「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「椿二輪」

2014-12-28 13:25:01 | 和歌

 虚庵夫人にせがまれ、椿二輪を庭木から切り取って、壺に無造作に投げ入れた。



 「うつろ庵」の庭の藪椿が咲いたので、ソファーに座りながら花蜜を吸いに来る小鳥の観賞が、この頃の虚庵夫妻の愉しみの一つだ。

 藪椿の樹形を鳥籠の様に剪定し、葉や花に取り囲まれた内側は、小鳥たちが自由に遊べるように可能な限り空間を拡げ、細かな枝をカットした。案の定小鳥たちは、鳥籠椿の内側にサッと飛び込み、花を選んで内側から身を乗り出して蜜を吸う。そのシグサが何とも可愛くて、小鳥たちの邪魔をしないようにそっと見守る虚庵夫妻だ。
しかしながら椿の花弁は忽ち傷つくので、観賞に堪えなくなるのは残念だ。

 「うつろ庵」のリビングとダイニングの西窓は、日除け代わりに珊瑚樹と椿を軒先まで伸ばして、木漏れ日を愉しんでいることは以前にもご紹介した。そんな西窓の下に、綻びかけた侘助椿を虚庵夫人が見つけて、「小鳥たちに傷つけられる前に、お部屋に飾りたいわ」とせがまれた。身を乗り出し、不安定な姿勢でカットして、壺に無造作に投げ入れた。活けて二・三日したら満開になって、応えて呉れた。

 明日の朝になってカーテンを開ければ、小鳥たちと再会出来るだろうが、彼・彼女らは目星を付けていた花が無くなっていて、「あれれ?」と戸惑うかもしれない。そんな姿を観るのも面白かろう。



           椿咲く冬に備えて鳥籠を

           椿の枝葉でしつらえ待つかな


           目ざとくも目白のつがいは花の咲く

           椿の鳥籠に花蜜吸うかな


           いと短くチッチ チッチと呼び交わす

           目白の番の鳴き声かそけき


           窓越しに椿の花蜜吸いに来る

           小鳥のしぐさを 愉しむじじ・ばば


           惜しむらくは椿の花弁の傷つくを

           「小鳥の勲章」と 痩せ我慢する


           綻びて未だ疵つかぬ侘助を

           お部屋に飾りたいと 妹子はせがみぬ