玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

陰謀論とかダブルスタンダードとか

2009年03月06日 | 政治・外交
小沢氏と西松建設の政治献金問題について。
捜査中であり、そもそも私には法律のことも政界の裏事情も知らないので「誰が悪い」「いや悪くない」といった話をするつもりはない。
一般論として言えば、これが若手議員なら「秘書にぜんぶ任せてました、企業の迂回献金だなんて気付きませんでした」と弁解しても「そうかもね」と思うが、政治の裏も表も知り尽くし、カネの問題でとかくの噂のあるベテラン政治家が「知らなかった、気付かなかった」と言っても生暖かい気分になるばかりだ。とはいえ、これも見方しだいで「海千山千だからこそ本当に危ない橋は避けるはず」と言うことだってできる。本当のところはやっぱりわからない。


カネの問題とは別にして、事件の周りで騒いでいる人たちの浅はかさ見苦しさにはあきれる。
小沢氏秘書逮捕が明らかになった直後の、鳩山幹事長をはじめとする民主党幹部の発言。いきなり「国策捜査じゃないか」とか陰謀論を並べたのには唖然とした。
政治家としてどうこうという以前に、まともな社会人の言葉とは思えない。どこの会社でも団体でも、身内に捜査の手が伸びたときいきなり「陰謀の臭いが」なんて言い出したら正気を疑われるはずだ。民主党議員が小沢氏の無実を信じるのは結構だけど、責任ある立場にある政治家なら「何かの間違いではないか。小沢氏みずから潔白を証明すると信じる。党としても調査して国民の前に事実を明らかにする」くらいの無難なことを言っておくものだろう。「検察の横暴、国策捜査だ」とか「なぜこの時期に、陰謀の臭いが」とか騒ぐのは血気盛んな若手の役割で、幹部は本来なら「気持はわかるが根拠もなしに騒いではいけない」と抑える立場のはずだ。
ところが民主党では幹部が率先して陰謀論をたれながし、若手のほうがむしろ冷静に事態の推移を見ているようである。前から民主党っておかしな政党だと思っていたが、今回の騒ぎで単に「変」というよりも「非常識で不気味な」党だという恐怖さえ感じた。

仮に民主党幹部が冷静な姿を見せて、その一方で裏から手を回して評論家やコメンテーター(勝谷氏あたり)に陰謀論を叫ばせる、といった芸を見せてくれたら私も「民主党もなかなかやるね」と評価しただろう。ところが実際は党幹部がそろいもそろって「国策捜査ではないか」「なぜ今なのか、政治的意図を感じる」といったたわごとを並べるばかり。もうね、アホかとバカかと。本当にがっかりした。
テレビカメラの前で恥ずかしげもなく陰謀論を並べる鳩山幹事長の姿を見て、かの田母神元幕僚長を思い出してしまった。田母神氏の国会証人喚問のとき民主党の追及がどうもピント外れだと思ったけれど、陰謀論的発想への親和性という点で「似たもの同志」だったのかもしれない。そういえば国会を揺るがした「永田メール騒動」なんていうのもあった。そのときの主役の一人、前代表の前原氏が「国民に検察の在り方というものに疑義を持たれるような物の言い方は、一般論として、あまりすべきではないのではないか」と冷静さを見せたのが一抹の救いである。


小沢氏の資金問題についてはどこまでが合法的でどこからが「けしからんゾーン」なのか私にはよくわからないが、つまるところ昔ながらの「政治家とカネ」の問題であり、それぞれの人が一貫した基準で判断すべきことである。だが、正直言って私には小沢氏を擁護しようとする人たちの一貫性が信じられない。
民主党を支持し小沢氏を擁護するテレビのコメンテーターやブロガーの多くが「なぜこの時期に」「国策捜査じゃないか、陰謀の臭いがする」とはいうけれど、小沢氏と西松建設の「方法」自体についての判断、「政治とカネ」が一線を越える基準を明確にしていない。私が知りたいのは要するに、「自民党の政治家が小沢氏と同じやり方で資金集めしても『問題ない』と言えるのか」ということである。「小沢氏の行動には何の問題もない。もちろん、自民党の政治家が同じことをしても批判する気はない」と明言できる小沢擁護者はどれくらいいるだろう。たぶんほとんどいないんじゃなかろうか。一貫した基準のもとに「小沢氏の行動は問題ない」と言える人なら立場や考えの違いはあっても信頼できるが、「小沢氏がやるのはOK」「だけど自民党の政治家がやったら許せない」というダブルスタンダードは卑怯だ。
ちなみに、かの「世に倦む日日」テサロニケ大先生は「松岡利勝や赤城徳彦を批判する者は、同じ論理と立場で小沢一郎を批判しなければならないのが当然だろう。」と言っている。さすがの見識である。


逮捕された小沢氏の「現秘書」大久保氏ではなく「元秘書」の高橋氏がキーマンではないか、という話もある。

「西松」献金、元秘書の要求発端…小沢代表参考人聴取へ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
 小沢一郎・民主党代表の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件で、準大手ゼネコン「西松建設」(東京都)がダミーの政治団体を使うなどした一連の献金を始めたのは、逮捕された同会の会計責任者・大久保隆規容疑者(47)の前任者にあたる元秘書から、献金の要求を受けたことがきっかけだったことが、西松建設関係者の話で分かった。


留守番の備忘録:ひねもす国士サマ脳の検事と判事
この秘書というのは、高橋嘉信という人物で、ではいまは何をしているのかというと、自民党岩手第4区の支部長!なのでございます。つまり、このまま次の衆院選をやれば、小沢さんと真正面から戦う人な訳です。


仮に小沢氏が元秘書に「ハメられた」のだとしても、多少の同情は集まるだろうが小沢氏の評判が守られるわけではない。「(元)腹心に裏切られるなんて人徳がない」「人を見る目が疑われる」「総理になる資格があるのか」と批判されるのは間違いなく、小沢氏にとって「元秘書陰謀説」はメリットがない。小沢氏を擁護したい人はあまり言わないほうがいいと思う。どうせなら「国家権力(検察)に刺された」とか、「なりふりかまわない自民党の悪あがきだ」とか、「巨大な敵に立ち向かう小沢氏と民主党」という構図のほうがよほど絵になる。
いっそのこと「コミンテルンの陰謀だ」とか「CIAとユダヤ資本の(略)」と叫んでもいい。バカバカしさが突き抜けていて爽快である。


参考記事
 陰謀論 - おおやにき


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