「虚庵居士のお遊び」

和歌・エッセー・フォート 心のときめきを

「うつろ庵の飛び石」

2012-02-23 00:09:02 | 和歌

 ごく狭い「うつろ庵」の庭の「飛び石」を、俄か庭師に変身した虚庵居士が、配置替えをした。無造作に飛び石を並べただけであったが、住人の加齢を考えれば、地表面からかなりの高さの「飛び石」は、危険であることに気が付いた。運動神経が衰えた老人が足を踏み外せば、間違いなしに転び、足首を挫いたり骨折の可能性すらあるのだ。そこで、飛び石を土中に埋めて、地表面との落差を無くそうと考えた。

 庭師に頼もうかとも考えたが、たかだが「飛び石」の高さ調整だと安易に考えたが、意外に大変だった。
 
 「飛び石」の高さ調整の序に、乱形の鉄平石と小石を組み合わせて、風趣を添えようかと考えた。頭で考えるだけなら、いとも簡単だ。庭師作業に取り掛かる前に、乱形の鉄平石の調達から始めた。鉄平石は、周辺が刃物の様に鋭利な状態ゆえ、この部分を掏り取ったものを探し求め、「飛び石」の周辺に、ごく大まかに鉄平石を並べて按配を観た。

 ほぼイメージ通りに納まりそうな状況を確認して、スコップを手に作業を開始したが、予想以上に時間が掛り、予定を大幅に延長せざるを得なかった。立て込んだ日程の合間を縫って、空いた短い時間を積み重ね、数日掛る見通しだ。

 更に難問が重なった。
この手の作業は、殆どが腰を屈めての作業になることを失念していた。元来、慢性的な腰痛持ちの虚庵居士は、ちょっと無理すればたちまち腰痛が復活する。案の定、初日の作業での腰痛には閉口した。短時間の作業だったが、夕食後にはマッサージ・チェアの按摩に思わず時間がとられた。それ以降、作業の合い間には腰痛体操を繰り返し、作業時間を細切れにせざるを得なかった。



 作業を終えて一両日後に、藪椿の根元のアガパンサスに真紅の花が咲いた。
アガパンサスの帯状の緑葉に、藪椿の落花が留まって、絶妙な景色を「飛び石」に添えて呉れた。
また翌日には、ごく小ぶりの白梅にメジロの番が飛び来て、花蜜を吸いつつ「飛び石」を愉しんでいるかの素振りであった。藪椿の落花もメジロの仕草も、「飛び石」とセットになって目に映るのは、俄か庭師の勝手な思い入れというものであろうか。




          ポケットに手をいれ庭の飛び石を

          伝う妹子の足元危うし


          ポケットから手を出しなさいと注意するに

          厳寒ゆえかポケット恋しは


          古希迎ふ妹子に怪我はさせまじく

          庭の飛び石 地面にせむかな


          年金の暮らしを思えばこの程度の

          庭師の作業は我が手で為さむと


          気が付けば腰の痛みはぶり返し

          疲れの程も予想を超えにし


          ふと見ればアガパンサスに藪椿の

          落花は石等にささやく気配ぞ


          お披露目を未だせぬ庭の初客に

          つがいの目白は寛ぎにけり


          メジロ二羽 飛び来て梅の花蜜を

          吸いつつ庭の風情を観るかな


          飛び石に趣添える花と鳥に

          癒されるかな俄か庭師は