玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

東国原英夫の野望 天翔記

2009年07月14日 | 政治・外交
人気に押し上げられ、人気におごり、人気を失って出馬断念。
「人気者政治」のはかなさと危うさを象徴するような騒ぎだった。

asahi.com(朝日新聞社):東国原知事、国政転身「非常に厳しい状況」 - 政治
 自民党から次期衆院選への出馬を要請されている宮崎県の東国原英夫知事は13日、衆院の解散が目前に迫る中、自身が同党に突きつけた「総裁候補」などの条件が受け入れられるかどうかは「非常に厳しい状況」と明言した。ただし、最終決断については「後援会と相談して決めたい」と述べるにとどめた。県庁で記者団に答えた。

 東国原氏は「知事なのに国政とか、総理ポストなどけしからんとの声は粛々と受け止めないといけない」と述べるとともに、10日夜にタレント時代の師匠であるビートたけし氏から出馬断念を忠告されたことについては「重く受け止める」と語った。

 一方、自民党宮崎県連の米良政美幹事長は都議選での同党の敗因の一つに東国原氏の出馬騒動が挙げられていることについて「自民党がなめられた感じがしないでもない。ちょっと言い過ぎでないかなと。全国に迷惑をかけた」と述べた。福岡市で開かれた九州ブロック緊急幹事長会議終了後、記者団に語った。東国原氏の出馬については「もうないでしょ。出ない方がいい。本人も意欲なくしたんじゃないの」と冷淡だった。

東国原知事:師匠たけしさんの「宮崎に帰れ」を「重く受け止めたい」 - 毎日jp(毎日新聞)
asahi.com(朝日新聞社):「東国原氏擁立問題を引責か」 古賀氏支援者ら見方示す - 政治

とりあえずお疲れさまでした。ご本人も自民党も国民も誰も得しない無駄な騒ぎだったと思うけれど。
東国原氏と自民党について何も言うことはない。私が言わなくても、マスコミやネットでさんざん批判されている。東国原氏と古賀氏(と東国原擁立に動いた人たち)はしっかり反省してください。

終わってみれば何もかも茶番としか思えないが、まかり間違えば本当に東国原氏の人気が盛り上がり「自民党総裁候補として選挙を戦う」可能性もあった。それというのもマスコミが、特に政治報道のプロとされている人たちが東国原氏の野望を見くびり、政治的能力を過大評価して好意的に伝えていたからだ。
実例を挙げて見ていこう。

東国原知事への出馬要請は 何への布石なのか? | 時評コラム | nikkei BPnet 〈日経BPネット〉
 東国原知事や橋下知事が、自民党から衆議院選挙に出るわけがない。
(中略)
 私は、彼は絶対に受けないだろうが、「橋下大臣」なんてこともあり得るだろうと思っている。「東国原大臣」だってあるかもしれない。彼らは衆議院議員としてではなく、むしろ大臣として、内閣改造の“目玉”になり得る。

その後の経緯を見れば、自民党(古賀氏)の「出したい、担ぎたい気持」よりも東国原氏の「俺を出せ、俺を担げ」という野望のほうがずっと大きかったのは誰の目にも明らかだ。

牧太郎の大きな声では言えないが…:男は度胸!の政治学 - 毎日jp(毎日新聞)
 「その情熱、今の自民党にない新しいエネルギーが欲しい」と口説かれて「自民党は私を次期総裁候補として戦う覚悟がありますか?」と切り返した宮崎県の東国原英夫知事。なかなかの役者である。

 「一番の高値」で自分を売り込もうとする魂胆。見上げたもんだよ、屋根屋のフンドシ! 度胸が良い。
(中略)
 「顔を洗って出直せ!」との声もあるけど、世間は前代未聞の「天下盗(と)り宣言」を楽しんでいる。政治に対する不信が極限まで広がって、世間は(“お笑い”でもいいから)「維新前夜」が見たい。

度胸はよくても三流役者。一世一代の晴れ舞台のつもりが観客の罵声を浴びてほうほうの態で閉幕とは無残である。

近聞遠見:日向の国からミサイル=岩見隆夫 - 毎日jp(毎日新聞)
 なにしろ、人気者とはいえ、九州の一知事が、出馬条件として、

 「私を次の自民党総裁候補として、衆院選を戦うご覚悟があるのか」

 と前代未聞の爆弾発言をしたのだ。麻生をオレに代えろ、と要求している。

 爆風にさらされた自民党内から、とっさに、あほらしい、ジョークだろ、顔を洗ってこい、などの反応が出たのは無理もない。スポーツ紙がいっせいに、

 <自民、なめられた>

 の大見出しを立てたのもわからないではない。だが、いずれもマトをはずれていた。

 とりわけ見当違いだったのは、民放テレビのコメンテーターたちだ。図々(ずうずう)しい、ただの中央志向、国民をバカにしている、情けない、こっけい、高く売りつけている、などなど、否定的、感情的発言で占められていた。

 東国原ショックの爆弾効果を評価するコメントがまるでない。テレビ政治の危うさを改めて印象づけることになった。
(中略)
いま、<東国原首相>が実現するとは思えないが、もし実現すれば、自民党は変わった、と国民は実感する。そのレベルのことを断行しろ、と東国原は迫っているのではないか。

東国原氏自身の資質については目をつぶり、「爆弾効果」とやらを褒めそやす。「テレビ政治の危うさ」を語る岩見氏のほうがずっと危なっかしい。

東国原と橋下自民を食う - 雑誌記事:@niftyニュース
鳩山邦夫前総務相の辞任騒動で揺れた数日後。東国原英夫宮崎県知事は友人らを誘い、県内で夕食をともにした。肌に生気なく、疲れきった様子の知事は政治の話はほとんどせず、ひたすら昔話に花を咲かせた。

「とにかく、癒しを求めている様子だったようだ」(県政界関係者)

 知事を悩ませていたのは、県議会対策でもホームシックでもない。鳩山騒動の前後から続いていた、自民党による国政転出の誘いをどう断るかだった。

 国政への意欲は知事就任時からとはいえ、宮崎1区の中山成彬前国交相が引退を表明した際に国政転出騒動が起こってからというもの、県政への意欲は明らかに衰えたと周囲は見ていた。

「最近、知事は議会とケンカもしない。淡々としていて表情の変化がとぼしくなった」(親知事派の若手県議)

 心はすでに宮崎にあらず、と誰もが思う状況での、今回の立候補要請は渡りに船のはず。ところが、知事には昨年の転出騒動の逆風がいまだに心に残っていたようだ。

「マニフェストを掲げて当選しながら、1期も務めないのはおかしいでしょう」(元側近)

もう笑うしかない、完全な読み違い。東国原氏のむき出しの野望がぜんぜん見えていなかった。実際のところ「渡りに舟」とばかりに出馬の誘いに飛びついた東国原氏の心はすっかり東京に飛んでいた。

知事の責任 - 社説 - miyanichi e press
■「1年半プラーっと」■

 国政転身に反対と答える人の多くが「知事として県政発展に貢献を」と今後へ期待をこめている。だが、それは期待薄のようだ。

 先日の政治資金パーティーで知事は、「(国政に)行くなと言うんだったら行かない。1年半プラーっとさせてもらう」などと発言。また、「(2010年度の)予算編成して来年2月に議会に示し、採決されれば事実上、僕の仕事は終わり」とも述べている。

 知事の下で働く多くの県職員がこの言葉に憤り、やるせなさを覚えただろう。無責任な発言だ。

 もう心、宮崎にあらずか。ならば県民が無理に知事に任期まっとうをお願いする意味はない。

宮崎の地元紙のほうが全国紙の政治記者よりよほどクールに見ている。

東国原ヨイショの極めつけは内閣改造のときの新聞辞令だ。

麻生首相:東国原知事の入閣で調整 分権改革担当を検討 - 毎日jp(毎日新聞)
 麻生太郎首相が閣僚人事で、次期衆院選に自民党公認候補として擁立を打診している東国原英夫宮崎県知事を入閣させる方向で検討していることが6月30日分かった。(中略)衆院選に向け、国民的な人気の高い東国原氏を自民党の「選挙の顔」にすることで、民主党に対抗するのが狙い。

全く検討していない-首相 東国原知事の入閣問題 - 47NEWS(よんななニュース)
 麻生太郎首相は1日、閣僚補充人事で東国原英夫宮崎県知事の入閣を検討したのかとの記者団の質問に対し「全くない。なかった」と明確に否定した。

 河村建夫官房長官も記者会見で「検討の中でもそういうことはなかった。閣僚の補充はこれでおしまいだ」と述べた。

東国原氏を「国民的な人気の高い」と断言した毎日新聞は現在の逆風をまったく予想できなかったようだ。「国民的な人気が高いとされる」とか伝聞の形にしておけばまだしも言い訳できたものを。


東国原氏自身は、政治的能力も人望もない、いや「無い」と言い切ってしまうと語弊もあるが、自民党総裁や総理の椅子を狙うにはまったく力不足の人物である。あるのはバラエティー番組が作り上げた安っぽい人気ばかり。そんな東国原氏でもマスコミが気に入って押し上げればかなりのところまで行く。しかも、ワイドショーの無責任なコメンテーターばかりではなく、名の知れた大物ジャーナリストまでが面白がって「人気者」を持ち上げる。「小泉劇場」を反省したはずのマスコミだが、東国原氏のような際物をもてはやして踊っているようではどうしようもない。いや、むしろ劣化している。
いよいよ衆院解散と総選挙の日程が固まったようで、「政権交代論」が大いにもてはやされるのだろうが私はぜんぜん興味がもてない。政権交代それ自体には特に反対しないけれど、「政権交代論ブーム」「政権交代煽り」には近づきたくもない。


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2 コメント

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Unknown (優木まおみファン)
2009-07-14 20:49:25
都議選の結果を受けていよいよ政局が面白くなってきました。
政策に関する議論がやや置き去りにされてるようなのが残念ですが。
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Unknown (タカダ)
2009-07-14 22:04:09
 そうですね。「県知事の責務は政党の党首に匹敵する」といって、だんまりを決め込んでいれば、今後、大きく売り込むチャンスが来たんですがね。自らニンジンに飛びつくようではお里が知れますな。
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