どきどきして待っていたお芝居≪関の弥太っぺ≫。
若丸座長が愛してやまない長谷川伸さん原作の股旅もの。
アレンジを加えられ、さらに弥太郎の悲しみが胸に迫る物語となりました。
まずはセットリストから。
ちょっとだけ、の追記完了しました。
2017-05-17
≪再掲≫20170515都若丸劇団於朝日劇場昼の部
≪関の弥太っぺ≫誕生日公演レベルの素晴らしさ!
≪お芝居≫
「関の弥太っぺ」(前半)
「関の弥太っぺ」(後半)
≪舞踊ショー≫(敬称略)
「男の火祭り」英樹、京香、舞斗、紗助、雅輝
「白雲の城」キャプテン
「かもめが飛んだ日」若丸座長女形
「男泣き」英樹
≪中舞踊≫
「春夏秋冬ふられ節」
「夢の半ば」雅輝
「桜小町」星矢
「止まり木のブルース」英樹、晴香、紗助
「富士」舞斗
「Wブッキング」若丸座長たち
≪ミックスジュース≫
センター 若丸座長
都「今日もよく来てくれたね」
客「私たちもヒマじゃないんです」
(若ちゃん「僕らが調子に乗らんようにという戒めです」(笑)
「日本橋から」剛副座長
「現世の子守歌」若丸座長たち
「道頓堀(とんぼり)リバーサイドブルース」あきら
お芝居≪関の弥太っぺ≫
弥太郎の名セリフ、
>「…この娑婆には辛い事、悲しい事がたくさんある。だが忘れるこった。
>忘れて日が暮れりゃあ明日になる…ああ、明日も天気か」
このセリフが弥太郎とお小夜をつなぐ唯一の≪鍵≫?
沢井家に預けられた幼いお小夜が10年間決して忘れることのなかった言葉は、
お芝居と客席をつなぐ、希望でもあるのだなあと思いました。
不朽の名作、長谷川伸さんの原作のあらすじをまずはどうぞ。
あらすじ(原作)はこちらから
都のお芝居でまず、幕があがって、度肝を抜かれました。
一面の竹林、となっているのです。美しかった!
こんな舞台見たの、初めてです。あるいは舞踊ではセットとしてあるかもしれないけど、
何もなくして竹だけを何本も配置するって、前衛的ですらありますよ。
そこでお小夜の父親・和吉と弥太郎、そして森介(剛さん)の因果な出逢いがあるわけです。
弥太郎はさまざまな人間を助けてやらざるを得ないのに見返りを求めない、
そして、自分が求めるものは得られない、という人間です。
それでも、ひとの道から外れず、美しいままに生きていく・・・、
もちろん、無傷ではいられない、歳を重ねるごとに凄惨な傷を負っていき、
お小夜にも、預けた沢井家の女将にも恩人であることを思い出してもらえないわけですが、
≪人間いかに生きるべきか≫を今日も教わる気がしました。
若丸座長がどれほどこの作品を愛していて、主役を演じた萬屋錦之助さんを尊敬しているかは、
どの場面場面も舞台設営を、心を砕いて美しく展開させてくれたことからもわかります。
妥協したくない、その想い。
今まで中舞踊で、このお話を取り上げることがあっても、きちんと上演しなかったのは、
満を持して、の想いがあったからだろうなあと思うのです。
また、舞台の設営だけでなく、約90分の中でこの作品の核をきちんと伝えたいという想いが、
作品のアレンジとなっていたのだと思うのです。
原作では、すでに亡くなっていた妹ですが、弥太郎が探し続けるうち、女郎屋でついに出逢います。
でも、病に冒された妹は兄と出会ってしまうようなことがあったなら、と遺書を用意していて、
弥太郎に席を外させて、束の間に、自刃して果てました。
この一場面にだけ登場した妹役のひかるさん、素晴らしかった!
実はこの妹をどんなふうに登場させるか、ここも難しかったと思うのですが、
星矢さんにとんでもない女郎(ビジュアルとか性格とか笑)として登場させ、
≪お前はもういいから別の女に話を聞きたい≫と代わらせるという段どりがあったんです。
しかも、全編緊張感みなぎるお話で、星矢さんは貴重な息抜きのお笑い担当。星矢さん、お見事でした!
(夜の部では暴走しないように気を付けます、と星矢さん、送り出しで笑ってました。可愛かった)
若丸座長、普段なら自分から笑いを取っていくところ、星矢さんに担わせ、無理なく絡むことで、
星矢さんが退場すると、空気もまたもとに戻すという素晴らしい演出!
妹のお糸が登場する段になると、しっとりとした雰囲気にがらりと変わって、
さすがひかるさんとの阿吽の呼吸が素晴らしかったです。
兄と勘付き、すぐに自害しようとするお糸、その悲しみとせつなさ!
無駄のない動きなのに情感たっぷりに演じられて、観ていて、感情移入している自分と、
冷静に、ひかるさんはすごいなあと思っている自分が同時にいる気がしました。
弥太郎の悲しみが客席にダイレクトに伝わりました。
これは、映画ではなくて、舞台であるからこそ。この流れの素晴らしさにはうなりました。
妹がすでに死んでいた、という原作を先に知っていたから、弥太郎の悲しみをどう表現するんだろう、って
興味津々だったのです。
この悲しみから十年を経ていくうちに、容貌も人斬り稼業の果て、荒んでいくのに説得力がありました!
森介は本当の恩人である弥太郎を、沢井屋の人間誰もがわからないということをいいことに、
お小夜の宿賃と養育料として弥太郎が預けた50両を横取りしてしまうような人間として描かれましたが、
ミックスジュースの時に、若ちゃんが、森介は実は最初から悪事を働こうという人間だったのではなくて、
お小夜に一目ぼれした、でも大金を手にしてから人が変わってしまった、と擁護する話がありました。
この作品のなかの弥太郎の、一時は命を助け合う相棒だった森介を、ちゃんとわかってやってほしいというような、
愛情のようなものを、その話の中で感じて、うるっとしてしまったのです。
その流れで芝居を作ると2時間になってしまうとのことでした。
さらに場面転換があって、舞台を見てるのか幕を見てるのかわからなくなるから、と笑う若ちゃん。
でも、いつかお芝居だけで2時間、というのをやってみたいとのことでした。
大人になったお小夜を誰が演じるのかなあと思っていたら、京香ちゃんでした。
京香ちゃんが冒頭のあのセリフで、今目の前にいるやくざがあの時の恩人と気づいて、
「おじちゃん」と呼ぶときには少女のような声とその印象で、素晴らしかったです!
そして、引き留めるお小夜に、大事な用がある、妹のいる遠い国に行かなきゃいけない、と言うシーン!
泣けました。原作にそういうセリフがあるのかどうか知りませんが、
弥太郎の悲しみの深さがこころに刺さりました。
弥太郎の描かれなかった10年の悲しみ・・・。
若丸座長のセリフは感情の波をおさえたものでしたが、時に声を張り上げるときの力強さが圧倒的で、
セリフにこめられた思いには嘘偽りのない気持ちが反映されていたと思います。
どの場面だったか忘れたけれど、・・・才兵衛(キャプテン)と森介を逃がす場面だったかなあ、
一瞬動きを完全にとめて写真のようになるのって、今動画で流行してるじゃないですか、
あれが2回くらいあって、びっくりしました。 それがまた効果的で、舌を巻きました!
常に情報収集してるからこそ、の効果ですー。
そして最終最後の場面、敵たちに取り囲まれるところで、幕が下りるのですが、
照明が真っ赤で、劇的な幕切れでした。見事でした!
赤い照明と言えば、誕生日公演のあの提灯の赤を思い出しますが、
圧倒的な赤の照明って、すごいなあ、理屈を突き抜けた力と強烈な印象が脳裏に刻み込まれるなあと感動しました!
もちろん、私は、弥太郎が無事でどうか、この先も生きていってほしいと願いながら、
作品が終わってしまうのを、終わらないでと思ったのですが・・・・。
追伸、天涯孤独がつらくて妹を探す弥太郎が、修羅場の世界で見つけた友だちふたり。
森介は自分とさして変わらぬ年代、相棒とまでは呼べないまでもそれに準ずる信頼を置いていたと思うのです。
あの弥太郎の性格だから、そのあたりはおさえて描かれていたけれど、
だから、森介の性格が豹変したゆえに、お小夜から切り離そうと、思い出の出会いの場所に呼び出す弥太郎の、
悲しい心情がよく読み取れて、たまりませんでした。
剛さんは豹変する森介をうまく演じられていたし、
いまわの際にお糸のことをつぶやくセリフ、それが真実であろうと嘘であろうと、
あのセリフを用意した若丸座長に唸りました。
森介との悲しい死闘、ひかりの当たり具合、呼吸、何をとっても、ここを外したら破たん、の
完璧さで貫かれていたと思います。 竹の倒れよう、しかり。
あんなに悲しいお話で、弥太郎には救いもなかったから、だから、せめて親しみをこめて、
≪弥太っぺ≫と呼んであげるのかなあと涙しました。
見れなかった方に、有名な原作との違いが少しでも伝わって、
次に都がこのお芝居をいつするのか、とわくわく心待ちにしてもらえると嬉しいなあと思います。
私見に満ちた感想にお付き合いさせてしまってすみません。
勘違いや不手際があるかもしれません。伏してお詫び申し上げます。
ミックスジュースに関しては後程、追記させていただきます。
≪ミックスジュース≫
若ちゃん「めったにやらないお芝居にお付き合いいただきました。ありがとうございます。
11年ぶり、前にやったのは26歳の時でした。若いうちにやってたんですね。
20代は若い役を、30代は股旅を、40代は侍をやりたいなあと思ってます。
弥太郎、昔は、大河内伝次郎、長谷川一夫、そして萬屋錦之助、あの頃はまだ中村と名乗ってたときかな、
いろんな方が演じてこられた役ですけどね、僕は萬屋錦之助さんが大好きで、
演じられたものをすべてやりたいと思ってきたんですよ。
宮本武蔵5部作とかね、毎日。3日目かな、一条下り松の決闘では1対73(ちゃんと聞けてません。すみません)、
全部舞台に上げようと思って。そしたら、お客さんより舞台の上の方が多くなってしまうと思いながら」(爆笑)
若ちゃん「30半ばまでにかなえたい夢がいろいろありましたけど、
毎日の舞台があって、そちらに力を注ぐから、手を付ける時間がなくなります。
新作5本あげようと思っても、2本になったりね。
削らければ仕方がない、というのはつらいです。
でも、このごろは座員に、こういうのがやりたいねん、と、ちょっと言うと、
ちゃんとわかってくれるようになりました。座員が育ってくれました」(拍手)
若ちゃん「土日と変わらぬお客さんですよ。ありがとうございます。
明日(16日)は下田港の暴れん坊、明後日(17日)は下町人情、
しあさって(18日)は漁火挽歌をやります」
センターを客席リクエストで若ちゃんがやることとなり、
東映剣会の方々を脇に。すがわらさんは身体能力が素晴らしいそうです。
若ちゃん「運動神経、すごいですよね。からだ、自由自在でしょ」
すがわらさん「かつらがなかったらね」
若ちゃん「預かりましょか」(爆笑)
ミックスジュース前があの綺麗な水色地に金色の懐中時計みたいな模様(無知な私を笑ってくれい)の衣装で、
若ちゃん「これ、分厚い生地でね、帯巻いたらまわしみたいになるねん。着物の生地じゃないものも、
増えたからね。まえにデニム生地のをいただいたんですけど、あれ、いっぱいつけられるからね。
正絹の着物じゃあ、ああはいかん」
若ちゃん「着物関係ではよう騙されるわ。一点ものです、と言われて、買ったら、
その店で一点ものやねん。全国にはぎょうさんあるねん」(笑)
若ちゃん「座長大会に行ったりしたら、3人くらい同じ柄の着物やったりするからね。
この生地は一反しかありません。たちか、すそひきの女形か、どっちにされますか?
すそひきやったら足りんやろと言うたら、もう一反あります、言うて、奥から出してくる。どないなってんねん」(爆笑)
おおお。
時間切れなので、もう少しだけ、の続きはのちほど。 すみません。
(続き)
若ちゃん「一点ものいうて買って、座長大会行ったら3人ぐらい同じ柄いるからね」(笑)
若ちゃん「前にね、成人式のニュースやってたけど、振袖レンタル150万やて!」(どよめき)
若ちゃん「レンタル150万やて。うちやったら1500円で貸したるのに(笑)
いや、なんでも1500円均一やと思われるな(笑)
でも、150万も出すんやったらうちにおいで。ファーついてたりするからもっと豪華にしてあげる」(笑)
などという成人式ネタ?(笑)がありました。
そして、そのあと、土日よりお客さん入ってるのんとちがう?などという話になり、
月曜から休んで、どんな仕事してるのん、と若ちゃん。
ローテーション職場なので、たまたま月ようが休みになってラッキーな人間がひとりいた、と
僻地より叫んでおきます(笑)
尊敬するともだちは雑誌編集にかかわっているのですが、
彼女はさすが大衆演劇の原作や映画にもとても詳しいです。
彼女、夜の部を観てくれたそうで、その感想をすこし紹介します。
>「関の弥太っぺ」は長谷川伸の原作から「映画」ではそこから脚色が加わっているので、
映画はハードボイルド色が強め、若丸版は映画をベースにされていて、まさに映像の生舞台化、
という未踏の挑戦だったと思います。映画だからできることを、舞台でやる!という凄まじさ。
うううう、そうなんですね!
この感想を聞いたら、レンタルして古い映画を観たいっ!という気持ちになります。
ともだちによれば、黄金期の素晴らしい名作を蘇らせた、とのこと。
そして私が思うに、数々の名作をひとりでも多くのひとに観てもらうには都若丸劇団!で
上演してもらうしかないじゃないかと! 声を大にして言いたい(笑)
通し狂言、見ごたえありましたよね。
ミニショーなくても、OKでしたよね。
そりゃあ、群舞が1、2、個人舞踊が1,2.何より若丸座長のミニショーラストがなくなるけど、
でもあんなに素晴らしいお芝居が観られるなら、
あんなに感動するのだから、これからも≪温故知新≫の任務を、日本一劇団が担ってほしいものだと思うのです。
新派のお芝居だって観たいですううう。
歌舞伎まで手を広げるのはちょっと違うかもしれないけど、いや、待てよ、
挑戦することが進歩を生むなら、まだまだまだまだ、若ちゃんには挑戦してもらいたいですよ。
今が最高、じゃないなら、それ以上の幸せはないです、今日、明日、と観にいくファンにとっては。
体力と時間があったら舞踊ショーのことも書きたいのですが、
あとは省略、ごめんなさい^^
ほんと、いろいろ間違ったり、勘違いしたりしてる部分もあると思いますし、
大雑把な性格なので(そして小心者)、行き届かない点が多々あると思います。
伏してお詫び申し上げます。
拙いブログを今回もたくさんの方に読んでいただいています。ありがとうございます、みなさん、お優しい。
長々のご高覧、感謝いたします。
初めまして。
コメント、ありがとうございます。
劇場ですれ違っていますよね、きっと。
身にあまるお言葉、
ありがとうございます。
時間配分できないあかんたれだと思うのですが、
遅くなってすみません。
体力も時間もないので、ブログ書き終わるころには凍んでますが(笑)、
アザミさんの優しいお言葉を励みに頑張ります。
今後ともよろしくお願いいたします。
これからも、拝読させて頂きます。
お仕事もされて大変お忙しいと思いますが、これからも、楽しまさせてくださいませ。