日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

病気腎移植問題のこれから

2007-02-22 10:47:04 | Weblog
2月19日付asahi.comは《宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠・泌尿器科部長(66)らによる「病気腎」移植について、日本移植学会など関係5学会は、「原則禁止」の方針を打ち出すことを決めた。がんとネフローゼ症候群の患者からの移植は、免疫抑制下で「再発」の危険が高まるなどとして「絶対禁止」とし、それ以外についても例外的なケースを除いて禁止する方向で合意した》と報じた。病気腎移植についての最終見解は3月下旬に出されるとのことである。

この関係5学会とは日本移植学会・日本臨床腎移植学会、日本泌尿器科学会、日本腎臓学会、日本透析医学会のことであろうか、2月17日に大阪市内で開いた第二回合同会議には、これに《日本病理学会の代表者や、宇和島徳洲会病院や市立宇和島病院が設置している専門委員会に派遣されている学会員ら、計二十三人が出席した》とのことである。(愛媛新聞社 ONLINE、2月18日付)

関係学会のメンバーの病気腎移植に対する否定的な見解は当然予測されることで、特に問題にすべきところではない。私は現場の医師の裁量を重視する立場をとるので、ご本人が腰砕けになろうとも、万波医師の「病気腎移植」へのチャレンジを支持することには変わりない。

しかし一番の問題は移植用の病気腎をどのようにして確保するかである。当然病気腎を持った患者から摘出することになるが、この摘出の妥当性の判断が病気腎移植の命運に関わってくる。私は以前のブログ万波誠医師のチャレンジとヘルシンキ宣言で、《医療の本質から云って、問題になるのは、ドナーとなった患者の『病気腎』摘出の妥当性であろう。この患者の健康が腎摘出医師の第一関心事であったのか、これは調査によって明らかにされなければならない》と述べ、また万波誠医師のその後は?でも、《私は以前にも取り上げたが、病気腎の摘出の妥当性に関しては、出来る限り状況を調査して、今の時点で一定の評価が下されるべきであると思う。これは病気腎を摘出した医師の医療行為の是非を問うことになる》との見解を述べた。

病気腎移植問題は宇和島徳洲会病院での医療行為から明らかになったせいか、地元の愛媛新聞が精力的に経緯などを詳しく報道している。内容も具体性があるので、以降断らない限り記事の引用元は愛媛新聞である。この愛媛新聞が病気腎の摘出の妥当性をめぐって、宇和島徳洲会病院の調査・専門合同委員会で出された意見であろうか、以下のように報じている。

《腎臓内科医から「ネフローゼ症候群は、まずは内科的治療が第一の選択。摘出はあり得ないのではないか」》、《摘出不要との意見もあり、尿管狭窄(きょうさく)では「内視鏡で患部を広げることなどを試みるべきだった」、腎動脈瘤(りゅう)は「摘出せず経過を観察してもよかったのではないか」との声があった》、《出席委員によると、摘出について「移植を前提に、動脈を長く切ったり、がんの腎臓の血流を止めずに手術した」「万波医師は医師の優越的立場で摘出を進めていたのではないか」との指摘も出たという》等々である。

この新聞報道から判断する限りでは、この委員会の空気は、病気腎摘出の妥当性について好意的ではない。

万波医師によると《「捨てられる腎臓の中には移植に使えるものもある」(万波医師)》とのことである。新聞記事頼りになるが、移植に使われた病気腎は、文字通りに「捨てられる」運命にあったとは私は思わない。移植を前提とする以上、かならず前もって保存液などを準備しているはずだ。この「捨てられる」というのは言葉の綾に過ぎない。移植を前提として病気腎が摘出されたと考えるのがこのさい常識的であろう。

ここで病気腎の摘出と病気腎の移植という二律背反性が浮上する。

移植を前提とする以上、病気腎の患者に摘出の必要性を説明すると同時に、摘出腎を移植に使用する可能性のあることをあらかじめ説明しなければならない。患者の判断を左右する重要な情報であるからだ。この説明を受けた患者は、自分の身体から摘出された病気腎が、他人に移植されてその体内で動き続けるのなら、なぜ摘出しないといけないのか、なかなか納得出来ないだろう。不都合を説明されるだけなら泣く泣く病気腎の摘出には同意するものの、それが移植に使われると知ったら、この患者は素直に摘出に同意するだろうか。

私は病気腎移植を推し進めるには、この二律背反性の問題の解決が不可欠と考える。その観点からも、今回の事例で病気腎の摘出に際して医師と患者の間にどのようなやり取りがあったのか、その全容が明らかにされることを望みたい。すべてはここから出発する。


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2 コメント

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Unknown (いわもと)
2007-06-16 22:55:11
本心ではあなたも気づいておられるように、「この二律背反性の問題の解決」は詐欺によらなければ不可能であり、よって万波誠氏の行為の犯罪性も否定できません。彼はもっと世間に糾弾されてしかるべき(刑事告発も含め)と考えますが、毎日・朝日等のマスコミは彼の赤ひげ的ポーズ・反体制的言辞にコロリとだまされ、擁護的記事を載せており、歯がゆい限りです。
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こんにちは。 (腎移植について)
2011-02-03 14:44:54
臓器移植について調べていてこちらのサイトを拝見致しました。
肝臓移植や腎臓移植など、わからないことが多く不安に思う方々がいると思います。
そんな方々に少しでも情報提供をできればと日々、勉強と努力をしています。
貴サイトにありました情報や意見は大変参考になりました。
ありがとうございました。
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