玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

実験無用

2007年12月10日 | 日々思うことなど
嫌だ嫌だと言いながらもう一度書く。
いやよいやよも好きのうち、ということは絶対にない。

 ケンタッキーと「ゴキブリの言葉」
 「真実味」と「真実」

KFCの風評被害について、「ゴキブリフライ」を実験すべきだという意見があちこちで見受けられる。
実験すれば少年の最初の証言の真偽が分かると思うのだろう。
私は断然反対する。不愉快であり無意味だ。

不愉快であることはほとんどの方が同意していただけるだろう。
生きたゴキブリを捕まえて高温の油で揚げる、なんてことを楽しんでやる人は滅多にいないはずだ。

だが、残念ながら実験が無意味であることはなかなかわかってもらえない。
「無意味」と書いたけれど正確には「予想される成果は少ない」「ほとんど無意味」である。
実行すれば僅かな情報は得られるが「KFCゴキフライ事件」の真偽に決着がつくことは期待できない。

なぜそう言い切れるのか。
前にも書いたように、元バイト少年の「告白」に秘密の暴露はない。ちょっと想像力を使えば簡単に書ける内容だ(なにしろ三行しかない)。

 「ゴキブリって油で揚げてもなかなか死なない」
 「死んだかと思って出すと動きだす」
 「衣つけて圧力かけて揚げたら死んだ」

これらの描写を満たす実験を行うのは簡単だ。油の温度を下げればいい。
100度にすればいいのか、それとも50度に下げる必要があるのか、そこら辺のところは分からないが。
そういう実験をして、さて何が分かるのかと言えば、何もない。
特定の結果が得られるような実験をして、予想通りの結果が出た。得られる情報はほぼゼロだ。
「ゴキブリフライは可能であることが明らかになった」が、それは最初から分かっていることだ。問題なのは物理的に可能かどうかではなく、少年の「告白」の信憑性である。

KFCのフライヤーで設定されている温度の油に入れたけれど、少年の描写と同じように「なかなか死なない」場合はどうか。
そのときは「告白」の信憑性が高まる。とはいえ、秘密の暴露と言えるほどの意外な情報ではない。「事件」が事実である可能性がいくらか高まるけれど決定的なものではない。
少年もKFCも事件の存在を否定している。それを突き崩すほどの強力な証拠能力はない。

次は油に入れられたゴキブリが即死した場合。
指が入れられるくらいの低温まで下げ、それでも即死するとしたら予想を超えていて驚く。
だが元バイト少年は「低温でも即死する」とは書いていない。そこに秘密の暴露はない。

高温で即死するのであれば完全に予想の範囲内だ。シロイさんの記事にも合う。
その場合、「告白」は信用できないことが確認されるだけだ。
事実だとすると「元バイト少年が粉飾して『なかなか死なない』と嘘を書いた」ことになり、事実でないとすると「そもそもゴキフライなどやらずに嘘を書いた」ことになる。
そのどちらなのか、実験は真偽を見分ける役には立たない。

明白な結論が得られるとしたら、誰にも予想できないような驚くべき結果が出たときだけだ。
それこそ「油に入れたゴキブリが巨大化する」とか「美しい緑色に変わりオレンジの匂いが立ち上る」とか。
この場合は「こんな驚くべき結果を見逃すはずがない」「軽薄な元バイト少年が『こんな凄いものを見たぞ』と自慢しないはずがない(mixiの書き込み自体が悪事自慢である)」のだから、少年はゴキブリを揚げなかった、事件は無かったと断言してもいいだろう。

はたして実験を行って驚くべき結果が出るだろうか。
やってみなければわからない、という人もいるだろうが、まぐれを期待して悪趣味な実験をする意味はないと思う。
KFCのフライヤーではないけれど、ゴキブリの油揚げは毎日行われている。東南アジアあたりでは昆虫をフライにして食用にするのは珍しくない。

タイ旅行(タイに行く) その2【昆虫】

そんな僕を恐怖のどん底に落としいれた、本日のメニューをご紹介しましょうかね。

・ イモムシの素炒め(体長3センチ~6センチくらいでコロコロしてます)
・ セミの丸揚げ(見事に繊細な羽まで残して揚げてある。体長5センチほど)
・ 蛾のフライ(揚げても色が変わらないので見た目は生のようです。これが一番でかい)
・ ゴキブリフライ(ちょっと大きめのゴキブリです。カラッカラに揚げてあります。)
・ タガメのフライ(青黒い色ででかいです。一応日本では天然記念物だよね?)
・ タマムシの丸上げ(揚げられてもピカピカしてつやがあります。)

以上6点でございます。

昆虫料理を楽しむ : 195 ゴキブリ4種の素揚げ

ゴキブリを揚げても特筆すべき変化はしないらしい。普通に揚げられて普通の昆虫フライになるようだ。日本のゴキブリと種類が違う可能性はあるが、そんなに大きな差はないだろう。



まとめると、

 ・ どうせたいした結果は出ない
 ・ 恣意的な実験結果で世論を誘導する手合いが出る可能性
 ・ わざわざやらなくてもゴキブリフライはあちこちで行われている

油の無駄、エネルギーの無駄、命の無駄。
バカバカしいから実験などやってはいけない。


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3 コメント

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そもそも (通りすがりの人)
2007-12-11 00:43:54
生きたゴキブリを捕獲するのは至難の技だと思う。
新聞紙で叩いて殺すことすら、ゴキブリの俊敏な動作の前にはかなりの高等技術を要するのに。
仮にゴキブリを無傷で捕獲する技術を持っていたとしても、ただの悪戯のためだけにそんな気持ちの悪い事を実行する人間もいないかと思う。
それに衣をつけて揚げるためには・・・素手でゴキブリを掴んで衣をまぶすしかないのではないか??
(生きたゴキブリは箸なんぞでは捕まえるのは不可能かと)

個人的には全くの作り話か、仮に事実としても、偶然ゴキブリが油の中に飛び込んだ様を目撃したのを誇張した、程度の事だと推測している。
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Unknown (ヤモ)
2007-12-11 03:14:34
検証目的で実験したがっている人はそんなに居ないんじゃない?
実験に伴うショッキングな映像に興味があるだけで。

実体験、これも命の無駄といわれるかも知れないけれど、家では70℃程度の熱湯で駆除してますよ。
コップ一杯の熱湯をかけたら即死するような昆虫だから、漬け込めば暴れる間もなく停止するんじゃないかな。
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私もゴキブリはどちらかというと苦手ですが (安部奈亮)
2007-12-13 17:09:46
 ゴキブリ自体はそんなに汚くはないんですよね。排泄物とかにはたからないし、ゴキブリって昆虫の中では意外とグルメで変な物は食わない。

 ゴミを片づけないと増えるから、連想が逆流して、ゴキブリが出たから汚いと人間の頭ではなってしまうのかもしれません。

 ゴキブリを食べるネズミなんかが現れ出すと危険ですが、こっちは病原菌を持ち込みますし、糞はまき散らすし。

 アブラムシと呼ばれるくらいだから、多少の油は自分が分泌する油のコーティングで弾くんじゃないでしょうか。有機化学は詳しくないのでよく分からんが。
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