コバンはとにかく動くものならなんでもの見逃さない。
ズボンの裾にくらいつき、モップみたいにに、私の移動するところに
そのまま引きずられていく。
スリッパも大好きなので、常時スリッパを二組用意しておいて、
ひとつに食いつかれたら、そのスリッパをあきらめて見放し、すぐ別のに
はきかえる。
いくらコバンが怪獣でも、いちどに二つのスリッパは噛めないし。
そのため、左右びっこのスリッパを履いていることもしばしばある。
このあいだクリーニング屋さんが来た時も、あとで気づいたら
左に赤いの、右に青いのを履いていた。
もしかしたら、あそこの奥さんもとうとうボケが始まったのかと
思われているかも。
トイレに行く時も、パパや私の、ちょっとした動きを決して見逃さず
すかさず、はなれず、ついてくる。
トイレのドアを開けたとたんにシュルシュルっと入り込み、出ようとしないのだ。
抱き上げて外に放り出しても、放り出しても、又入ってくる。
一計を案じ、コバンの好きなペットボトルをもって入り、放り投げたら
やっと、そっちに行ってくれた。 でも油断はできない、外で待っているから。
お風呂に入るのも、出るのも、一苦労だ。
我が家の脱衣所は、犬の出入り口に通じているため、ドアを閉められない。
バスタオルや、バスローブで、二階から降りてくるとタオルの端っこめがけてジャンプするので、
仕方が無いから、裸で、バスタオルは丸めて見えないように胸に抱えてもち、
さっと風呂場に入りドアをしめる。 もちろん、脱衣所で服をぬいだりしたら、
そのつどじゃれ付いて、えらいめにあう。
そして、入浴中ずっと、ガラス戸にハナをくっつけて出てくるのを
待っている。 だから脱衣所でタオルで体をふこうなどと思ってはいけない。
十センチくらいドアを開けてさっとタオルを取り、すぐさま閉めて風呂場で
体を拭き、そのまま、そのまーんま、真っ裸でバスタオルなどを、来る時同様
こっそり、丸めて持ち、二階へ上がって着替える。
もちろん、階段は怪獣コバーンの侵略を防ぐバリケード済み。
どこの世界にペットボトルが無ければトイレにはいれなかったり、真っ裸で
風呂場に行かなければいけない人が居るだろうか。
まったく、他人様には見せられないよねーと思いながら、ふと下をみると、
コバンと目があった。コバンは言っている。
「ママ、トイレとお風呂で待ってるね!」
あのねー、待ってなくてもいいから!