この2日ばかりちょっとした話題となっているのが、BS放送の番組表に東京の放送の一覧表が出ていること。残念ながらわたしの手元の機材では同様の確認が出来ていませんのでここまで書いてなかったのですが、どうやら試験放送が始まっているようですね。
地デジ難視対策衛星放送について(Dpa)
もっとも、B-CASカードなどで選別して受信者を区別する形式、それも受付はこれからということなので、視聴できる家庭は無いと思いますけどね。試験放送くらい視聴させればいいと思いますけどね。
それにしても、いよいよ虱潰しの段階に入ってきたと宣言してもいいのでしょうか? それほど最近のテレビ業界は鼻息が荒いです。
JEITA、2010年1月の電子機器国内出荷を発表
-6カ月連続のプラス。薄型TVは76%増/BDは58%増
今さらこの話だけで引っかかる人はいないと思いますが、あくまで"出荷台数"です、販売台数ではありません。
ただし、その販売台数ならぬ普及台数も
2009年10月、182万台
2009年11月、229万台
2009年12月、357万台
2010年1月、172万台
と、あくまで日本放送協会の発表ですが、驚異的な普及台数の発表をみせています。この4ヶ月ほどが極端に良かっただけだとしても、さらに実は「販売台数を普及台数として発表しているだけだよ」だったとしても、さすがにこれだけの数が売れたということはウソではないでしょうから、少なく見積もっても一年間で1500万台、普及率も実数で13%程度の増加は確実と思われます。おそらく60%は超えたでしょう。勢いにのって、次の段階へ行こうとするのは確実です。
ただ、此度の難視聴対策の衛星放送を始めることで、「最初から地上波はやめて衛星放送にしておけば中継基地も要らないし、全国一斉にデジタル放送を始められたはず、個人負担のアンテナ代だって安くすんだ」という議論が持ち上がるのは確実です。もちろんマスコミは総力を挙げてこの意見を葬り去るでしょうが、今回の難視聴対策放送が2015年3月までの時限措置であることから、その近辺では再び論争、あるいは第二の地上デジタル放送への移行問題が持ち上がることは確実です。衛星放送で東京の放送が見られることに慣れた人は、わざわざ通販と地元宣伝番組だらけの地方放送に戻ることを由としないでしょう。考えて見ましょう。東京の放送でいつも見ている連続番組がいいところで今週は終わり、でも来週からは東京の放送は見られません。地元の同系列の放送だけです。楽しみにしていた番組の時間にチャンネルを合わせても、やっているのは通販か地元の商店街や催しを紹介する番組に差し替え。こんな状況に耐えられます? そもそもわたしが録画道にはまり込んだのも、東京に在住だったころ見られた番組の続きが地方に引っ込んで見られなくなったことから、ケーブルテレビを引き込んだのがキッカケでした。もっとも、それでも全部の番組を見られたわけではないし、実はまだ続きがみたいと引きずっているのも2~3本あったりしてます。
それはさておき、何より、衛星放送で"東京の"放送を見られるようにすることで一時しのぎをするというのは、完全に地方局の否定です。今までテレビは"情報源として必要"だから、国の政策としてデジタル放送の移行が行われています。また、地方局は"地元の情報源として必要だから"としてきました。同じ系列の東京の放送が見られればそれで当面は大丈夫ということは、テレビの地元情報は必ずしもなくてもいいとDpaは認めたということに等しいと言えます。なにせ、東京の放送には、ローカルニュースはもちろん緊急速報も入りませんから。別に字幕をスーパーインポーズしてその地区向けだけに緊急ニュースを割り込む手段を用意する手もありますが、それが出来るのなら、現在やっているテロップを放送に埋め込むやり方は意味が無いわけで。大体ローカルニュースをかかさず視ているような人は、新聞も購読しているでしょうから、そっちで十分です。おそらく、情報の封殺ではすまないほど、将来はもめるでしょう。ごく稀にローカル局で面白い番組が作られることもありますが、それは例外中の例外で、あったとしてもそのまたほとんどが、上層部の判断で地元宣伝番組にリニューアルさせられて終わってしまうのがオチです。
もちろん、報道のためという意味で地方に系列局を置く意味はキー局にとってはあるわけですが、それだけなら現在ほどの人員は必要ありません。大手新聞社が地方に情報収集用の支局を置くように、キー局に情報を届ける支局になる手もあります。
それでも、イヤ、地元に密着した放送局が必要だというのなら、大都市圏のUHF局のように独立したローカル局を作ればいいわけですし。
キー局の番組と言っても、一番視聴率の高いゴールデンタイムの番組の質は低下する一方。最近はひな壇バラエティでも予算が多すぎると考えているのか、すっかり東京近辺のお店を訪ねるお手軽グルメ番組が増えてしまいました。ほとんど毎日、どこかの局が必ずやっていますが、そんなもん視ても、地方人にはどうしようもありません。地方は紹介されても温泉宿がせいぜいです。だからこそ、裏番組にローカル局が地元のグルメを紹介する番組とかをぶつける意義もあると思うのです、現在のように時間帯を避けるのではなく。うまく編成すればキー局の人気を超えることも夢ではないでしょう。やり方次第です。
考えれば考えるほど地上デジタル放送は、新しい時代を切り開く形態ではなく、従来の体制のより強い保持と、利権の入れ込みが目的の放送になっています。そのため、無茶苦茶な形態になり、マニアはもちろん一般の国民からも批判の対象となってきました。それを、ことごとく理論を摩り替えることでごまかし続けてきています。
・"こぴぃわんす"とかいう自由な録画を阻害する措置のおかげで、録画した番組をまともに編集することも出来なければ互換性の高い形態として保存することも、コピーを繰り返してバックアップを取ることも出来ないのはおかしい。
→"こぴぃわんす"のおかげで移動に失敗した時に取り返しが付かなくなった。
→移動回数だけ増やせば万事解決。回数はキリのいいところで10回とするダビ10にしておけばあとはどうにでもごまかせるだろ。あ、ついでに「アナログは無制限」と言っておけ。
・なぜ無料放送しかない地上波でスクランブル放送がかけられ、B-CASカードとかいうのが無いと受信できないのか。本来有料放送を管理するためのカードだろう。結局それを常に通されることにより、B-CASが巨大な利権の温床になっているのではないか。
→B-CASカードが大きすぎる。
→miniB-CASカードを導入することで万事解決。
・B-CASの審査があるおかげで安いテレビやレコーダーのメーカーの市場参入が抑えられ、リビング向けの大型テレビばかり。小型のものは値段が高くて手が出ないし、大型のものも絶対的な値段で言えば高い。需要にこたえられるラインナップになっていない。
→金の無いやつは高価なテレビが買えない。
→低価格の簡易チューナーを作るよう、メーカーをせっつくことでOK。
と、このように批判のごく一部だけに焦点を当てることでごまかし続けてきました。実は、今回も次の段階に入ったというより
・それでも、実際の普及率の伸びでは、間に合わないのではないか。そもそももうテレビ、あるいは地上波放送など必要ないと思っている家庭が増えているのでは。何よりも時間が無さ過ぎる。
→普及率が伸びないのは、電波が全部の家庭に行き渡っていないからだ。
→衛星放送で、系列局があるキー局の放送だけ受信できるようにして、時間を稼ごう。
という、従来どおりの理論のすり替え、先送りパターンではないかと疑っています。少なくとも、将来の騒動の種を撒いたことは間違いないでしょうね。