近研ブログ

國學院大學近代日本文学研究会のブログです。
会の様子や文学的な話題をお届けします。

花ざかりの森

2008-12-19 11:06:59 | Weblog
こんにちは。今週は三島由紀夫の「花ざかりの森」の発表でした。
この作品は〈序の巻〉〈その一〉〈そのニ〉〈その三(上)〉〈その三(下)〉に分かれています。
今回の論議は、冒頭のエピグラフについてと、「わたし」の両親や祖母の問題、「病気」や「電車」などのキーワードに注目したものでした。
「花ざかりの森」は三島が16歳のころに書いた作品。三島はこの作品でどんなメッセージを送ったのでしょう。
一週目ではまだその答えが見えませんでした。

明日は納会です。そして来週は今年度最後の通常例会です。
以上船田でした。

西班牙犬の家 第二週

2008-12-10 14:09:15 | Weblog
今週は佐藤春夫「西班牙犬の家」第二回目の発表でした。
先週のご指摘に基づき、〈私〉の有り様から作品全体の構造を見、副題となっている「夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇」の意味を考えていきました。

『最初はフラテに導かれていた〈私〉だが、家を見つけたときから自ら主体的に動く存在となる。そして、その〈私〉の眼通して読者は〈私〉の見た夢の光景を疑似体験する。それが、〈夢見心地〉を作っていく。』
『家は時代から切り離された時間が流れる空間であり、そこを外から覗き込むことで〈私〉が夢を見ることが示される。』

このような要旨で発表をいたしました。
今回のご指摘としては、〈私〉と語り手を分けて考えることの是非や、主観や客体などといった言葉の使い方の曖昧さなどがありました。
この作品の発表は今週で終わりですが、今回皆様からのご意見を重く受け止めて、今後の研究活動に活かしていきたいと思います。
ありがとうございました。

来週は三島由紀夫の「花ざかりの森」の発表です。テキストは新潮文庫を使用しますので、皆様ご用意よろしくお願いいたします。西山でした。

「西班牙犬の家」の発表について

2008-12-03 00:13:46 | Weblog
こんばんは。今週は、佐藤春夫の「西班牙犬の家」の発表が行われました。今週の発表者のスタンスとしては、主人公<私>が、現実世界から「夢見心地」の雑木林に惹かれ、やがて<西班牙犬の家>に導かれていく過程と、<私>が、家の中に配置されたさまざまな西洋的な置物に憧れるのは、ひいては作者の西洋に対する憧憬が表現されているのではないかというこの二本立てで、発表に臨んでいました。
 <私>は、愛犬フラテに導かれながらも、空想の付加される雑木林へ惹かれ、入っていこうとする。それは、日常の生活空間からかい離した場所に<私>が憧れているからであり、家に導かれたのは、あこがれの場である雑木林に溶け込んでいるからであり、かつ、家の中央から<不断にたぎり出る>水盤の水が、空想の象徴であり、この水に導かれたからだという分析を行っていました。
 問題点としては、作者が西洋に対し、憧れていたということや、作者独自の色彩感覚を形成したような絵画に関する資料を載せるべきだということでした。
 分析面では、<私>が「夢見心地」に感じる場所が、雑木林か、家の内部か、ということをはっきりさせねばならないということ、物語の最後に<私>が家の窓から中をのぞくとは、どういうことなのか、また、作中に多用されている過去形と現在形の文章、<私>と<おれ>の使い分け、末尾の「ぽか〱と本当に温かい春の日の午後である」という一文をどう解釈するかが問題となりました。あと、空間に伴う時間感覚についてもう少し丁寧に考えるべきですね。
 以上が、次週への課題です。だいぶ寒くなってきましたが、くれぐれも体調に気をつけて、発表者の方は頑張ってください。以上、坂崎でした。