日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

前田検事の「FD書き換え」より大事なこと  検察に踊らされた朝日新聞?

2010-09-30 00:40:29 | Weblog
郵便割引制度をめぐる偽の証明書発行事件の被告であった村地厚子さんの無罪が大阪地裁で言い渡されたニュースをうけ、私は厚労省・村木元局長の無罪判決に地検は控訴を断念すべきであるで次のように述べた。

今回の無罪判決により、ここで私が強調したような不実な検察官が断罪されたともいえる。せめて控訴を断念するという行動で、まずは反省と謝罪の意を尽くすべきである。

それにしても漫画的な虚構をでっち上げた検察の仕事ぶりの実態を知りたいものである。法務省に「検察審査会」ならぬ「検察官適格審査会」が存在して、法務大臣の請求で各検察官を随時審査するときく。審査結果によっては検察官が免職されることもあるらしい。この「検察官適格審査会」をなんとか活用出来ないものだろうか。千葉景子法務大臣のもうひとつの置き土産を期待したいものである。

「漫画的な虚構」と私が述べたのは、一口に言えば、検察側が持っている証拠と矛盾する内容の冒頭陳述を臆面もなく行ったことを指す。検察側の誰一人として、村木さんを起訴する前にこの矛盾に気付かなかったとしたら、まさに検察側が無能ぶりをさらけだしたことになるし、もし一人でも気付いておりながら起訴に至ったとすると、検察の職業倫理の崩壊を示すことになる。いずれにせよこの件に係わった検察官はその職責を全うせず、ゆえに検察官たる適格性の欠如を示したことになる。これに対して厳しい処分が下されるべきであるのに、ここで急に前田恒彦検事の「FD書き換え」事件が浮上して、世間の注目がそちらに向けられてしまった。肝腎の不祥事に対する注意が逸らされて有耶無耶にになっては大変である。そこで検察のどこがおかしいと私が考えるのか、その実体をあらためて述べることにする。ここで取り上げるのは村木さんが被告となった郵便不正事件裁判での検察側冒頭陳述(抜粋)である。

検察側冒頭陳述 全文から

第5 犯行状況等

(中略)

2 倉沢の要請を受けた被告人からの上村に対する指示

 倉沢の要請を了承した被告人は,平成16年6月上旬ころ、上村に対し5月中の日付で公的証明書を作成して被告人のところに持参するように指示した。

(中略)

3 本件公的証明書の作成及び交付状況等

 上村は、平成16年6月上旬ころ、社会参加推進室の職員が帰宅した後の深夜の社会参加推進室で、「凛の会」あての「上記団体は、国内郵便約款料金表に規定する心身障害者団体であり、当該団体の発行する『凛』は心身障害者の福祉の増進を図ることを目的としているものであると認めます。」などと記載した書面を作成し、翌早朝ころ、同書面に企画課長名の公印を押捺し、厚労省社会・援護局障害保健福祉部企画課長作成名義で、同課長の公印を押捺した同年5月28日付けの内容虚偽の本件公的証明書を作成し、これを被告人に手渡した。


この筋書きに対して、上村被告宅から押収されたFDに残されたこの偽証明書の作成日時は2004年6月1日午前1時20分06秒となっており、この事実に基づいて特捜部が作成した捜査報告書にも、当然ながらこの日時が記載されていた。

上村は、平成16年6月上旬ころ、社会参加推進室の職員が帰宅した後の深夜の社会参加推進室でが、《上村被告宅から押収されたFDに残されたこの偽証明書の作成日時は2004年6月1日午前1時20分06秒》に対応する。私は明らかに矛盾していると思うが、平成16年6月上旬が辛うじて《2004年6月1日午前1時20分06秒》のことだとしよう。公印などが押印される前の「偽証明書」が出来上がってFDに保存されたのがこの「作成日時」であると考えられる。となると仮に当時の村木課長が上村被告に証明書作成の指示を与えたとしても、それは5月31日以前とならざるを得ないのである。これは明らかに被告人は,平成16年6月上旬ころ、上村に対し5月中の目付で公的証明書を作成して被告人のところに持参するように指示した。と矛盾する。すなわち検察側はFDに残された日時データに基づいて自らが作成した捜査報告書とは明らかに矛盾する内容の「冒頭陳述」を作り上げたのである。

村木さんご自身がこの矛盾を見つけたと伝えられているが、ではこの矛盾に郵便不正事件に係わった検察官の誰一人として気付かなかったのであろうか。もしそうであるなら、この検察官全員が検察官不適格の烙印を押されるべきである。しかし村木さんに対してもそうであったが、元国家公務員であった私は、この件に係わった捜査担当と公判担当の検察官の全員がそれほどのふぬけの脳足りんだとは決して思いたくないのである。必ずや矛盾に気がついた検察官がいたと信じたい。当然村木さんの起訴に異を唱えたことであろう。それにも係わらず村木さんの起訴に踏み切ったことそれ自体が真っ先に槍玉に挙げられるべきなのである。検察官がみずから職業倫理を踏みにじり、国民の検察への信頼を大きく裏切ったこの不祥事の徹底的な調査による実態解明こそが目下の急務である。

ところがところが、ここで郵便不正事件の特捜部前田恒彦主任検事の「FD書き換え」事件が突如持ち上がった。朝日新聞の「スクープ」なのである。世間の目は一挙にこちらへ向けられた。私は最初からなにか裏があるように感じて「検事、押収資料改ざんか」の朝日新聞記事はなんだか素直にとれないの記事を認めたのであるが、今日、「週刊朝日」10月8日増大号を買い求めて次の記事を目にしたときに、私の勘が当たっているような気がした。村木さんの無罪判決が出た9月10日から数日たったころの話である。


ここで否応無しにげすの勘ぐりが頭をもたげてきた。トカゲの尻尾切りをもくろむ検察に朝日新聞は踊らされたのである、と。


最新の画像もっと見る