酔夢ing Voice - 西村幸祐 -: 荒川静香選手のこと
荒川静香の消された日の丸ウイニングランのことが話題になってから大部時間が経過した。結論から言うと、今回はNHKが意図的に放送をしなかったという証拠がない。つまり、限りなく黒に近いというところだろう。
「意図的にやらなかったという証拠がない」ので「限りなく黒に近い」(=ほとんど黒といって間違いない)こんな主張が通るのであれば、永田議員も「武部幹事長の次男が金をもらっていないという証拠がない」だから「限りなく黒に近い」と言い逃れることが出来ただろう。
「ないことが証明できない」「だからあったはずだ」という論法は、いわゆる「悪魔の証明」を求めるものだ。
(追 記)
私がトラックバックを送った後、西村氏は「結論から言うと、今回は現時点でNHKが意図的に放送をしなかったという証拠がない。つまり、過去の例から言えば、限りなく黒に近いというところだろう。」と訂正された。この文章であれば私も納得できる。
「ジャーナリストが書いたとは思えない粗雑な文章」という西村氏への批判は取り下げることにする。
悪魔の証明 - Wikipedia
悪魔の証明(あくまのしょうめい)とは、モノ・行為の存在を巡って、「あること」に比較して「ないこと」を証明することが極めて困難であることを比喩する言葉である。
(中略)
「あることの証明」は、特定の「あること」を一例でも提示すれば済む。しかし、全称命題を対象にする「ないことの証明」は、全ての存在・可能性について「ないこと」を示さねばならない。すなわち、「ないことの証明」は「あることの証明」に比べ、困難である場合が多い(検証と反証の非対称性)。
このため、議論においては、「ある」と主張する側が、「ある」を証明すべきであると言われることがあり、このようなルールにも、一定の合理性があると言える。もちろん、現実の論争の場で、これは絶対的なルールではない。何故なら状況証拠を収集して、推論を導き出す事は有効であると社会的に認められているからである。
科学における証明は「ある」と主張する肯定側が負うべきとされている。したがって、「ある」が証明されなければ「ない」と見なされる。証明抜きで無限に発せられる荒唐無稽な主張に対して、否定する側が全ての可能性を反証しなければならないというのは不合理だからである。ただし、「ある」と主張する側が適切な理由を提示できる場合は、「可能性が極めて低いが完全には否定できない」「存在の可能性を考慮しても良い」などとされる場合もある。
だがその理由が「意図的にやらなかったという証拠がない」からだ、というのでは全くお話にならない。
そもそも「意図的にやらなかったという証拠」なる言葉からして意味不明だ。
もし私が運転中に事故を起こして、相手から「意図的にぶつけたのではないという証拠」を示せと要求されたらどうすればいいのだろう。私はその手段を思いつかない。仮に「スリップして」とか「オーディオの操作に気を取られて」とか「車の調子が悪くて」といった理由を挙げても、「そんなのはただの言い訳でしかない、早く『意図的にやったのではないという証拠』を見せろ」と言われそうだ。
西村氏はこのような言いがかりをつけられたとき、誰にとっても明白な「意図的にやらなかったという証拠」を示せるのだろうか?
こんな馬鹿げたことを書くくらいなら「確実な証拠は何もないが、『前科』からしてNHKは黒だと思う」とか「『テレビ関係者に聞いた限りでは、NHKの見解である「国際映像信号が途切れたから」という理由を一笑にふす人が多い』のでNHKの説明は信じられない」とか書いたほうがよほどマシであろう。少なくとも「悪魔の証明」を求める愚からは無縁だ。
西村氏がこの件についてどれほど取材したのかも疑問だ。
文中に書かれているのは「ウィニングラン未放映問題」が「多くのブログで語られ」たこと、「国会や都議会でも取り上げられた」こと、そして「テレビ関係者に聞いた」話だけである。有名なジャーナリストである西村氏がまさかこの程度の材料だけで「限りなく黒に近い」という「結論」を出したとは思わないが、残念ながら氏の文中からはそれ以上の取材が行われた形跡を読み取れない。
「ウィニングラン未放映問題」を早くから取り上げていた花岡信昭氏への取材はされたのだろうか。花岡氏はご自分のブログでこの問題を5回(+1回)にわたって書いておられる。
NHK批判の「落とし穴」
NHKの「偏向」批判を解析する
NHK「偏向批判」は的外れ・総括
まだ続くNHK「偏向」問題
「荒川日の丸ウイニングラン」疑念への報告
番外編 「ブログ世界」をめぐって反響が
「NHK『偏向批判』は的外れ・総括」以降のエントリで花岡氏は「TOBOの『PRODUCTION HANDBOOK』というペーパー」という物的証拠を入手して記事を書いている。西村氏は有名な保守系ジャーナリストなのだから、、同じく保守系ジャーナリストである花岡氏に頼んで「TOBOの『PRODUCTION HANDBOOK』」を見せてもらうとか、その他の取材の経緯についてもいろいろと話を聞くことが出来そうに思う。だが「荒川静香選手のこと」を読む限り、西村氏はそのような取材をしていないようだ。
もし何らかの事情で花岡氏に取材することが不可能だったとしても、西村氏は花岡氏の結論(「NHK『偏向批判』は的外れ」)とは正反対の考え(「限りなく黒に近い」)をお持ちなのだから、トラックバックを送って「異論」の存在を知らせるべきであったろう。お二人ともブログで書いているのにトラックバック機能を使わないのはもったいない。花岡氏は自らを批判するコメントやトラックバックを(私の知るかぎり)削除していないので、西村氏の異論が消されることはないはずである。
西村氏の異論に花岡氏が応え、さらに西村氏が反論し…といった意見の応酬が起きれば、「ウィニングラン未放映問題」の真実に向けてより近く迫れたはずである。
西村幸祐氏が
ただ、さっき西村氏のブログを読みにいったら、追記で文章を下記のように訂正していましたので、お知らせに書きこみさせていただきました。
「結論から言うと、今回は現時点でNHKが意図的に放送をしなかったという証拠がない。つまり、過去の例から言えば、限りなく黒に近いというところだろう。」
小生は日頃の西村氏を支持する立場ですが,件の文章は確かに論理的に変ですね.最初は黒と白を勘違いされたのかとも思いましたが,”過去の例から言えば”と仰ってますので,それも当てはまらないですしね.
ウィニングラン問題については党派性を剥き出しにしてしまった我々,条件反射組の分がかなり低いようです.あれから情報はまず,冷静に噛み砕いてから判断するように出来るだけ心掛けております.
ただ,現に映像がある以上,特集等でもう少し長目に放送してくれたらとは思います.
教えていただきましてありがとうございます。
こちらも対応して文章を訂正しました。
>kousotsudrさん
私は「ウィニングラン問題」では結果的にNHKを擁護するような形になりましたが、別にNHKに利害関係や恩義があるわけではないので批判すべきときには遠慮せず批判するつもりです。
鳴り物入りでスタートした新番組、ニュースウォッチ9と@ヒューマンの出来の悪さにはだんだん怒りが溜まってきました。最初の五回くらいは温かい目で見ようと思ってましたがどうも良くなる気配がありません。私の好きだったニュース10(特に鎌倉さん)を返せ!と言いたいです。
わざわざコメントありがとうございます。
私自身はウィニングラン事件の真相について確証を持っているわけではないので、てっくさんのところで見られるビデオやNHKの発表、そしてジャーナリストの方の取材を元にいろいろ考えることしかできません。
西村氏の結論が「偏向があった」というのならそれはそれでいいのですが、どうも氏の文章を読んでいると充分な取材がなされていないようなのが気になります。失礼なことを言わせていただくと、花岡さんが「NHK批判の「落とし穴」」でNHK職員の話をそのまま伝えて「偏向は無かった」とした(そして多くの反発を受けた)ときと同じような「軽い」文章のように思います。
もし西村氏がご自分の説に自信があるのなら、花岡さんを論破するような勢いを見せてほしいのです。
「偏向はあった」と考える西村氏と「変更はなかった」とされる花岡さんが対話をすれば、きっと読者にとって有益な情報や新しいものの見方が出てくるはずです。なんといってもお二人はプロのジャーナリストであり、情報を扱う専門家なのですから。
(荒川選手の日の丸の旗をまとったウイニングランの放映について)あきまへんわ・・私はTBSに友人が居りますから、この問題に関してご貴殿が今、ご説明されたこともう1週間以上前に知り、激しくNHKを叩き捲くってるウヨク掲示板に投稿して、その真相を説明しても聞く耳を持ちません。
私は民放メディア各局が、あの憎っくきNHKを何故に叩かないのは、それを叩く公の理屈が無いからなのだよ・・・と、条理を尽くして説明しても鼻から受けつけようとはせずに、ただ、ただ、NHKを悪者にすることに目が血走っている。
そりゃ私も説明しましたよ・・・NHKも国際放映権の他に独自のカメラにて、荒川選手の控室や家族応援団の放映をやってるから、まだまだ時間は充分にあったから、表彰式までは国際放映権利だったかもしれないが、この後にNHKカメラにての ウイニングランのシーンをバンバンと日本国内に送ればよかった。まあ、それを望む愛国者のために、サービス精神に徹すればよかった。 現地のNHKスタッフの「まあいいや」との軽い判断のサービスミスだろうとの説明はしましたよ・・・。
そんな、意識してNHKがこれを削除したとの、確信犯人的論調は行き過ぎではないか?とね。
だが、反日NHKを庇う私は「売国であり、国賊であり 在日コリアの工作員」の烙印を押されました。知足さん、私も家族・友人からは今までウヨク人間と呼ばれておりましたが、どうも最近は、このウヨク学校を卒業してサヨク学校に転校したみたいらしいですね。
私は思うね・・・最近のウヨクは少しおかしいと思う。あの幕末の天誅に似てきた感じがする。「つくる会」の内紛、ウヨク陣営の最近の世相に影響されたかもしれませんね・・・
だが、何かヘンだな・・ちょっと異常な感じがする今日この頃です。 昔なら騒がれなかったNHK問題、何故にそうも大騒ぎとなるのだろう・・どうもわからん。いや、気持ちがわるい。 》
これは私の掲示板での「荒川選手の日の丸の旗をまとったウイニングランの放映について」という記事に寄せられた「九段坂の信号」さんによるコメントです。
http://bbs1.parks.jp/29/hirokuri/bbs.cgi?Action=Res&Mode=Tree&Base=359&Fx=2
これに対して私は「何かに追い詰められているような」と題して、次のように応じた。
http://bbs1.parks.jp/29/hirokuri/bbs.cgi?Action=Res&Mode=Tree&Base=363&Fx=3
九段坂の信号さん
>あきまへんわ・・私はTBSに友人が居りますから、この問題に関してご貴殿が今、ご説明されたこともう1週間以上前に知り、激しくNHKを叩く捲くってるウヨク掲示板に投稿して、その真相を説明しても聞く耳を持ちません。
そういう人は「つくる会」や日本会議には多いですね。いや、そういう人ばっかりのようです。そういう人達と一緒にされたくない人のことは考えてくれません。
>だが、反日NHKを庇う私は「売国であり、国賊であり 在日コリアの工作員」の烙印を押さえられました。知足さん、私も家族・友人からは今までウヨク人間と呼ばれておりましたが、どうも最近は、このウヨク学校を卒業してサヨク学校に転校したみたいらしいですね。
私は学内や愛媛新聞からは右と思われているが、そのうち、右の団体からは左と思われることでしょう。
>私は思うね・・・最近のウヨクは少しおかいいと思う。あの幕末の天誅に似てきた感じがする。「つくる会」の内紛、ウヨク陣営の最近の世相に影響されたかもしれませんね・・・
皇室や国旗の問題となると一寸、狂信的になりますね。何かに追い詰められているような心境なのかも知れません。
ウィニングラン事件はやむをえない事情だったとしても、NHKには他にも変なことがたくさんありますから、視聴者はどんどん文句を言ったほうがいいですね。
私がブログを書いてるのはただの遊びですが、どんな遊びもある程度真剣にやったほうが楽しいです。
>知足さん
コメントありがとうございます。
ですが、超長文・しかもコピペのコメントは正直に申し上げて歓迎できません。
トラックバックしていただくほうがありがたいです。
時間的な経緯から貴兄がそのように思われたのは当然です。ですが、ブログをやっている身としては甚だ問題なのですが、実はトラックバックやコメント欄に目を通せいないことが多いのです。
特に私のブログは読者の方や多くのブロガーのハブ機能を果たそうという目的も強いので、忙しさにかまけてコメントやトラックバックを全てチェックできないのが現状です。決していいことだとは思わないのですが、物理的な時間の制約があるのでどうしようもありません。本エントリーの内容も、たままたメールで教えてくれた人がいたため分かった次第です。
ただ、事実関係を明らかにしておいた方がいいのでコメントした次第です。
今後とも、よろしくお願いします。
訂正の事情は了解いたしました。
「批判を受けたから」ではなく、西村さんご自分が「~しなかったという証拠がない。つまり、限りなく黒に近い」という文章はよろしくないとお考えになったことをうれしく思います。一般人ブロガーならまだしも、事実を追及する「ジャーナリスト」としてふさわしい文章ではありません。そういう言い方を認めると、朝日の本田記者や永田議員(彼はジャーナリストではありませんけど)のようなやりかたもアリになってしまいますから。