録画人間の末路 -

人は記録をしながらじゃないと生きていけない

カルチャー・クラッシュ・カウントダウン

2010-07-25 23:00:04 | B-CAS&規制撤廃運動
本当は昨日書こうと思っていた話ですが、一応報道の様子を見てから、ということにしたので本日になりました。

昨日、2010年7月24日はアナログ停波日一年前になる日で、前から計画されていた通り、銀座でパレードなど、総務省の手動のもの各テレビ局も総力を上げてお祭り騒ぎがなされたようです。

地デジカ大作戦:完全移行まで1年 草なぎ剛ら銀座をパレード

さらには昨日の各放送局、特に日本放送協会はしつこいほど移行推進番組を放送、中にはほとんどドキュメタリー番組並の質で仕上げたものもあり、正直食傷気味でした。
と、それだけテレビ局側が盛り上げようと一所懸命だったにもかかわらず、相方の新聞側の態度は非常に冷ややか。読売・朝日・産経と新聞を三部も買って調べたのですが、どこも比較的軽い扱いでした。

読売・・・25日 記事、3面のみだが、社説・広告以外の部分をすべて使い、扱いは大きめ。パレードは写真のみ。記事の中身は
・珠洲市の先行停波 「完全移行に向けて、珠洲地区を視察に訪れた自治体は一か所もないという。」
・アンテナ工事集中の懸念も 「関東地区は、地デジ未対応の集合住宅48万5000棟のうち41万棟が集中しており(中略)「これ以上、仕事が集中したら対応は難しい」」
・アナログ延長 地方局に負担 「ランニングコストだけでも年5000万~6000万の負担になる」
など
・24日記事 地デジ移行まであと1年、完全実施へ対応本格化

朝日・・・7面の一部のみ使用、内容はほぼ珠洲市の先行移行のみ。 「全国規模で同じような周知活動や支援を行うのは難しい。(中略)電器店の各戸訪問も「都市部で家電量販店にやってもらうわけにはいかない」」
・24日記事にも目立ったものは無し。23日で告知済みだから?

産経・・・3面の広告スペースを除く半分を使用。記事は半分が"パレード"とビル陰による受信障害(詳しい説明はなし)、残り半分は珠洲市の先行停波だが"順調"と言いたいだけ。 こちらにすでに掲載済み。
・24日記事 他社が静観するなか、なぜかイベントを大々的に取り上げている。
 地デジ移行1年前で関係者らが「決意イベント」を都内で開催


と、まぁこのような感じで、総務省と違ってマスコミにとっては一年前というのは基本どうでもいいようです。去年も同じようなこと書いたっけ。
ただ、この数日の報道を気をつけてみていたのですが、予想通り「地デジの問題点」として取り上げられていたのは共同住宅の難視聴地域問題のみ。それは総務省の見解と完全に一致するものであり、なんの提案にもなっていません。まるで足並みを揃えたかのようです。そして、地上デジタル放送の本当の問題点に関してはとうとう一切触れることはありませんでした。

地上デジタル放送の問題点は、アナログ放送の利点を残していない点にあります。難視聴地域の問題はあと一年では間に合わなくても時間をかければいつかは解決する問題ですが、わたしらから見る本当の問題点は、放送の提供側が意図的にできないようにしたものばかりなのです。羅列すると

1.録画を規制し、個人に放送を残すことをさせない。できても光メディアから再度のダビングを許さないため、数年しかもたない。10年後にはほぼ壊滅している
2.無料放送にもかかわらず、緊急の災害放送以外すべての番組にスクランブルを掛けている
3.2を人質に1を守らないメーカーにB-CASカードを発行しないことで、一部の権利者が決めた自分ルールを他者に強制出来る特殊な構造
4.そのB-CASカードの発行元がただの民間会社に過ぎず、発行料などを中堅摂取でせしめ、巨大な利権と化している
5.同時に厳しいルールを適用することで低価格販売の海外メーカーを事実上遮断している。特にレコーダーは海外メーカー製が存在せず、テレビもごくわずかなメーカーが発売しているに過ぎないなど、国内メーカー保護のための関税になっている
6.一般人に対して自由を認めない放送形態にも関わらず、著作権管理団体が自分たちの収入の保護と拡大のため、「文化保護のため」「損害をうけている」「損害はないというのならば、損害が出ていないという証拠を出せ」と録画保証金を設置し、かつ無制限の拡大を目論んでいる。逆らうものはすべて「犯罪者」あつかい
7.デジタル放送は電波の届く範囲が狭いUHF波を使うため、アナログ時代には視聴できた越県番組の視聴ができない。それを地元放送局はむしろ歓迎しており、改善する気がない
8.せっかく用意した機能がほとんど生かされていない。マルチ編成は民放の「視聴率絶対主義」に反するため行われず、双方向サービスもアンケートだけ。文字を別に送信出来るインポーズ機能も滅多に使われず、災害情報などは画面に直接埋めこまれている
9.圧縮したデータを一度デコードしてから映像にしているため、数秒のタイムラグが生ずる。特に災害情報において数秒遅れは大きな問題となる可能性があるが、結局放置されている。8のインポーズ機能を使えば改善の可能性はあるが、やる気配がない。他の項目と違ってアナログ停波後改善の可能性は少しある

等々・・・これ以外にもありますし、もう常識ですからわざわざ書くほどのものでもないかも知れませんが、ここらで整理しておくのもよかろうと思いまして。
日本人は世界でも有数・おそらくダントツの録画好きと思われます。なぜ録画が好きなのか? それは「残したい」と思う気持ちを、過去から現在にいたるまでずっと持ち続けている民族だからではないでしょうか。文化の保存・文化の継承。方式や形は変わっても、残すことに常に高い関心を持ち続けるのが、日本の文化の歴史です。それ自体ひとつの立派な文化だとわたしは思います。言うならば、保存は文化だし、録画はその最先端なのです。
ところが、自称文化人たちは「文化とは自分たちの生み出すものだ」と言い出しました。"Culture First/カルチャーファースト ~はじめに文化ありき~"というWEBサイトが存在しますが、中身は開けてびっくり、ただの録画保証金請求サイトです。一度御覧ください。どこかで見たことのある著名人の「文化は自分だ。金寄こせ」寄稿文がたくさん読めます。中にはあきらかに趣旨を分かっていない人もいますけど・・・。カルチャーファースト、聞こえは抜群にいい言葉ですからね。ちなみに2009年11月で更新が止まっているのもさすがだと思います。
ですが、我々庶民文化はどうなるのでしょうか? 先にも書きました通り、わたしは録画は文化だ、と確信しています。上記サイトの団体は、完全に庶民文化を否定しました。このままでは録画・保存というひとつの文化は崩壊します。いまのまま、規制と利権の塊である地上デジタル放送に完全移行は終われば、必ずや自由な録画保存は犯罪行為と定義されるでしょう。デジタル完全移行への最後の一年、カウントダウンは文化崩壊のカウントダウン、カルチャー・クラッシュ・カウントダウンなのです。略してCCCDです。

最後の一年となりました。わたしはアナログからデジタルへの移行を否定することはありません。むしろ本来は便利になるわけですから、手放しで歓迎したいところです。わたしが否定しているのは「現在の欠陥だらけ、それも意図的な欠陥ばかりの地上デジタル放送およびBSデジタル放送」を当然のものとし、それを保護したまま移行することなのです。おそらく移行が終われば、新聞などは待ってましたとばかり欠点を暴露し始めるでしょうが、すでに遅しとなります。「遅すぎなのが分かっているから」欠陥を指摘してくるのではないか、と予想しているのです。そんなデジタル放送の欠陥、修正の可能性があるとしたら、今だけです。そのためならば、アナログ停波の延期も対策のひとつとして当然挙げられるわけです。果たしてどんな結末を迎えるのか、分かっているのは今のままのデジタル放送では日本の民放放送界は確実に崩壊するということだけですが、それでも出来ることだけでも全部やったうえで見守っていきたいと考えています。

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14 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-07-26 07:37:22
さすがに地元紙や地元TVでも特集はしていましたが、チューナー無料配布や3000世帯(だったかな)の高齢者住宅への戸別訪問とかやってようやくって感じでした。
移行拒否(ラジオでおk)が少数。

珠洲市はでかい建物がないので難視聴対策のはなしはほぼなし。そこそこ大きい建物がある金沢市の難視聴対策はあまり進んでないみたい。
ちなみに石川県の普及率84%ちょいって・・・
珠洲市含めてか?
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Unknown (容堂)
2010-07-26 08:36:26
珠洲市のアナログテレビ放送がついにダークサイド(砂嵐)へと葬り去られ、他の地区でも移行まであと1年を切りましたが、どう考えてもスケジュール通りにはいきそうに感じられないですね。

最大の受信者数を誇る東京タワーからの受信者が、2012年の春頃にアナ禁・スカイツリーへの移行に伴って再度アンテナ調整を迫られることや、
他の地区においても中継局の開設がギリギリになっているため工事が間に合わないなど様々な瑕疵が見られるにも拘らず、このまま強行すれば
地デジを見れない世帯は携帯でワン=セグ・テレービだけが頼りというお粗末極まりない事態に直面する家庭が出てくることも充分想定されるわけですが、
ダース・シディダス(指示出す)こと小沢一郎の下僕でダークサイドに堕ちた原口総務大臣にはいまさら何を言っても無駄なのでしょう。

1年後に現東京タワーがいよいよダークサイドに追いやられるとされるとき、果たしてすんなり停波できるのか、それともアナ禁・スカイツリーへの移行のため、移行に伴うアンテナ調整
のための特別期間としてしばらくアナログ放送を残すのか、はたまた現東京タワーと同時デジタル放送発射による超SFN状態で乗り切るのか、
先行きの見通しは極めて悪いと言わざるを得ない。

どうなることやら・・・
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Unknown (高速落下中)
2010-07-26 10:08:33
>光メディアから再度のダビングを許さないため

私的録画(録音)保証金もヤですね。
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Unknown (aetos)
2010-07-26 11:23:07
例の怪しい団体のデモは参加しませんでした。
というのも、22日、23日と仕事の都合で家に帰れず漫画喫茶で過ごしており、さすがに24日は家でゴロゴロしたいと…すいません、どうでもいい事情ですね。

あの団体は政治団体で、普段はナチスとかの勉強会ばっかりやってるのですが、mixiに「地デジ勉強会とかやってみたいかも」と書いてきたので、ひょっとしたら何かやるかも…
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Unknown (emanon)
2010-07-27 20:55:36
 え~…、一番上のリンクからして何か重大発表のようなw

総務省によると、地デジ対応受信機の世帯普及率は3月時点で約83・8%と高率。だが、都心部での電波受信が難しい「ビル陰」の対応の遅れなどが深刻なため、受信機を保有しながら視聴できない世帯は5・3%もあり、全国で約22%にあたる約1100万世帯が未対応の状況だ。

何かやっちゃったて感じですねw
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Unknown (Unknown)
2010-07-27 21:15:13
BSカードでスクランブルするなら
NHKも見る見ないを選択出来るように
すれば、少しは評価したんだけどね
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Unknown (krmmk3)
2010-07-27 23:39:21
>2010-07-26 07:37:22さん
珠洲市な高い建物が少ないのにケーブルテレビ完備、既加入者多数なうえ、街としての規模も小さいなど好条件が揃っていたから選ばれたのであって、仮想日本ではありませんでしたから、あまり参考にはならないようです。金沢みたいな規模の大きいところの方が本当は大変みたいで。普及率は、当然珠洲市込、かつ水増しありでしょうね。

>容堂さん
総務省としてスカイツリー問題を事実上無視しているのは、2011年7月24日に関係ないからですよ。2012年になって見られない人が何百万人でようとも、2011年7月24日に普及率100%だ! って宣言出来ればそれで仕事は終わりなんです。あとは他の人の仕事ですから、どうでもいいのでしょう。

>高速落下中さん
ギブアンドテイク、って言葉を知らない人たちですからね、録画保証金くれって言っている連中は。

>aetosさん
参加見合わせですか。でも、やっぱり少し怪しいですから、しょうがないですね。

>emanonさん
対応機の普及率とデジタル放送そのものの普及は別みたいです。もちろん、数字の高くなる方が優先なんでしょう。

>2010-07-27 21:15:13さん
日本放送協会の視聴に関してはノーコメントにしますが、BSの「ちゃんと見たけりゃ個人情報寄こせ」テロップよりはマシです。アレ、ARIBの規定違反ですし。
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Unknown (TRZ)
2010-07-28 21:00:31
珠洲市はケーブルテレビ普及率ほぼ100%に加えて、海を挟んだ富山県・新潟県の電波を受信できるという非常に好条件と地域みたいですね。

いまだにスピルオーバーのアナログ放送を観ている人もいるんじゃないのかな?1年後、先行して完全デジタル化しているはずの珠洲市でテレビが観られないなんて苦情が出る事も十分あり得ると思いますよ。
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Unknown (フリオ・イグレシアス)
2010-08-01 07:52:53
産経新聞に地デジの記事がありました。
http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100731/biz1007312046008-n1.htm
珠洲地区は当てにならんそうで...
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Unknown (krmmk3)
2010-08-02 00:43:34
>フリオ・イグレシアスさん
珠洲市は決して「仮想日本」ではなく、「スムーズな移行のイメージ」としてのみの目的で選ばれた地区ですから、アテにならなくて当然ですね。一説には富山や新潟の地上波が届くらしいですし、それほど困らないのでしょう。
この記事も例の記者会見を取り上げてますが、発表された普及率に疑問を呈している部分を無視していますね。
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