先週に引き続き司会を担当しましたイシイです。
今回の遠藤周作「白い人」の二週目の発表ですが、発表者はまずジャックを拷問する拷問者たちやそれに対する〈私〉視点を検討しつつ、拷問者たちは非情な暴力者としての単純な表面だけでなく、裏面に潜む個人像によって、拷問者として残酷性がより強調されている。さらに私は拷問者のなかでキャバンヌに自己を重ねているが、それでも他の拷問者とは秘密を抱えているという点で違う人物であるということを指摘されました。ここでの検討ではアレクサンドルやキャバンヌといった拷問者を〈私〉がどう見ているのか、という前回の指摘を生かしたものだと思われます。
次に発表者は「運命と偶然」について述べられました。歴史の進歩、正義の証明に無関心であるにもかかわらず〈私〉が「生きねばならぬ」と述べている箇所で、人間が進歩や正義に意味を求める限り、歴史が内なる拷問者を生み出すと発表者は解釈しました。そこから作品全体について発表者は拷問者・被拷問者また、運命・偶然という世界構図のなかで、人間の神への希求の必然性を追及したものであると最後に指摘しました。
質疑応答の中では、最初と最後の部分から読み取れる〈私〉の心的状況の移り変わりについて、〈私〉は最初から最後まで頁の順番通りに形作られた〈私〉なのか、それとも最初の部分は自己の過去を回想する新しい〈私〉であり、最後の部分はそれより前に書かれた〈私〉なのかということで、議論が展開されました。
一章の〈私〉に対して物語末尾の〈私〉が急変した状態で書かれているので、ここでの解釈は非常に難しく、作品全体から読み取れる〈私〉の心的状況の流れは人によって千差万別だと思われます。私個人としては回想体を思わせる最初の部分で〈私〉は「生きねばならぬ。」と述べていることで冷静さを感じさせますが、物語が先へ進むなかで〈私〉の幼少期の刺激的な思い出が〈私〉の中で何度も回想され、物語の最後の方では「闇のなかでリヨンは燃えていた。」と自分の今いるリヨンという場所をかなり暈した言い方で表現していることから、頁最後の〈私〉こそ物語の中で一番新しい人格形成のされた〈私〉なのだと思いました。
いずれにせよこの点における議論は一朝一夕ではだせないものなので、自分の知識・教養をもっと高めてからより深く再検討する必要があると思いました。
今回の「白い人」は頁が多く、テーマが扱いにくい作品で大変だったと思いますが、発表者の方お疲れ様でした。
来週は椎名麟三の「深夜の酒宴」です。ここ最近天気がじめじめして体力的にきつい時期ですが、暑さにひるまずに文学にはげみましょう!
今回の遠藤周作「白い人」の二週目の発表ですが、発表者はまずジャックを拷問する拷問者たちやそれに対する〈私〉視点を検討しつつ、拷問者たちは非情な暴力者としての単純な表面だけでなく、裏面に潜む個人像によって、拷問者として残酷性がより強調されている。さらに私は拷問者のなかでキャバンヌに自己を重ねているが、それでも他の拷問者とは秘密を抱えているという点で違う人物であるということを指摘されました。ここでの検討ではアレクサンドルやキャバンヌといった拷問者を〈私〉がどう見ているのか、という前回の指摘を生かしたものだと思われます。
次に発表者は「運命と偶然」について述べられました。歴史の進歩、正義の証明に無関心であるにもかかわらず〈私〉が「生きねばならぬ」と述べている箇所で、人間が進歩や正義に意味を求める限り、歴史が内なる拷問者を生み出すと発表者は解釈しました。そこから作品全体について発表者は拷問者・被拷問者また、運命・偶然という世界構図のなかで、人間の神への希求の必然性を追及したものであると最後に指摘しました。
質疑応答の中では、最初と最後の部分から読み取れる〈私〉の心的状況の移り変わりについて、〈私〉は最初から最後まで頁の順番通りに形作られた〈私〉なのか、それとも最初の部分は自己の過去を回想する新しい〈私〉であり、最後の部分はそれより前に書かれた〈私〉なのかということで、議論が展開されました。
一章の〈私〉に対して物語末尾の〈私〉が急変した状態で書かれているので、ここでの解釈は非常に難しく、作品全体から読み取れる〈私〉の心的状況の流れは人によって千差万別だと思われます。私個人としては回想体を思わせる最初の部分で〈私〉は「生きねばならぬ。」と述べていることで冷静さを感じさせますが、物語が先へ進むなかで〈私〉の幼少期の刺激的な思い出が〈私〉の中で何度も回想され、物語の最後の方では「闇のなかでリヨンは燃えていた。」と自分の今いるリヨンという場所をかなり暈した言い方で表現していることから、頁最後の〈私〉こそ物語の中で一番新しい人格形成のされた〈私〉なのだと思いました。
いずれにせよこの点における議論は一朝一夕ではだせないものなので、自分の知識・教養をもっと高めてからより深く再検討する必要があると思いました。
今回の「白い人」は頁が多く、テーマが扱いにくい作品で大変だったと思いますが、発表者の方お疲れ様でした。
来週は椎名麟三の「深夜の酒宴」です。ここ最近天気がじめじめして体力的にきつい時期ですが、暑さにひるまずに文学にはげみましょう!