「私、先生になったよ」亡き友思い15年 池田小事件

2016年07月31日 21時58分48秒 | 日記
森嶋俊晴 吉村治彦2016年6月8日13時43分 朝日新聞


 8日で発生から15年を迎えた大阪教育大付属池田小学校(大阪府池田市)での児童殺傷事件。時は流れても、わが子を失った家族や友を失った人たちは、いまも心の中にいる被害者とともに、それぞれの道を歩んでいる。

■学校の安全守りたい

 事件で亡くなった2年生の山下玲奈(れな)さん(当時8)と大の仲良しだった須藤真与さん(22)=兵庫県川西市=は今春、大学を卒業して高校の先生になった。心の中で玲奈さんの笑顔を思い浮かべ、教壇に立つ。

 7日夜、須藤さんは玲奈さんの自宅を訪れ、仏壇に「いつも見守ってくれてありがとう。私、先生になったよ。同級生のみんなも社会人だよ」と報告した。

 玲奈さんとは幼稚園の3年間、同じクラス。お互いの家に泊まりに行き、いつも一緒に遊んだ。川でカニを探したり変な顔を見せ合ったり。別々の小学校に進んでからも手紙を交換し、夏休みには英語で授業を受けるサマースクールに一緒に通った。同じ髪形にして撮った写真や「まよちゃんすきだよ」と書かれた手紙を今も大切に持っている。

 15年前、玲奈さんの家を訪ねると、涙を流したお父さんが横たわった玲奈さんの体をさすっていた。お母さんはおばあちゃんに抱きしめられ、泣いていた。

 そのときはのみ込めなかったが、約1カ月後、「ああ、玲奈ちゃんはおらんくなったんや」と理解した。おそろいで買ってもらったキャラクター「トゥイーティー」のハンカチを握りしめ、声を上げて泣いた。

 中学から大学まで部活動で剣道に打ち込んだ。生徒の気持ちを理解してくれる顧問の先生に接し、「こんな先生になりたい」と自身も教員を目指した。4月から大阪府茨木市内の高校の常勤講師になり、英語を教えている。1年生の副担任や剣道部の顧問も務める。

 「もし急に不審者が侵入してきたら」。教室に入る前に考える。教室には職員室に通じる電話がある。まず職員室に連絡して、それから……。「怖い気持ちはあるけど、自分が何とかしなきゃと思っている。玲奈ちゃんの分まで生きて、学校の安全を守ることを考え続けたい」

 玲奈さんの母和子さん(53)は「命の大切さをわかっている真与ちゃんは、人の痛みがわかる先生になると思う。これからも玲奈とともに見守っていたい」と話した。(森嶋俊晴)

■介護の道へ「ママ頑張る」

 2年生だった塚本花菜(かな)さん(当時7)を亡くした母の有紀さん(49)は8日、付属池田小であった「祈りと誓いの集い」に出席した。今春から老人ホームでヘルパーとして働いている。

 病院に有紀さんが駆けつけた時、花菜さんはすでに息を引き取っていた。包丁の傷は脊髄(せきずい)に達していた。

 ある日、路上で障害を持つ子どもと母親を見かけた。「娘が生きていたら、一生立てない障害があったかも」。かつて心の中にあった思いがよみがえり、7年前にホームヘルパー2級を取得した。

 事件当日に花菜さんが使っていたキティちゃんのハンカチをいまも持ち歩く。仕事で気落ちした時、心の中で「ママ、やれるかな」と話しかけ、力をもらう。

 長男の中学進学を機に、デイサービス施設でのパート勤務からフルタイムの老人ホームでの仕事に替えた。担当する体の不自由な高齢者が苦痛を感じないよう、素早い介助を体で覚えている。「家族の立場になって接しています。もしも花菜ちゃんが生きていたら、私も花菜ちゃんにそうしてもらいたいと思っただろうから」

 有紀さんは「心の中に花菜ちゃんがいるから頑張れる。15年たっても娘は遠ざかっていない」。今秋、ケアマネジャーの試験に挑戦したいという。(吉村治彦)

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