満願寺跡宝塔 鶴塚塔
鶴夫婦愛を讃える宝塔
安曇川(あどがわ)の住宅地に、ひときわ大きな石の宝塔が立っています。
昔、ある武士が雄の鶴を射落としましたが、首がありません。翌年、別の雌鶴を射落としたところ、その鶴は昨年射落とした雄の首を羽の間に抱いていました。鶴の夫婦愛にうたれた武将は、この塚を立て、鶴を弔ったと伝わります。
鶴塚は高さ4.2mあり、鎌倉時代の建造とされています。
また、湖南の野洲(やす)市にも同じような民話が残されています。
鎌倉時代中期頃に造立された宝塔で、高さは4mを測る。県内の石造宝塔内では最大級
【民話】
むかし、三里尾の里に亀吉という百姓が住んでいた。
子供はなくて妻のお松と二人暮らし、真面目でしっかりした働き者やった。
そんな亀吉にも一つだけ道楽があった。鉄砲撃ちである。
百姓仕事が暇になる冬の季節には、毎日の様に琵琶湖の岸辺に行ってガンやカモを撃った。
今日も亀吉は、手に重い獲物をさげ、
「おれの鉄砲の腕も、だいぶ上がってきたなあ。」
と、顔をほころばせながら帰って来た。
しかし、出迎えた妻のお松は、あまり嬉しそうな顔を見せなかった。口にこそ出さなかったけど、心の優しいお松は、亀吉が生き物を殺して来る事に心を痛めていたんや。
そんなある日、亀吉は湖の近くで一羽のツルを撃ち落とした。田圃から飛び立とうとしたところを仕留めたものやった。
ツルは首が取れていた。
「どうや、この大きなツルは。見事なもんやろ。」
亀吉は家に帰ると、獲物をお松に自慢した。
「まあ、こんなに奇麗なツルを撃ち落とすなんて。あれ、このツルには首があらへんわ。」
「ツルの首に狙いを付けて撃ったからな。見事に命中したら首が飛んでしもた。たいした腕やろ。」
亀吉は、得意そうにいうた。
その夜、お松はいつまでも眠れなかった。首の無いかわいそうなツルの事が、頭から消えんかった。
お松は、こんな事を考えた。
(わたしらに子供が産まれたら、うちの人の鉄砲撃ちも少し熱がさめるのかもしれへん。神様にお願いしてみよう。)
次の朝から、お松は、子宝がさずかりますようにと、近くの神社へおまいりを始めた。
亀吉には、そのお松の気持ちは分からない。次の冬が来て、亀吉は、前よりも熱心に鉄砲を撃ちに出かけた。
ある日、亀吉は一羽のツルが飛んでいるのを見つけた。すぐ近くのアシ原に隠れて、降りて来るのを待った。
ツルは亀吉から遠くない所に舞い下り、こちらに向かって歩いて来る。亀吉は狙いを定めた。
ズダーン。
鉄砲が火を噴き、ツルの体がはじかれた様に浮き上がった瞬間、大きな光が走った。亀吉の体は、雷に打たれた様に地面に叩き付けられた。
「う、いたい。」
亀吉はしばらく動けず、そこにうずくまっていた。少しして体が動く様になると、撃ち落としたツルを見に行った。
倒れたツルの体を起こすと、翼の中に何やら抱え込んでいる。それは、雄のツルの首だった。
亀吉は思わず声を上げた。
「そうか、このツルは、おれが去年撃ち落としたツルと夫婦やったのか。」
雌のツルは、雄の首を一年間だいじに抱えて飛んでいたのである。
亀吉は、いたわり合って生きるツルの夫婦の愛情に心を打たれた。そして、生き物を殺す事の罪深さをさとったんや。
「おれが悪かった。ツルよ、堪忍してくれ。」
亀吉とお松は、家の庭にツルを埋めて塚を作った。
そこは、鶴塚と呼ばれたという。
所在地:高島市(旧・安曇川町北出)
参考資料:パンフレット各種・現地説明板・専門員のガイド説明・PCホームページ/blog 等々
本日も、訪問ありがとう御座いました!