日々是好日

身辺雑記です。今昔あれこれ思い出の記も。ご用とお急ぎでない方はどうぞ・・・。

買い物カートから転倒した娘と後日談

2006-08-25 17:07:25 | 海外旅行・海外生活
シュレッダー事故のニュースに、「子供、とくに乳幼児をこのような危険から遠ざけることに万全の注意を払うのは親として最小限の義務であろう」と私は昨日のブログに書いた。実はそれは親としての私の反省の言葉でもある。私の不注意で子供を酷い目に遭わせたことがあるからだ。

若い頃アメリカでの生活が始まり、土曜日は食料品買い出しデーであった。車でスーパーに一家で出かけて大きなカートに食料品をどんどん投げ込む。ほぼ一杯になればお終い、なんとか一週間はもってくれる。

買い物用のカートは大きくてどっしりしていた。取っ手側には幼児用の椅子がついていて、子供は足を穴から外に垂らして親と向かい合うように座る。いつも2歳の長女をそこに座らせていた。

ある日のこと、私がカートから手を離して長女を残したまま何か品物を見ていたときだった。ふとカートの方を見ると長女が椅子の上に立ち上がっている。危ないと思った瞬間、バランスを崩したカートがひっくり返って長女は床に叩きつけられた。頭をもろにぶつけたようで、ギャッと言って泣き叫んでいたがだんだんと声が弱くなる。まわりの買い物客が集まってくるし、店長だったかどうか、店の人が走ってきてすぐに病院へ自分の車でわれわれを連れて行ってくれた。

長女はぐたっとしたままである。前額部にたんこぶがコブシほどの大きさに膨らんでいる。救急のセクションですぐに医師が診察してくれた。検査の詳細は覚えていないが、レントゲン写真は撮ったと思う。どのような診断が下されるのか気が気でならなかった。

この長女は小さいときからお転婆で、怖さを感じなかった子供のように思う。アメリカに渡る太平洋航路の船の中でも片時も目を離すことが出来なかった。梯子でも平気で高いところへ上っていく。「これっ!」と注意するとますます面白がってハッスル始末。万が一にも太平洋に落ちることだけはないようにと、目を覚ましている間は妻か私かどちらかが絶対に目を離すことが出来なかった子供である。

買い物カートの子供用椅子の上にまさか立ち上げるとは、わたしの念頭には全くなかった。しかしなぜ立ち上がったのだろうなんて考えても答えが出てくるはずがない。子供には突発的な行動がつきもの、だから私がカートから手と目を離したのが悪かったのだ。

やがて担当の医師から頭の骨には損傷がないし、容体も悪くはない。しばらく安静にしてから連れて帰ってもよろしい、と言われて安堵の胸をなで下ろした。もし変わったことがあればすぐに連絡するようにとの注意を受け帰宅の途についた。

私は自分でも割合よく気がつく方で、用心深い性質であると思っていた。それだけにこの思いがけない事故はショックであった。危険を意識していない場面で起こったからである。しかし考えてみると、危険意識はあくまでも自分の限られた体験と知識と想像力によるもので、幼児の行動はその理解可能な範囲をいとも易々と乗り越えてしまうのである。だからこそ自分が危険と思うものに近づけないようにすると同時に、何をするのか分からない子供から目を離してはいけなかったのである。

今でもそうであるが、スーパーなどで幼児を買い物カートに乗せたままお母さんが離れて買い物をしていると、さりげなくその側に立ってお母さんが戻ってくるまで見守ることにしている。育て方がいいのか、大人しく待っている子供はほんとうに可愛い。

後日談がある。

私は転倒事故にもかかわらず娘はまともに成長してくれたと思っていた。ところが婿にいわすと時々おかしいというのである。その内容はさておき、婿が娘に「あんたがおかしい」と言うと、娘は「昔頭を打ったせい」と切り返すらしい。その話を婿が初めてしたときには私の不注意を責められているようで、なんとも申し訳のない気持ちになった。その跡が今でも残っている、と娘が婿に頭を触らせたそうである。そうすると、なるほど後頭部が火山の噴火口のように陥没していて、割れた頭蓋骨のくっつき方が悪いせいで大きな溝も残っているというのである。そんなことがあったのですかと婿が聞いても、頭が割れてくっつくなんて私は初耳だったので不思議に思っていたら、妻がそれは私の遺伝と言い切るのである。妻が婿に私の頭を触ってご覧、といって触らせたら、婿が「ほんと、一緒」と言い切る。私も知らなかったので妻の頭を触ってみた。なるほど、陥没もあるし大きな溝もある。髑髏杯にするとしっかりと糸底になるほど『外輪』があった。

これで婿も『陥没』が頭を打ったせいではないことを納得したし、また私も打った場所は後ろではなく前であることを改めて力説した。それにしても娘の頭の形をいつの間にか調べているとはさすが母親であると妙に感心したが、やはり頭の形が変わったのかと心配していたのかも知れない。

これも幸い無事に済んだから云える話である。

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