地球の裏からまじめな話~頑張れ日本

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貸し株(借株)に関して

2005-09-07 05:14:36 | 正しい金融知識
みなさん、コメント欄を拝見しても分かるとおり、貸し株市場に対する興味が非常にあるようだ。
現在私が在籍している会社はそれに対する取り組みがもう一つなのであるが、かつて在籍していた某日系証券会社は非常に積極的であったので、良くお話を伺うチャンスがあったのだが、それも少々疎遠になっている。
しかしながら前にご紹介したように、ある業界系の記者氏とかなり懇意になれたので、その方から結構お話を伺う機会が増えたので、今後ともアップデートをお送りしたいと思う。
今日はその記者氏がかつて書かれた記事を転載させていただく。
記事自体は2002年の暮れに書かれたものであるので若干古いが、その頃の現状が分かれば、現在の傾向を知る上では多少なりとも役立つと思われる。
今度私の会社でもその取り組みを強化していくようなので、その辺のアップデートもあれば逐次ご紹介したい。
まずはご覧あれ~~・・

『株式市場が右肩上りでなくなり低迷が長引けば長引くほど“運用パフォーマンス”に対する意識が強くなっている。貸株市場における株の貸し手と借り手。いずれの事情もここに繋がるようだ。生保や年金の信託口などは従来から株の貸し手として重要な役割を果たしているが、超低金利の膠着状態が長く続く中、「在庫株を活用し、少しでもフィー収入を得て運用のパフォーマンスを上げたい」(市場関係者)というニーズは根強い。一方で借り手の層も拡大していくことが予想される。これは今後、ロング&ショートなど「オルタナティブ投資を積極的に採り入れようとする国内の機関投資家が増える」(米系ハウス)と見込まれるため。これを見据えて、先ずは日本における貸株市場の現状を探ってみた。

貸株市場にはいわゆる“取引所”が存在せず、全て相対での取引となる。このため、市場規模を示す正確な数値はない。日本証券業協会は週次、月次ベースで貸借取引残高を集計している。これによると現在4兆円ほどの残高。同協会が公表するこの数字は、あくまでも会員証券会社からの申告ベースによるもので、銀行、ブローカー間、東京ブック以外の取引などは含まれていない。これでは市場規模の実態を正確に反映しているとは言えないが、2000年には2兆円だった残高が翌2001年は3兆円と、現在までの数字の推移から市場規模が着実に増えている傾向は掴める。一部の市場関係者の間では、日本における貸株の取引額は「およそ6~7兆円」(米系ハウス)と見る向きや、一方で「10~15兆円ほど」(欧州系ハウス)との推測もある。

現状の貸株市場は、フェイルカバーによる少額の借入ニーズは「日常茶飯事」(市場筋)で、取引される銘柄も幅広い。一方、まとまったロットで貸株が取引される主な背景は、「CBディーラーによる現株とCBとの裁定であったり、ヘッジファンド筋によるロング&ショート、リスク・アービトラージなどから生じるものが多い」(同)。1銘柄の取引で数十億円もの引き合いが見られる日もあるようだ。

基本的には、日証協が定める貸借銘柄に選定されていない銘柄についても貸し手さえ存在すれば調達は可能。当然ながら、流動性が高く貸株が多く存在する銘柄と、そうでない銘柄とでは、その貸借手数料(フィー・レート)に大きな差が出てくる。一般的に、「インデックスに採用されているような銘柄であれば、生保や年金など大口の安定保有先から問題なく調達できる」(日系トレーダー)が、貸株市場における流動性が著しく低い銘柄にニーズが出た場合、フィーは大きく跳ね上がることになる。例えば、ソフトバンクやドン・キホーテなど「オーナー持分が高いもの」(市場筋)や、ジャスダックや東証マザーズといった新興市場に上場する銘柄などにその傾向が見られるようだ。

フィー・レートは需給を映し出すインディケーターである。通常であれば「平均的なところで10~50bp程度」(市場筋)のようだ。ところが、“噂で売って、事実で買う”というのがトレーディングの常。特定銘柄のCB起債や株式の公募・売出、M&Aなどが一旦噂として貸株市場に流れ出ると、「平時であれば25bp程度であったフィーが、一気に300bpまで跳ね上がることもある」(日系トレーダー)。過去に「2000bpものレベルにまで達したこともある」(同)という。昨年の暮れから今年の初めにかけて「こういった事象がよく見られた」(同)との指摘も聞かれる。
CBによる起債の可否は貸株の流動性如何で決まるとも言われるが、噂が先行し発行体の正式発表時に貸株の手当てが全くつかないといった状態になることもあり得る。
ちなみにこのレートが元のレベルへ収斂するのに「2~3週間もかかる場合もある」(欧州系ハウス)。

貸株市場において、生保や年金といった貸し手の構図に大きな変化はないのだが、
元々議決権を保持したい生保は期越えでの貸出に消極的。しかし、借り手のニーズは返済期日を特定しないオープン・エンドが主体。そのため、「生保による貸出は若干ではあるが年々縮小傾向にある」(日系トレーダー)という。その減少幅を埋めるようにして、今後は「オフショアのペンション・ファンドや国内の公募投信、オンライン証券を通じた個人の持ち株が貸株市場に流通する」(市場筋)と見られる。』
~~~

非常に綿密に市場関係者の意見を拾って出来た記事であると思いませんか?
MPOにおいてよく見られるようになった、オーナーからの貸し株契約なんて言う発想自体はこの頃から徐々に芽生えてきたと思う。また2003年、2004年と発行市場においてのユーロ円CBやアルパイン円CBの起債額も相当に増えたので、貸し株市場の規模はこの記事の書かれた当時よりさらに拡大しているのは間違いないだろう。2005年は少々起債もシュリンク気味ではあるが。

コメント欄でもちらりと触れたが、特に小型株においては「借りた者勝ち」の印象が強い。日立だ東芝だというような巨大銘柄と言うのは記事にも書かれている通り何処にでもジャブジャブあるので、余り問題にはならないが、小型株だと一見簡単そうに見える株でも貸し株を探すとなると相当な苦労を要するものが多々ある。
一度借りてしまえば、今度はそれを又貸しする、と言うビジネスも徐々に発達して来ており、その辺を制覇するには如何にコンタクトチャネルを幅広く持っているか、が勝敗の分かれ目になる。

ちなみに余り一般的には関係ないが、この貸し借り株、期末が面倒くさいのである。
特に大手機関投資家からの借株と言うのは、彼らは期末で一旦名義変更をするので、一時的に返却しなければならない。9月末、3月末、と言うのはこの辺に絡んだ動きが大きく出てくる。
通常「期」をまたいで貸してくれる所は余り無いのだね。
また、借株の中には「Callable(コーラブル)」とか「Any Time Call」なんていわれるものがある。これは貸し手が突然Callを掛けて借り手に「返せ」と言える権利が付いるものを言う。
仮にこのコーラブルを借りてショートポジションを取っている時にこれが掛かると借り手は返却しなければならず、結構恐い(笑)。私も前にCBの転換のつなぎ売りでこれを借りたことがあるが、まあアルパイン円CBのつなぎ売りの場合は拘束期間が数日なので事なきを得たが、それでも一時的にショートを取っている時は恐かった。それでも株が見つからない時はみんなコーラブルでも良いから、やっぱり借りるのであるね。

少しは本当の現状見たいのが見えただろうか・・・・?

10 コメント

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貸株について (macaron)
2008-05-26 00:21:08
初めまして。

金融初心者ですが、仕事で貸株を勉強する必要に迫られまして、ウェブを検索するうちにこのブログに辿りつきました(というか、ここ以外に貸株の現状についてちゃんと説明しているサイトは見つけられませんでした。。。)これを書かれたのは3年近く前のようですが、大変明快に説明して下さってて勉強になりました。ありがとうございました!

根本的な質問させて頂きたいのですが、ファンド筋(借り手)が貸株を求めるのはどういう時でしょうか?上記の記事などから、CBやTOBの発表があると貸株ニーズが発生するのは何となく分かりましたが、「なぜこれ?」と思うような銘柄の方が断然多いので、いつも疑問に思っていました。ケースバイケースかもしれませんが、「こういう理由または思惑があるときに探す」とか、一般的なことでも構いませんので教えて頂けると助かります。
あと、フェイルカバーってよく聞くのですが、実はあまり理解できてません。こちらも教えて頂けると嬉しいです。素人ですみませんが、よろしくお願いします。
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Unknown (小鬼)
2005-09-18 04:07:43
いやはやアマポーラさま、恐れ入りました。

単なる個人投資家ではないなぁ、とうすうす感じてはおりましたが(笑)。

どうもヨーロッパにおりますと、実は米系投資家というのが見えにくいのですね、いや言い訳ではなくて(笑)。

スイスやユーロで発行されますCBも、これは144Aの規制が掛かっておりまして、基本V/D内ではアメリカへは直接売れないのですね。

もっとも米系のヘッジ系はみんなオフショアを持ってますので、その辺を通じて流れているのが実際ではありますが。



どうぞ今後とも何か間違っているような箇所がございましたら、ご指摘のほどをお願い申し上げます!!
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Unknown (アマポーラ)
2005-09-15 12:00:22
>夕凪所長様



拝読させて頂きました。体系的に纏めて頂くと数学音痴の私などは非常に助かります。ありがとうございます。



オールワールド採用分の数銘柄をながら観察してますが、堅調な足取りの銘柄が散見します。反応ファクターが指数採用絡みだけなのか?と問われると何とも言えなのがつらいですが。

FTSEの入れ替えは、時期的には中間決算前でその方面からの売り圧力で元来地合が良いとは言えないので損している面もあるのでしょうか。昨年はインテルの業績見通しショックや原油高懸念もあって今年よりも市場パフォーマンスは悪かったような気が致しました。(といっても50$手前ですがw)



カルパースが海外株式投資ベンチマークを一本化しFT採用というのは知りませんでした。国内分はウィルシャーのカルパース用指数で行っていると思うので

FTSEのオールワールド指数というのは米国も入っているのか、それ以外の国で構成されているのか知りたいところです。指数全容を知るには個人情報引渡しと交換になっていたので躊躇しました。



カルパースは2005/8時点で491億$の海外株式を保有しています。殆どがパッシブ運用なのでオールワールド指数のうち日本比率が分ればどの程度日本株を保有しているのか分るような気がします。プラス煙草会社には絶対に投資しないポリシーなのでカルパース用の指数は若干カスタマイズされている筈だと思います。JT採用時に入った買いのインパクトなどを他の銘柄と比較考慮すると、所長様のような数学力のある方ならトラッキング資金総額以下いろいろな事実が掴めるような気が致しました。



>小鬼様

ついでにお褒め頂き有難うございます(笑)

相場好きなのでいろいろと考察したりするのも好きなのですが、専門的知識や脳の働き等に致命的ハンデがありますので、これからもお導き宜しくお願い致します♪
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Unknown (小鬼)
2005-09-14 06:00:23
いやはや夕凪所長どの、素晴らしい!

よくぞそこまで調査されました。私自身もすごく勉強になりました!

カルパースがそれを採用していたなんて、きっと現役証券マンのほとんどが知らないと思います(汗)。

夕凪所長のHPについては今更ながら何も申し上げることはございません。私の知り合いのさる記者氏のだんな様まで夕凪所長のHPを常に見ている、なんて話を最近聞きまして、私も何だかとっても誇らしく思いました(笑)。

それにつけてもアマポーラ様、アマポーラ様も実はかなり色々な方面に精通されているとお見受け致しましたが(笑)。



夕凪所長さま、どうぞ私信でも何でもお使い下さいね。今後とも宜しくお願いいたします!!
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FTSE (夕凪)
2005-09-14 00:17:36
こんにちは アマポーラ さん。

# 小鬼さん、ここを私信に利用してごめんなさい。





アマポーラ さんの投稿にヒントを得て「FTSE」について、私のページで取り

上げてみました。インパクトとしては「MSCIの半分」あたりでしょうかね。

http://www.geocities.jp/yuunagi_dan/jissen/Jissen077.htm



小鬼さんへのGOODな質問、ありがとうございます!
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Unknown (小鬼)
2005-09-10 07:21:11
アマポーラさま



素晴らしいご質問、有難うございました!

本日の記事にてその答えを書かせていただきましたので、ご参照下さいませ!

今後ともガンガン下さいね!!
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ご回答有難うございます。 (アマポーラ)
2005-09-09 15:49:23
小鬼様



欧州の機関投資家の方々の国際分散投資はFTSEをベンチマークにしていると無条件で思い込んでいました。糺して頂きありがとうございます。



こういう折は引けでワサワサ動いたりしたのを目撃経験があるのですが、そういえば小型株指数等は反応がないような気もしたので、他のインデックスに比べ存在が薄いのでしょうね。

http://www.ftse.com/./tech_notices/2005/q3/10301_20050830_Japan_Review.jsp



話は変わりますが、一部の海外発行の新株予約権つき社債等で、発行後海外市場に上場すると記述がある物がありますが、外国の方にとっては知名度も低く、おまけにゼロクポーンだったりする会社の社債が上場して商いはつくのだろうか?とかねてから訝ってました。

その種の社債は、本当に取引する人がいらっしゃるのでしょうか??



お礼に来たのに、二度聞きですみません。

いつか、関連話題のついでのおまけがあったらお願いします♪



追伸、ダントツ所長様のサイトも拝読してます。この場を借りて詳細解説のお礼申し上げます。
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Unknown (小鬼)
2005-09-09 05:14:30
アマポーラさま



いらっしゃいませ!

おお、いきなりかなりプロフェッショナルなご質問です(汗)。FTSEのALL WORLD INDEXなるものを実は初めて知った次第です、、、

もちろん調べましたが円もあるのですね。

私は基本、日本モノの世界で生きておりますが、海外での日本株系ファンドでこのFTSEのインデックスをベンチマルクにしているファンドと言うのは、少なくとも私は聞いたことが無いのです。

大体は、MSCIがほとんどで、あとはTOPIXなり日経225、まれに日経300って言うのもありましたが。

ヨーロッパ株の世界においてはFTはかなり重要なのだと思いますが、ワールドワイドな視点から見ますとやはり中心はダウでありナスダックであり、そしてMSCI、つまり米系なんだなぁ、と思うことが良くあります。

上手いコネが見つかりましたら、ヒアリングをしておきます。

答えになっておらず、大変申し訳ございません・・・!



夕凪所長さま



もう、相変わらず嬉しいコメント有難うございます!!

そうですねぇ。。情報ソースですか。

ご存知金融機関における情報端末では現在圧倒的な強さを誇るのがBloombergで、それに次いでまあReutersや、日系に限ればQuickがあるのですが、その中でもBloombergはオリジナルな取材ソースを持っており、その配信記事は結構役に立ちます。あとはトムソンコーポレーションと言う情報会社がありますが、そこの配信ユースは極めて中立で、つぶさな取材を重ねているようですので、私は好きなのですが、結構高いので、なかなか上司から配信のアプルーバルをもらうのは大変だったりします(笑)。(今もトムソンの知り合いからせっつかれているのですが・・笑)

Bloombergにしてもトムソンにしても個人ベースで取ろうとすればかなりのコストになると思いますので、実はこれらは余りお役に立たないかも知れませんね。。

何か必要なレポートとかあればお送りしますので、その時は是非遠慮なくメールでも何でも下さい。

各社のレポート程度はコネを辿っていくと大体のものが手に入りますから、どうぞ遠慮なくお願いします!!
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良質の記事の出所 (夕凪)
2005-09-09 00:09:23
こんにちは小鬼さん。



私が普段気になっている部分以上の情報が出ていて、あまり

にも素晴らし過ぎです。



今回ご紹介頂いた情報のような、良質の記事を捕まえるには、

どういったリソースを参考にすれば良いのでしょうか。

# もちろん、小鬼さんのサイトを読むのが一番ですが。



もし、推薦できる、もしくは小鬼さんが普段接している情報

源を教えていただけたら嬉しいです。
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解説ありがとうございます。 (アマポーラ)
2005-09-07 11:26:34
小鬼さんの解説で、個人の側からはとらえ難い証券市場の仕組みが理解でき感謝しつつ毎日読ませて頂いてます。



流動性と話題性から大きいロットの方々もトレードされているような新興銘柄などで、材料もないのに突如大きな買いが入ってくる状況を目にすることがありますが、もしやあれはコーラブル効果なのか?..などと独り納得したりしてます。



小鬼さんは欧州ベースでご活躍だそうですが、もし宜しければ質問させてください。

FTSEのall world指数等をベンチマークにトラッキングしているファンドの運用資金総額はおおまかにどの位存在しているのでしょうか?ご存知であれば教えてください。
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