

毎年この公園ではすーさんの違った一面を見ることができた。

去年からは熱帯植物館の入り口では強い拒否反応を示すようになってしまったが、
全く入れないわけじゃない。

今年は見事な蘭や南洋の植物を携帯で撮影させたら落ち着きを取り戻せるようになっていた。

熱帯植物館にとにかく長居をしたいと思っているのは葉っぱ信者の婆さんである。

でも、すーさんが長居をしたくないのなら仕方あるまい。

売店でクーリッシュを買ってもらったすーさんは急いで植物館を後にする。

植物館の出入り口ゲート付近のベンチでクーリッシュタイム。

その時、

「午後4時からミニコンサートがありますのでお時間があったらいらして下さい」

はっきりした口調の真面目そうなイデタチの青年がプログラムをくれた。




「いいじゃない」  と、爺さんが言う。

「よかないよ」 と、婆さんがふてくされる。

どうせまた植物館に入ればすーさんが文句ばっかり言うじゃろうし、
この間のコンサートのことを思い出して演奏が始まる前からパニック起こすだろうし・・。

かなり重度のふてくされ婆さん。


なーーんも期待しないで、
なーーんも準備しないで、
(30日のコンサートの時は会場の写真とフルートの写真をカードにして事前にすーさんに見せた)
席に着いた。

陽光の降り注ぐドーム型の会場にはたくさんの花とセルフではあるが紅茶とコーヒーのサービスまであった。

30日のコンサートとの違いは
「扉がない」ことだ。
そして、
「明るい」ことだ。


4人のフルート奏者による演奏が始まった。

すーさんは、音、明るさ、気温、香り・・・全てに春を感じているみたいにリラックスしていた。

曲が終わると
「はくしゅーー」と言いながら拍手していた。

5曲目あたりから少々飽きたのか体を爺さんに預けダラダラしていたが騒ぐことはない。

態度はどうあれ、聴いているのである。

婆さんも久しぶりに聞くフルートの音色を満喫した。

約1時間、すーさんは席を立たず、独り言も言わず座って聴いていた。



【4月2日 日曜日】


そろそろ演奏会へ出かけようと思っていた時にボスからメールが入る。

「どうしよう? 扉は2枚だった」


ちょっと笑える。
自分の娘がこれから本番だって言うんだからそんなこと連絡してくれなくたって。

でも、
「やっぱり2枚だった」 と爺さんにも伝える。

空は今にも泣き出しそうだった。

すーさんにあらかじめ写真(カード)で

「コンサートに行きます」 と 伝えると

「コンサート 行かないの!」 と返ってくる。

「車で いきます」

「車で おでかけするよ」


「そうだよ、車でコンサートに行くよ」


「ないの~~~」


「じゃ、行きませんか?」


「じゃ、いきませんか?」


「では、コンサートに行きます」


「では、コンサートにいくよ」


オウム返しの技をまたオウム返しで跳ね返してやった。
(ザマぁ、ミロ)

フン、どんなもんだい!!


入り口ではボスが花束の受付をしていた。

でも、婆さんは緊張のあまり全然気がつかなかった。

「こんにちは」 ボスはすーさんに声をかける。

「こんにちは」 何やらボスには好意的なすーさん。

「今日は中に入れるといいね」 ボスはいつものように淡々と婆さんに言う。

「とにかく 行ってみます。ダメならまた外で聴きますから」

ゾロゾロ・・・人の波に従い階段を昇る。

一段一段、婆さんは
「2枚」「2枚」と念仏を唱える。








開いてたんです、扉が。





入っちゃったよ。



ドアの一番傍の席がちょうど空いていたので椅子取りゲームをしている気分で
バサッ と座ってみる。

すーさんはわしに向かって

「コンしゅぁート?」 と言う。

そうじゃ、確かにこれからコンサートが始まる。

扉が閉まり客席の照明が落ちればパニックになる可能性は99%

爺さんはコンサートの開始を知らせるブザーと共に閉じられるドアをすーさんに見せないように腕で視界を遮る。
(涙ぐましい努力よ)

照明が段々落ちていく。

だが、すーさんは何も言わない。

席が前方だったおかげで舞台の明るさが反映され、明るさにあまり変化がなかった
ことも幸いした。

4部構成になっていたが3部まで会場を出ることなくそこにいたすーさん。
最初は爺さんと一緒に舞台のビデオ撮影をしていた。
モニターで見る舞台と自分が今目の前に見ている舞台は同じであることを確認させるにはこれが一番である。
それに、すーさんはカメラマン役が好きだし(笑)

すーさんが好きなジャズもあって目は舞台に向いていなくても耳と体は席にいたのだ。

時折スウィングなんかしちゃってさ。

2時間・・・すごいね。

途中15分の休憩があった。

ボスと30日のコンサートに出演していた長女とその友達が席まで陣中見舞いに来てくれた。

ボスも席に座っているすーさんを見て
「よかったよかった」と喜んでくれた。

ボスの長女に
「この間はごめんね。でも、婆さんは少しは見れたんだよ」と言うと

「いいのいいの。ここは明るいもん。あそこは暗いからね」 と言った。

そうだ、本当にそうだ。君は冷静な判断ができるな。



会場の扉を開けるとなると「中に何があるのかわからない」からパニックを起こすし、

暗かったら暗かったで「何が始まるのかわからない」からパニックを引き起こす。

ダブル効果じゃな、まったく。

でも、30日のコンサートのビデオを何度か見せた。
自分が出演していないビデオに対してはあんまり反応しなかったが、
それでもカードよりは摺り込みやすい方法だと思ったからだ。


でも、やっぱり今回は

「扉が開いていたこと」と「明るかった」

ことは大きい。



ロビーに出ると外が春の嵐になっていた。

傘なんてなんの役にも立たない。

爺さんにちょっと離れた駐車場から車を出してもらっている間に
ロビーの片隅で休んでいた。

さっきまで落ち着いていたすーさんが突然耳を塞ぎ椅子に顔を押し付ける。

なんじゃなんじゃ?????

目の前にエレベーターがあることにやっと気が付いたようだった。

エレベーターなんか怖くないってばさ~~~。

そう言いながらすーさんを引きずって場所を移動したがすーさんは耳を塞いだままだ。

「じゃ、ジュースはいらんのだな?」

ジュースを受け取るとまた椅子にジュースを置いて耳塞ぎ。

「ジュースはいらんのだな?」

またまたジュースを受け取るがすぐに耳塞ぎ。

この人、いつになったらジュースが飲めるのか?(笑)


過激な挑戦は逆効果になるが、

挑戦しなければ何も変わらない。

すーさんは音楽が好き。

野外のコンサートではあんなに喜んで聴いていたのだから、
室内でも同じ好きな音楽が聴けるんだよ・・・と知って欲しかった。

こんなに立て続けにコンサートのお誘いを受けることはあまりないが、
次のコンサートまで覚えていてくれるといいなぁ。



【追伸】

思いっきり長い記事をお読み頂きありがとうございました。
お疲れ様でございました。

わたくし「いい婆さん」は去年の秋、
くめくめ。さんの息子君(ジヘイ君)が聴覚過敏だったにもかかわらず、
今では吹奏楽部に所属しているとお聞きした時から
ここのコメント欄です。)
いつか「生のコンサート」をすーさんと一緒に聴きたいと太い一本の願いを持ってました。

この春、晴れてジヘイ君は高校生になられます。
そして、こんなに素敵な寄せ書きを卒業記念にもらったそうです。
寄せ書きに

「卒業おめでとう!!
吹奏楽部で学んだことを忘れず
自信をもって歩んで下さい。」
「指揮者しているときとってもカッコよかった!!」


とありました。他にもたくさん・・。

好きなものをもっと好きになれることでしっかり輝けるんだと
信じてやまない婆さんでした。