読書日記 嘉壽家堂 アネックス

読んだ本の感想を中心に、ひごろ思っていることをあれこれと綴っています。

家康 安部龍太郎 kindle版1~5 

2020-12-05 18:59:09 | 読んだ


「徳川家康」は、歴史上の人物の中で最も好きな人物の一人である。もう一人は「勝海舟」なので、徳川幕府の創設者と幕引きをした男が好きだという事になる。

徳川家康の生涯を描いた小説として、山岡荘八の「徳川家康」全26巻がある。
この物語を初めて読んだのが高校1年生の時だった。高校時代にはもう1回読んでいる。
社会人になってからは、月賦で文庫本を購入しこれも2回ほど読んでいる。

その山岡荘八版の家康に次いで、今回の安部龍太郎の「家康」が発表された。

読もうかどうか迷った。
若い時からの家康のイメージが大きく変わって描かれていたらイヤだな。というのがそのココロ。
多くの歴史小説、時代小説において家康は悪・負の象徴のように描かれている。
それはそれでいいのだが、今回は「主人公」なのである。

では、kindle版で試し読んでイヤだったらやめよう。
という結論に至り、読み始めた。

そうしたらなかなかに面白い。
続けざまに購入して、今の私にとっては相当に速いペースで読んだ。

厭離穢土 欣求浄土 (おんりえど ごんぐじょうど)
は、家康の「旗印」であり、この旗印を掲げて家康は戦い続けた。

山岡版においては「仏」へのかかわり方が、登場人物それぞれに描かれていた。
昔は「何かに縋る」あるいは「心の支えを求める」ということが生きていくうちで大切なことなんだなあ、と思ったものである。
それぞれの「仏」あるいは「神(キリスト教)」への関りが人生なのだなあ、と思ったものである。

これは安部版においても継承されている。
家康は「仏」を通して、他の人を観て理解する、そして自分の求めるもの、自分がなさなければならないことを悟っていく、そんなありさまが描かれている。

今回は「本能寺の変」までが描かれているが、この間の読みどころは「桶狭間の戦い」からの織田との同盟、今川との決別。領内の一向一揆、武田との闘い「三方ヶ原の戦い」「高天神城の戦い」、その間の「金ヶ崎の戦い」「姉川の合戦」などの戦に臨む家康の心境、あるいは嫡男・信康、妻・築山御前の死などにおける心の迷いである。

山岡版では読んでいる時が若かったからか、スパっと割り切れて解釈していたような気がする。
家康の心境を家康が語るのではなく、家臣などの考えや行動などから表現する方法であったことにもよると思うのだが。

安部版は、家康自身の考えを表している。苦渋と悔恨に基づく決断。Aタイプを選択しようにも、BやCタイプを選択しなければならなかったやりきれない人生を家康は生きている。

安部版では、信長の目指すものを家康が解釈し、その解釈のもとに、叡山焼き討ち、一向一揆との闘い、信康・築山御前事件を、飲み込み納得させている。
更に、これまでの歴史解釈とは違った解釈をしているので、読んでいて「どうなる、どうなる」とワクワク感がでてくる。

今のところ第5巻までしかkindle版では出ていないが、次が待ち遠しい。








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