goo blog サービス終了のお知らせ 

日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

「研究室間格差」は大学が多すぎるから

2009-01-29 17:41:51 | 学問・教育・研究
夕べは久しぶりに研究室の後輩と出会って話をしているうちに、あれっ、なぜ仕事の話をしているんだろう、もう引退したはずだのに、と不思議に感じて、そうだこれは夢に違いない、と思った途端に夢から覚めた。昨夜寝る前に「5号館のつぶやき」さんの「研究室間格差」と、それに寄せられたコメントに目を通していて、なるほどなるほど、と頷いたりしていたものだから、それがどうも夢に繋がったらしい。何にどのように反応したのか、私はアカデミックな大学の数を大幅に減らせばよいとこれまでに述べてきているが、その考えと合いそうな箇所を取り上げてみる。前後のつながりをあえて無視してコメントの中身のみの引用であることをお断りする。

①《(ちゃんと研究室を選べるというのも実力のうちなのでしょうけれど)》(hanahiさん)

貧乏研究室で修士を2年、博士を5年も院生として苦労された方の体験談から出てきたコメントであるが、その通りだと思った。高校生の頃から大学の研究室で物理学を研究することに憧れて選んだ道を歩みたいのであれば、研究に支障を来すほどの貧乏研究室を選ぶべきではなかったのである。状況判断の誤りに気づくのが遅かったのが惜しまれる。

②《ラボが貧しく業績が出ないのはPIの能力不足でしょう。生き残れないPI,教授はこの世界から早々に御退散願い、かわりに若い人にチャンス(=独立支援と研究費援助)を与えた方がいいと思います。少なくとも国立理学あたりでは准教授、教授を全て任期制にして、一定の研究&教育業績を果たした者のみがlabを運営する資格を付与するのがいいでしょう。底辺層は一旦崩してしまい、能力と可能性のある若者に限られたパイを与えるのが科学の発展のために必要かと思います。》(yugo-yuzin-hanaさん)

このご意見に私は全面的に賛成である。

③《おっしゃることもわかりますが、競争的資金は応募者の20-30%しか当たりません。簡単な数字なのでおわかりいただけると思いますが、人を変えても事情は変わりません。》(stochinai管理人さん)

これもその通り。制度を変えないといけないのである。後ほどのコメントにも関連するが、私は真のアカデミズムを育むにしては今の大学が多すぎると思っている。最近では庭仕事から大学制度へ話が飛ぶでも述べたが、旧帝大を核にしてその倍ぐらいの大学をアカデミック大学として残し、そこでは以前は校費と言ったが基本経費を大幅に増額して、大型の装置でも買うのでなければそれだけで日常の研究活動を行えるようにするべきなのである。

④《私のところでは研究費は年間5万円の交通費のみです。その他はすべて私費です。科学研究費補助金などをとれればよいのですが,申請するにはある程度の研究成果が必要です。古株教員は景気の良い頃に購入した実験機器をもっていますが,私のような新参者は何から何まで私費なので限界があります。他大学に移るにしても実績を作ってからの話ですから,なかなか抜け出せません。格差の拡大を実感します。》(地方教員さん)

何をか言わんや、である。この方の頭の中にある「研究」がどういうものを指しているのか、私には見当がつかない。

⑤《それから、科研費についても、20?30%にしかでないというのは、20?30%のくらいしか、教育者として適任ではない、つまり、それ以外は若手を育ててほしくないので研究費はあげないという見方もできるのではないでしょうか。》(ななしさん)

「若手を育ててほしくない」のかどうかはともかく、この着眼点が秀逸。国としてはそれぐらいは出せるという現実はあるのだから、パイの取り分ではなく取り手を減らすのが研究の遂行に最も効果的であろう。

⑥《それから競争的研究費総額と想定採択率より、「研究者」総数が決まってくるはずなので、「合理的に」考えれば、現状維持であれば研究者数を減らす、あるいは総額を増やす・採択率を上げる(1件あたりの粒度が小さくなる)といった全体での整合性を保つ舵取りをおこなう必要があると思うのですが、現状はそのために文科省が市場原理っぽい仕組みを導入している最中なんでしょうか?》(個々の事例はともかくとしてさん)

「市場原理」が何を意味するのか少々分かりかねるが、この方の現実的な見方には賛成である。上にも述べたように、私は大学を淘汰して、すなわち研究者総数を大幅に減らして、その代わり全ての研究者が日常の研究活動を行える資金を恒常的に支給すればよいと考えている。研究者としての淘汰を早めに行って、三十歳ぐらいで第一関門を突破すれば毎年数百万円程度の研究費を支給し、10年ごとぐらいに適格審査を行えばよい。

⑦《研究者間の競争を活性化するという目的なのでしょうが、もともと一定の数の研究者は良い研究をすることにストイックなほど賭けているわけで、市場原理など持ち込まずとも切磋琢磨するんじゃないでしょうか。》(通行人さん)

まったくその通り。その一定数の研究者以外は要らない。

⑧《もう一つ、学生が教員の研究費獲得の影響を大きく受けるシステムはおかしいです。完全にはできないと思いますが、教育と研究の区別をもう少ししても良いのではと思います。》(かぴばらさん)

その通り。たとえば院生一人に年間経費として100万円がついて回るようにすればどうだろう。以前から研究室への予算配分に院生経費が頭数に応じて割り当てられていたと思うが、もう細かいことは覚えていない。これで自ずと院生と教師の関係もお互いをより認め合うことになることだろう。院生は教育を受ける権利があるのだ。そのために授業料を払い国がさらに後ろ盾になっていることを教員に悟らせることになってよい。

⑨《子どもの数が減ってるのに大学の数は大幅に増えたという背景がありますね。文科省も減らしたいと思ってることでしょう。合併するのがいいと思うんですけど、なかなか話が進まないので、じりじりとお金を減らす作戦をとって、つぶれるまで、我慢比べように待ってるんでしょうか。》(123さん)

その通り、兵糧攻めと積極的に受け取って、研究者は自分が生き残る術を身につけるべきなのである。しかし兵糧攻めで相手が潰れるのを待つのは為政者のすべきことではない。だからこそ大学制度の抜本的改革を急がねばならないのである。

⑩《科研費の総額や配分に問題が大有りなのは分かるのですが、予算が取れないPIにももう少し工夫してもらいたい気はします。特に研究室の代表ともなれば経営者でもありますから、研究室が機能するだけの予算を確保するのは責務だと思います。》(hanahiさん)
 《科研費を取るにも、採択傾向を調べたり審査者に伝わりやすい記述を心がけるなどの積極的な工夫が必要なのではないでしょうか。》(hanahiさん)

まったく同感。自分のやりたい研究を推し進めるのに、必要な経費を確保することが個人の努力にかかっているのが現実である。「天は自ら助くる者を助く」である。現状では研究費稼ぎの敗者が研究の敗者であるのに、その負けたことを認めたがらない人が多すぎるのではなかろうか。もちろん捲土重来を期するぐらいの覇気はなければならないが、ことの見極めも大切である。それにしてもコメントにあるように的確に物事を見ておられる方が多いことにある意味では安堵した。ぜひ生存競争を生き抜いて頂きたいものである。

岡目八目の気炎を上げていたら、その最中にかっての院生から教授就任の知らせが舞い込んできた。嬉しい限りである。夢に現れた後輩とは別の人物であるが、やはり夢には不思議な力があるような気がする。


最新の画像もっと見る