どうして笑えようか。
未来を約束された貴方達と。
敷かれた道を見ることができる貴方達と。
笑えない。どうして笑えようか。
私は全てを失うことを約束されたのである。
貴方達は未来の道を示され、約束されたのである。
どうして私が笑えようか。笑わなくてはならないのか。
貴方達と。
どうして笑うことを強制するのか。
今更私をどうしようと。
明日には、いや、私が視界から消えたその瞬間から
私のことなど雨粒ほども、いや、霧粒ほども感じない、
記憶に残らないくせに。
そうか、最後に私を辱めたいのか。
これ以上なく、みじめな姿を
さらして指差して、ゲラゲラ笑いたいのか。
哀れでみじめで、愚かで醜くくて、自分達の優越を誇れる為に
そんなに私を奈落よりも深い底に落としたいのか。
他者をいたぶることで、なぜそんなに自分の存在を確認しなければならないのか。
そんなに己の存在は己にとって稀薄なのか。なんと哀れな。
今日も私はいたぶられた。みじめな姿をよりみじめに見えるように晒された。
私が無になればいいのである。こんな風に感じるから私の心は痛いのだ。
無になれば、何もみじめなことも痛いこともない。
あの笑っていた人達など知るものか。霧になって消えることもできない。
私は霧になる。そして再び雨となって落ちる。
無となって霧となって、雨になって川に落ち下る。
大海に出るのは怖いから、そして未来永劫霧となる。
無になるのだ。
一緒に笑う必要などない。
分かってはいるけれども。
それでも私はまだ心があるから。
痛くて痛くてたまらない心があるから。
無になりたくて、なれなくて悔しくて
一緒に笑えなくて笑いたくなくて辱められ。
今更何を。
こんな小さな虫さえもどうにかしたいのか人間は。
未来の道を約束された人間と
未来を全て失った人間と
相容れることはない。
未来永劫。
たとえ最後の一人になっても。