日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

新型(豚)インフルエンザに対する京都大学の特筆すべき指針

2009-05-24 16:49:28 | Weblog
5月18日に続いて実は昨日もまた京都に出かけた。18日には疫病退散を祈願する御霊祭の勇壮な神輿揺らしを目にしたばかりなのであるが、残念ながら21日に京都でも発症者が出てしまったので、街の様子の変化が少々気になった。しかし阪急電車もほどほどの混み具合だったし、またそれが目的で出かけた京都文化博物館も三条通りも木屋町も先斗町も、結構の人出で賑わっており、マスク姿が少し目立ったほかは街の様子にとくに違和感はなかった。ところがこの修学旅行のシーズンに小中高校のキャンセルが相次いで、少なくとも600校が中止・延期を決めたとのニュースが流れ、この週末の観光地は京都新聞によるとかなりの様変わりがあったようである。

 新型インフルエンザの影響で、京都市、大津市では23日、観光名所や商業施設、スポーツ施設の人出が減り、普段の週末のにぎわいは見られなかった。商店主らが地域経済への影響を心配する一方、市民や観光客からは「感染予防を心掛ければいい」と冷静な声も聞かれた。

 例年5、6月は修学旅行のピークだが、京都市での感染者発生が伝わった22日以降、関東地方の学校などからのキャンセルが急増。清水寺、産寧坂(東山区)でも制服姿はまばらだった。
Kyoto Shimbun 2009年5月23日(土)

こうした状況下で、京都市は比較的冷静に事態に対応しているようである。最初に患者が発生した際にも休校措置の範囲を市内全域とせず、児童の居住地と通学先である中京区、下京区に限定することを決め、保育園は通常通り開くこととし、イベントの自粛要請も見送った。京都市内で2例目となる新型インフルエンザ感染が確認された23日にも、その休校の地域範囲をこれまで通りとして 拡大していない。

この京都市の対応に反して京都府の対応はなんだかおかしい。

 京都府の対策本部も同日夜に緊急会議を開き、府立校のうち京都市、長岡京市、向日市にある府立高校と府立盲学校、府立聾学校など計21校を、同じく22日から6日間の休校措置とすることを決めた。

 府と市は、私立の学校や幼稚園、大学などにも休校を検討するよう要請した。
Kyoto Shimbun 2009年5月21日(木)

そして休校を検討するように要請された大学側では、府下の国公立を含む大学、短期大学全47校のうち、京都大を除く46校が休校・登校停止の措置をとるなど、京都大学を除いてはまったくの思考停止状態に陥ったようである。京都大学だけは独自の対応策をとった。

京大は休校せず 新型インフル
休校要請も独自判断

 京都市内での新型インフルエンザの発生で大学の休校が相次ぐ中、京都大(京都市左京区)は22日、休校とせず、通常通り授業を行うことを決めた。京都府と京都市から休校の要請があったが、「学内での発生がないのに休校の効果はない」と独自の判断を下した。府内の大学で唯一、休校や登校停止をしない。

 インフルエンザをはじめとする感染症の学内の専門家グループが意見をまとめ、総長や理事らで構成する対策会議が最終判断した。

 専門家グループの川村孝・京大保健管理センター所長は「休校にしても学生が外出しないとは限らない。学内で感染が認められていない以上、キャンパス内は安全で、勉強に励んでもらうほうがいい」とする一方、「いろんな地域からの人が集まる学内イベントは、できる限り延期するべきだ」と話している。
Kyoto Shimbun 2009年5月22日(金)

京都大学のホームページには

【重要】新型インフルエンザに対する本学の方針について(第4版)【5月22日更新!】
本日現在において本学は通常どおりの授業等を行っています。(2009年5月22日)

との指示が出されており、さらにこれに先立ち5月20日には保健管理センター:新型インフルエンザに関する緊急情報(第2報)が公開されている。その一部を引用するが、とくに強調部分(By 筆者)は、事態を冷静に見つめ、一人ひとりが新型インフルエンザにどのような心構えで立ち向かうべきか具体的な考え方を示しており、これが実に素晴らしい。これこそ研究者・学者の社会的責任を体現したものと言える。

冷静に受け止める

 メキシコのある農村で生まれた新型のインフルエンザ(A/H1N1)が、北米各国のみならず世界的に流行しています。日本でも西日本で相次いで発症者が出て、警戒体制に入っています。

 歴史的に見ると、今回と同様のブタ・インフルエンザは1976年に米国で小流行しています。また1977年に極東やアメリカで流行したソ連型インフルエンザも同じH1N1という抗原型を持っています。それらによって当時の人々が免疫を獲得したせいか、発症者は圧倒的に若い人に多くなっています。免疫を持っていない集団の中にいったん病原体が持ち込まれると、瞬く間に広がっていくのです。
不幸中の幸いというべきか、毒性は強くありません。しかし、持病のある場合や妊婦では重症化するおそれもあります。また、秋以降に強毒化する可能性も懸念されています。

 このインフルエンザに効くワクチンは当分ありません。発症してしまった人はちょっと辛いのですが、これで免疫を獲得して今後同じタイプのインフルエンザにはかかりにくくなることが期待できますし、公衆衛生的観点からは集団免疫の成立にも貢献することになります。賢く行動してやり過ごしましょう。


もちろん事態の進展に合わせて取り組みを柔軟に対応させていくことが前提にあるのは言うまでもない。京大生のみならず、すべての国民にこのような考え方が浸透して欲しいものである。

最新の画像もっと見る