映画 ご(誤)鑑賞日記

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ヴィクトリア女王 最期の秘密(2017年)

2019-02-24 | 【う】



 上記リンクからあらすじのコピペです。

=====ここから。

 インドが英領となって29年目の1887年、ヴィクトリア女王(ジュディ・デンチ)の即位50周年記念式典で記念金貨“モハール”を献上する役目に任命されたアグラに住む若者アブドゥル・カリム(アリ・ファザール)は、もう一人の献上役モハメド(アディール・アクタル)と共にイギリスへ渡る。

 18歳で即位してから長年女王の座に君臨してきたヴィクトリアは、最愛の夫と従僕を亡くし心を閉ざしていた。細かく決められたスケジュールをこなし、思惑が飛び交う宮廷生活に心休まらない日々を送るなか、金貨を献上しに現れたアブドゥルの、物怖じせず本音で語りかけてくる態度に心を奪われる。

 彼を気に入ったヴィクトリアは、式典の期間中、彼を従僕にする。ヴィクトリアはインド皇帝でもありながら現地に行ったことがないため、アブドゥルから言葉や文化を教えてもらい、魅了されていく。

 次第に二人の間には身分も年齢も越えて強い絆が生まれるが、周囲の猛反対に遭い、やがて英国王室を揺るがす大騒動を巻き起こす……。

=====ここまで。

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 『きっと、うまくいく』でジョイ・ロボを演じていたアリ・ファザールがジュディ・デンチと共に主演、脚本はあの『リトル・ダンサー』リー・ホールということで、見に行って参りました。


◆いきなりタージマハルが出て来て感激!

 アリ・ファザール演じるアブドゥルは、インドのアグラ出身。アグラといえば、タージマハル。本作のオープニングは、タージマハルを遠景にアグラの市街地をアブドゥルが歩くシーンでありました。まぁ、、、なんと、こないだ行ってこの目で見てきたばかりのタージマハルではないの!! 感激。

 で、アブドゥルがイギリスへ行き、ヴィクトリア女王に出会って、女王のお気に入りになって、女王が亡くなるまで側で仕えた、約13年間の出来事を描いているのが、本作であります。

 冒頭で、「この物語は事実です、そのほとんど(almost)において……」という字幕が出るんだけど、根本的に事実と異なるのは、もしかすると“アブドゥルがハンサムである”という本作の設定かも。というのも、エンディングの直前に出てくる実際のアブドゥルと女王の写真(絵かも)を見ると、あんましハンサムに見えなかったから。後からPCでもう一度その顔のアップや、他のアブドゥルの肖像を見ると、ちょっとでっぷりした感じだけど、顔の作りはまあまあなのか……?? とも思った。痩せたらもう少しイケメンに見えたのかもね。

 ……それはともかく。本作では、アブドゥルがハンサムだから女王の目に留まった、ということになっていて、史実はどうあれ、それはそれで良いと思った。ただハンサムだから目には留まったものの、その後、女王が彼のための部屋を宮殿にしつらえるまでに肩入れしたのは、アブドゥルがなかなか気が利く、頭の回転が速い青年だったからだろう。本作では、その切っ掛けになったのが、アブドゥルが女王の足下に跪いて、靴にキスをするというシーンで描かれる。これも実話かどうか知らないけれど、アブドゥルもなかなかのヤツだな、、、と感じた。

 こういう実話モノだと、ありがちなのが、寵愛を受けた者は野心など抱いておらず、純粋に女王のためを思ってひたすら尽くすパターンなんだけど、本作は、アブドゥルも野心家に描いているのが、逆に私には好印象だった。

 アブドゥルと共にイギリスに送り込まれた男モハメドは、アブドゥルが女王の従僕に引き立てられると、アブドゥルのお世話係にさせられる。モハメド自身は、イギリスを憎悪しており、早くインドに帰りたくて仕方がないのだが、アブドゥルは女王だけでなく宮殿や暮らしなどに魅力を感じて、宗主国に対する複雑な感情が見られない。その辺をモハメドにも非難されるが、アブドゥルはお構いなし。一番気の毒なのは、何と言ってもモハメド。彼はイギリスの気候が身体に合わず、ただでさえ嫌いな国にいるというストレスに加え、寒さと生活習慣の違いに衰弱していき、インドに帰ることなくイギリスで病死してしまうのだから。

 そんな現実がありながらも、アブドゥルは女王の側から離れようとせず、女王が死期を悟った際に「もうインドに帰りなさい」と言っても、「いいえ、私は最期まであなたの側にいます」と言って、実際、その通りにした。

 当然、女王の周辺者たちは、そんな状況を良しとせず、アブドゥルを排除しようと躍起になる。彼の目の前で彼を貶めるようなことを散々言われたりされたりしても、アブドゥルはめげずに、女王の側にいつづけるのだから、かなりの強者。

 したたかに居続けたアブドゥルだったが、女王が亡くなると、その息子エドワード7世にアッと言う間にインドに追い返され、女王の身の回りにあったアブドゥルに関する手紙類は全て焼却処分された。だが、最近になって、アブドゥルの遺品に彼の付けていた日記が発見されたことから、詳細が分かったということらしい。


◆モハメドの存在感

 本作は、序盤は、コメディタッチで、劇場でも所々で笑いが起こっていたが、中盤以降は結構シビアな展開になるのが意外だった。脚本のリー・ホールは、決して女王とアブドゥルの関係を好ましいもの一辺倒では描いていない。むしろ、中盤以降は批判的に感じる。それを象徴するのが、モハメドの存在。

 前述したとおり、モハメドはイギリスを嫌っていて、アブドゥルの言動にも批判的だ。しかし、女王の側近がアブドゥルを排斥しようとして、モハメドにアブドゥルの身上を聴取しようとするシーンが、この映画のある意味キモだと思う。

 つまり、インドに帰りたいモハメドは、ここで側近たちの動きを利用し、アブドゥルを売るという選択肢もあったはず。でも、彼はアブドゥルと女王の関係について、ぶっちゃけて言えば「ざまぁ見ろ」的な言葉を側近に投げつけるのだ。お前ら偉そうにしているが、お前らの頭上に君臨している女王は、お前らが見下しているインド人を師と仰いでいるのだゾ、バカじゃねーの、、、、とね。そうして、自分がインドに帰る機会を潰してでも、インド人としての矜持を保ったモハメドの態度は、イギリスに憎悪を抱く者にとっては溜飲が下がることだろう。私は、当事国の人間でないけれど、このシーンは心に沁みた。
 
 こういう実話を単なる美談で描いてしまってはつまらない。これでも大分、キレイに脚色しているはずではあるけど、それでも側近たちの右往左往ぶりや、あからさまな差別発言などが容赦なく描かれているのは、結構なことだ。だからこそ、皮肉も効いている。

 また、ネットでは、女王がアブドゥルに恋愛感情を抱いたのではないか、そういう感情で他の人より寵愛を受けて優位になるなんて、、、というような感想があったが、所詮、女王も人間で女性だ。日頃、孤独で寂しい老女にとって、見目麗しい若い男が目の前に現れれば、心動かされるのは自然な成り行き。恋愛感情を抱いたって不思議じゃない。もちろん、女王の抱いた恋愛感情は、若い頃のそれとは質が違うはずで、肉欲より、精神的なつながりを欲するものだと思う。そういう感情すら否定するのはいかがなものか、と逆に思う。そして、見た目の良い人間が、誰かに寵愛されるのもまた、人の世の常ではないか。そういうことが歴史を動かしてきたなんてのはいっぱいあるのだから、それを否定してしまってどーする? とさえ思うのだけど。

 人間、そんな単純で潔癖じゃないのですよ。


◆ヴィクトリア女王って、実は、、、

 それにしても、この映画を見て、私は、ヴィクトリア女王って実はあんまし賢くなかったんじゃないかと思うようになった。長く女王の座にあったから、それなりに賢い人だと思っていたが、在位期間と教養・能力は、決して比例しないのではないかと感じる。

 なぜなら、彼女は、夫の死後、何度も身分の低い者を寵愛して周囲の反感を買い、トラブルを起こしているのである。アブドゥルが初めてではないのだ。自分のやることなすことが、どういう影響を及ぼすのか、ということを女王として自覚せず、学習せず、同じことを繰り返している。これって、ちょっとどーなの??と思うんだけど。

 ただの貴族の奥様なら別に構わないけど、女王だったら、その辺はもう少し自覚的に行動して欲しいと側近たちが憤るのも無理ないよなぁ、と思う。

 孤独な女王だから心の支えが欲しい、、、ってのは分かるけど、その心の支えを却って危機に陥れるような偏愛ぶりは、異常でさえある。実際、アブドゥルに爵位を与えようとしたときは、周囲に精神状態を疑われるが、これも致し方ないという気がする。

 wikiには、やはり女王がイマイチ賢くなかったことについて「人物」欄に書かれている。まぁ、所詮wikiなので話半分としても、決して思慮深い女性でなかったことは確かなようだ。

 その女王をジュディ・デンチが好演していた。彼女は女王役がよく似合う。大分お年を召したけれど、相変わらずの存在感だった。

 アリ・ファザールは、好青年で、野心家アブドゥルにしては、ちょっと可愛すぎる感じもしたが頑張っていたと思う。彼は今回、オーディションでこの役に選ばれたとのこと。『きっと、うまくいく』では悲劇的な青年役だったが、出番は少なかったけれど光っていたものね。これから世界的な活躍が期待できるかも。

 女王に「ろくでなし」呼ばわりされる長男バーティ(後のエドワード7世)を演じたエディ・イザードは、憎ったらしいオッサンを好演。首相のソールスベリーを演じたマイケル・ガンボンもすっとぼけた感じで、相変わらず素晴らしい。

 

 







アブドゥルはインドに追い返された8年後に46歳で亡くなったとのこと。




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