一度挫折しかけた「現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ」であるが、どうにか読み終えることができた。6月から読み始めてほぼ3ヶ月。今月のブログ記事投稿が極端に少ないのもこの本に没頭していたからだ。
上巻は3章構成なのだが、第2章までの理解度は90%、第3章については60%というところだろう。第2章の途中でいったん挫折しかけたが、最初から読み直すことでどうにかついていけたようだ。
量子力学の初歩を終えた中級者向けの本である。ベルの不等式や「量子の絡み合い」など比較的新しい話題を含んだ教科書で、難しいながらも興味持続できるのがいいところだ。
本全体の解説を1つの記事にまとめることも僕にはできないので、裏表紙に書かれている紹介文によって本書の内容を察していただきたい。
明日から下巻に取り組むことにしよう。
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紹介文
本書は、誕生以来60余年さらに豊かさを増していく量子力学の核心を現代的立場からいきいきと描いたものである。
シュレーディンガー方程式も、微分演算子も本書では与えられた仮定ではない。全ては明確に提示された基礎概念から、極めて自然に導き出せる。
一方、最近の実験技術の成果である重力による中性子干渉やアハラノフ・ボーム効果の検証、さらに磁気単極子といった話題は、ゲージ変換の視点から統一的に語られる。ファインマンの経路積分の解説、ならびに観測問題をめぐるアインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックスやベルの不等式についての丁寧な説明も、類書には見られない特色である。
UCLAでの多年の講義に基づく本書のおもしろさは、量子論の初歩を学んだ読者なら容易に体得できよう。
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現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ:目次
第1章:基礎概念
- シュテルン・ゲルラッハの実験
- ケット、ブラおよび演算子
- 基底ケットと行列表現
- 測定、観測量および不確定関係
- 基底の変更
- 位置、運動量および平行移動
- 位置空間および運動量空間における波動関数
第2章:量子ダイナミックス
- 時間的発展とシュレーディンガー方程式
- シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示
- 調和振動子
- シュレーディンガーの波動方程式
- プロパゲーターとファインマンの経路積分
- ポテンシャルとゲージ変換
第3章:角運動量の理論
- 回転および角運動量の交換関係
- スピン 1/2 の系と有限回転
- O(3)、SU(3)およびオイラーの回転
- 密度演算子ならびに純粋アンサンブルと混合アンサンブル
- 角運動量の固有値と固有状態
- 軌道角運動量
- 角運動量の合成
- 角運動量を表わすシュウィンガーの振動子モデル
- スピン相関の測定とベルの不等式
- テンソル演算子
付録
A:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本解の要約
B:角運動量の合成則 - 不等式(3.7.38)の証明
下巻の主要内容
第4章:量子力学における対称性
第5章:近似法
第6章:同一種類の粒子
第7章:散乱理論
「現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ」
「現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ」
「演習現代の量子力学―J.J.サクライの問題解説」
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2014年4月に追記:
上巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2015年6月に追記:
下巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2019年11月に追記:
演習書の第2版が刊行された。
「演習 現代の量子力学 第2版」
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2022年5月に追記:
上巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2023年6月に追記:
下巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
英語版は2020年9月に第3版が刊行された。
「Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版)
関連記事:
初版と第2版の違いは次の記事を参照していただきたい。
発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/798f43e65b60d75143ee875bccc1be69
上巻は3章構成なのだが、第2章までの理解度は90%、第3章については60%というところだろう。第2章の途中でいったん挫折しかけたが、最初から読み直すことでどうにかついていけたようだ。
量子力学の初歩を終えた中級者向けの本である。ベルの不等式や「量子の絡み合い」など比較的新しい話題を含んだ教科書で、難しいながらも興味持続できるのがいいところだ。
本全体の解説を1つの記事にまとめることも僕にはできないので、裏表紙に書かれている紹介文によって本書の内容を察していただきたい。
明日から下巻に取り組むことにしよう。
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紹介文
本書は、誕生以来60余年さらに豊かさを増していく量子力学の核心を現代的立場からいきいきと描いたものである。
シュレーディンガー方程式も、微分演算子も本書では与えられた仮定ではない。全ては明確に提示された基礎概念から、極めて自然に導き出せる。
一方、最近の実験技術の成果である重力による中性子干渉やアハラノフ・ボーム効果の検証、さらに磁気単極子といった話題は、ゲージ変換の視点から統一的に語られる。ファインマンの経路積分の解説、ならびに観測問題をめぐるアインシュタイン・ポドルスキー・ローゼンのパラドックスやベルの不等式についての丁寧な説明も、類書には見られない特色である。
UCLAでの多年の講義に基づく本書のおもしろさは、量子論の初歩を学んだ読者なら容易に体得できよう。
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現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ:目次
第1章:基礎概念
- シュテルン・ゲルラッハの実験
- ケット、ブラおよび演算子
- 基底ケットと行列表現
- 測定、観測量および不確定関係
- 基底の変更
- 位置、運動量および平行移動
- 位置空間および運動量空間における波動関数
第2章:量子ダイナミックス
- 時間的発展とシュレーディンガー方程式
- シュレーディンガー表示とハイゼンベルク表示
- 調和振動子
- シュレーディンガーの波動方程式
- プロパゲーターとファインマンの経路積分
- ポテンシャルとゲージ変換
第3章:角運動量の理論
- 回転および角運動量の交換関係
- スピン 1/2 の系と有限回転
- O(3)、SU(3)およびオイラーの回転
- 密度演算子ならびに純粋アンサンブルと混合アンサンブル
- 角運動量の固有値と固有状態
- 軌道角運動量
- 角運動量の合成
- 角運動量を表わすシュウィンガーの振動子モデル
- スピン相関の測定とベルの不等式
- テンソル演算子
付録
A:シュレーディンガーの波動方程式 - 基本解の要約
B:角運動量の合成則 - 不等式(3.7.38)の証明
下巻の主要内容
第4章:量子力学における対称性
第5章:近似法
第6章:同一種類の粒子
第7章:散乱理論
「現代の量子力学〈上〉J.J.サクライ」
「現代の量子力学〈下〉J.J.サクライ」
「演習現代の量子力学―J.J.サクライの問題解説」
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2014年4月に追記:
上巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2015年6月に追記:
下巻の第2版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第2版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2019年11月に追記:
演習書の第2版が刊行された。
「演習 現代の量子力学 第2版」
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2022年5月に追記:
上巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(上) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
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2023年6月に追記:
下巻の第3版が刊行された。
「現代の量子力学(下) 第3版:J.J.Sakurai, Jim Napolitano」
英語版は2020年9月に第3版が刊行された。
「Modern Quantum Mechanics 3rd Edition: J.J.Sakurai, Jim J.Napolitano」(Kindle版)
関連記事:
初版と第2版の違いは次の記事を参照していただきたい。
発売情報:現代の量子力学(上) (下) 第2版:J.J. サクライ, J. ナポリターノ
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/798f43e65b60d75143ee875bccc1be69
理解度はいまいちでしたが、読んだ甲斐が確かにありました。それでも第3章の「クレプシュ・ゴルダン係数」のあたりはちんぷんかんぷんでしたが。。
ブラ・ケットの演算方法にも慣れることができてよかったです。この教科書は文章でも丁寧に説明されているので独学にも向いていると思いました。こんなにすっきりと(こじつけのように)記号操作できる形で量子の世界は成り立っているものなのかと思った局面が何度もありました。
僕の場合、目標は素粒子物理学や超ひも理論そして量子テレポーテーションまで理解できればいいなぁ、という漠然としたものです。論文や本を書こうとか研究主体の生活しようとかいう気持ちはありません。量子テレポーテーションの理論については自分の理解の到達可能範囲であることが最近わかってきました。超ひも理論までたどりつけなくても、それに至る過程で興味深い分野や考え方はたくさんころがっているようですし楽しみながら「山登り」できそうです。
前回コメントいただいたときにアトムさんのブログにコメント返ししようと思ったのですが、禁止ワード設定にひっかかってしまい何度ためしてもだめでした。変な言葉つかってなかったのですけどね。(笑)円周率のことをお書きになっていたので世界記録更新のニュースのことをコメントしようとしたのでした。
以前アトムさんが記事で紹介されていた田崎先生の熱力学の教科書を昨日買ってきました。熱力学については入門書レベルのは2冊読みましたが本格的なのははじめてです。ページをめくってみると内容が濃そうですね。楽しみです。
僕らのような趣味を持つ者にとってシルバーウィークはありがたいですね。充実した休暇をお過ごしください。
物理学から数学に漂流していますが、現在難破中で出発地点にも戻れていません。
英語版のペーパーバックが破格の値段で入手できるので、貧乏で暇のある私は英語で数学と格闘中です。ペンロースの「The Road to Reality」がかなりすごいです。
現代の量子力学に対する洋書は、Modern Quantum Mechanicsに相当します。
コメントいただきありがとうございます。「Advanced Quantum Mechanics」は歯が立たなかったとしても「Modern Quantum Mechanics」のほうであれば、お読みになってもきっと得るものがあると思いますよ。でも今は数学のほうに強く関心をお持ちになっているのですね。
とおりすがりさん
教えていただきありがとうございます。「Advanced~」の内容は知らなかったのでありがたかったです。
角運動量の数学は学生の頃にやったきりであまり教えなかったので、もう忘れてしまったかな。忘れてはいけないのですが。
多分、裳華房の大学演習「量子力学」の角運動量の章のベクトル・モデルがわかれば、いいと思います。Clebsh-Gordon係数等は必要があれば計算はしますが。
もっとも角運動量のことがわからないと量子力学はわかったとはいえないでしょうか。
長年のお勤めお疲れさまでした!僕は会社員ですが、定年まであと18年ほどあります。
大学時代は数学専攻でしたので量子力学はおろか物理学は概論のような授業を1つ学んだだけでした。工学部での量子力学では角運動量のところは教えることが少ないというわけなのですね。自分で量子力学の教科書を勉強しながら、これを1年間の講義で教えるのだったら、だいぶ端折らなければならないだろうなと想像していました。
ご紹介いただいた裳華房の大学演習「量子力学」を確認してみます。どうもありがとうございました。
この JJサクライ先生の本は僕にとってだいぶ背伸びしたものとなりました。その後、猪木・川合先生の教科書と江沢洋先生の教科書を入手いたしました。今現在の自分は「統計力学ブーム」なので、これが終わったらまた量子力学に戻ってこようと思っています。プリンキピアも買ってしまったので、これはいつ読むことになるのやら。(笑)
学生の頃は広くいろいろな科目を学ばなければいけませんので、ひとつの分野に割ける時間が自然と少なくなります。けれども独学ということなら僕のように普通の頭(?)の人間でも、ひとつの教科書に集中できますのでより深い理解が得られるのではと「へぇ!すごい!」とか「はぁ。なるほどー。」とか思いながら学んでいます。
独学の場合、誰も教えてくれる人がいませんから、読んでいて理解度が30%を切るようならばあっさりとその本はあきらめて、別の本に乗り換えるようにしています。
完ぺき主義者でなく大雑把な性格なのでこのようなやり方で継続できているのですね。
それはそうと統計力学を勉強されるとはまたすごいですね。頭のいい方だと再確認を致しております。私は統計力学はきちんと勉強することがなかったです。もちろん、ちょろちょろとは何回か試みましたが。
先のコメントが舌足らずだったので、補足します。角運動量で難しいところは「角運動量の合成」の部分だと思います。それを学ぶのにはベクトルモデルを学べばいいのではないかということでした。
もちろん、角運動量の合成の中にはClebsch-Gordan係数を求めることも入っています。ですが、ベクトルモデルがわかれば、量子力学の計算を実際にするようなことでもなければ、十分だろうと思います。
吉川圭二先生の「群と表現」はまだ読んでいないながらも持っていました。読むべき本が溜まっています。(笑)
超ひも理論など最先端の物理学まで理解できるようになればいいなと、無謀な試みで物理学の勉強をはじめました。どの分野も大切そうに思えたので片っ端から読んでいるところです。まだまだ学部生レベルの知識しかないと思いますが、最近はそれぞれの分野の境界で物理法則が矛盾無く成り立っていることを見るとき素晴らしいものだなと感じています。
「角運動量の合成」の理解についても補足をありがとうございます。理解するということと「使えるレベル」あるいは「自分で計算を進められるレベル」などの違いはわかっても、自分にとってどこまで深く学べば満足するのかまだわかっていない段階です。おそらく知識や理解はジグソーパズルのピースを埋めていくように増えていくと思いますので焦らず、理解できないことに対するストレスを忘れて、理解できたことの喜びを推進力にして勉強を進めていきたいと思っています。
もしこれが仕事や宿題、学生のときの勉強のような義務だったとしたら僕の場合、性格的に途中でやめてしまっていると思います。趣味としての勉強なので義務感はなく、自分のペースで進められるから楽しく進められるのだと思います。